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やっと『叫び』に会える!新ムンク美術館ついに公開

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
ずっと開館が延期されていた話題の美術館がやっとドアを開ける

画家エドヴァルド・ムンクはノルウェー出身。『叫び』で世界的に有名な画家の作品をたっぷりと鑑賞することができるのが、首都オスロです。

アート好きの間ではずっと話題になっていた、「新」ムンク美術館の存在。

旧館は役目を終え、新しい場所にパワーアップした新館が建てられることに。

ビョルビカ地区という、オスロ中央駅から徒歩5分ほどの以前よりもアクセスしやすい場所に移動しました。

国の財産であり、最高の観光スポットでもあるムンク美術館。現地では、「移転先はどこに?」「外観のデザインは美しいといえるのか?」などさまざまな議論が続いていました。

やっとこの議論の歴史が幕を閉じ、ムンク美術館は次の文化議論の時代へと進みます(この美術館は物議を醸すことも時にいとわないのです)。

コロナ禍などでオープンが何度か延期され、待ちにまったドアがついに開きます。

旧館の5倍のサイズとなって、帰ってきました!

最初のデザイン画よりも、実物が意外と「美しくないぞ」と現地の人々をどよめかせた外観。あなたはどう思いますか?
最初のデザイン画よりも、実物が意外と「美しくないぞ」と現地の人々をどよめかせた外観。あなたはどう思いますか?

公式オープンは22日。20日は報道陣向けのプレビューで、世界各国のメディアもわくわくと開館を喜んでいました。

1階には飲食店、ミュージアムショップ、イベント会場など
1階には飲食店、ミュージアムショップ、イベント会場など

『叫び』に必ず会えるようになりました

観光客にとって嬉しいのは、これからは『叫び』が必ず鑑賞できるということ!

旧館では、時期によっては『叫び』がないということもよくあったのです。遠くからやってきた観光客が「がっかり」することは、もうなくなります。

繊細な作品を外部の刺激から守るために、ムンク専用の暗い部屋が作られた
繊細な作品を外部の刺激から守るために、ムンク専用の暗い部屋が作られた

窓からの風景もアートとして鑑賞

新館は13階建て!

エスカレーターで上の階に進むほど、オスロの街並みやフィヨルドを広く見渡すことができます。

屋上では市内とフィヨルドを一望でき、記念撮影の場所としても最適。

窓からの移り変わる風景も楽しんで
窓からの移り変わる風景も楽しんで

夏に光る青いフィヨルド、雪で真っ白になった冬の街、夕日で染まる空。

ノルウェーの夕日は美しく、ムンクの『叫び』をはじめとする「作品に描かれている空色」を体験することもできることもあります。

ここは、鑑賞するだけの場所ではない

左手にはオペラハウス、公立図書館
左手にはオペラハウス、公立図書館

館内には子どもがアートを楽しむ場所、イベント会場となる空間も多く、これまでの美術館とは全く違います。

床に横たわる人々。これもパフォーマンス
床に横たわる人々。これもパフォーマンス

常にいろいろなイベントや企画があり、アート、デザイン、音楽、教養、食、文学、パフォーマンス、観光、建築、議論する空間、単にちょっと休憩する場所など、いろいろな時間の過ごし方ができる、まさに「市民みんなの居場所」。

ムンクのかつてのアトリエに入り込んだかのような展示室も。ベッド、バスタブなどが置かれている
ムンクのかつてのアトリエに入り込んだかのような展示室も。ベッド、バスタブなどが置かれている

叫びのケーキは?

北欧旅行をする時に、日本のガイドブックでは「ムンク美術館のカフェでは、『叫び』ケーキを食べよう」という言葉が定番だったために、観光客には楽しみのひとつでした。

しかし、新館では飲食店も一新され、叫びケーキはありません。ちょっと残念。

ムンク美術館の周囲は新しい文化施設、飲食店の宝庫

美術館があるビョルビカ地区は、フィヨルド再開発エリアとも呼ばれています。工事が進み、新しい建築物や飲食店がどんどんできている場所です。

「この国、お金があるなあ」と、ノルウェーの金持ちぶりと進化の速さも肌で感じる場所なんです。

ちなみに、ムンク美術館とオペラハウスの間には新しく埋め立てたビーチがあり、周囲にはサウナ施設が続々とできています。

「サウナで温まってから、フィヨルドに飛び込む!」というノルウェーでしかできない体験もできる、贅沢な環境です。

新しくできたビーチ。すぐに市民の憩いの場になった。川に見えるかもしれないけれど、これもフィヨルド
新しくできたビーチ。すぐに市民の憩いの場になった。川に見えるかもしれないけれど、これもフィヨルド

フィヨルドエリアでは、このような「文化×音楽×美術×食×サウナ×●●」など、いろいろと融合させて時間を楽しむスポットが増えています。

「複合施設」は現代のノルウェー人の得意技ともいえるでしょう。

新館では11の展示が同時開催され、2万6700点以上の作品を鑑賞できます。

上へ、上へと続くアートの世界

旧館は狭かったので、ムンクの作品を飾るにも数に限界がありました。

新館は広い。上の階、さらに上の階へと、展示がずっと続きます。

じっくりと全てを見たいなら、1日では足りないかもしれません。

「見たことがないぞ!」という珍しい作品にも出合えます。

ひとりの画家に特化した美術館としては、世界最大級のひとつともいわれる新ムンク美術館。

これから美術界という垣根を越えて、文化や都市開発など、さまざまな分野に新しい刺激を与えていきそうな予感を感じました。

ムンク美術館の動画「おかえり、叫び」

「巨大なサイズの絵画は、どうやって館内に移動させるのか?」は詳細がずっと秘密にされていましたが、その様子が公開されました

ムンク美術館公式ページ(英語)

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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