フィンランドのおうち時間 オンライン学習で語学力を伸ばすためには

Photo: Luetaan yhdessa

現地に住む外国人の語学スキル上達を手助けするサポート環境が、コロナ禍でその形を変えつつある。

北欧フィンランドには「一緒に読もう」(英語でLet’s Read Together、フィンランド語でLuetaan yhdessa)という移民の外国語学習をサポートする団体がある。

女性の移民を対象に、フィンランドの公用語であるフィンランド語とスウェーデン語を教えている。先生は大学生を中心とするボランティアスタッフだ。

ネットで実験、人気はムーミンで学ぶクラス

感染拡大防止対策のために、先生と生徒が対面で集まっていた教室は今年の春に閉鎖されることになってしまった。しかし、なんとかしようと先生たちが動き、新しい形で学習の継続を図った。

スカイプでの1対1レッスンや、「ランゲージ・カフェ」(言語カフェ)をオンラインで開催するなどの試行錯誤の結果、秋からは9種類のオンライン・グループ学習を開始。ムーミン作品で勉強するクラスが最も人気があるという。

「コロナ前からオンライン学習のオプションはありましたが、コロナが起きてからはその需要が爆発的に大きくなりました」と取材に答えるのは同団体の職員Sanna Laukkanenさん。

女性の教育機会を後押し

「一緒に読もう」団体は2004年に発足し、昨年の時点では29の自治体で80の教室が開かれ、480人のボランティアが先生となり、生徒数は2105人にのぼる。34か国の生徒の中には日本人もいるそうだ。

発足当初はソマリア出身の女性をサポートすることが目的だったが、専業主婦であることから一般的な語学教室に通うことができない女性が多いことに気が付き、現在の活動が全国各地へと広まるようになった。

「フィンランドはジェンダー平等が進んだ国だと評価されていますが、まだまだ解決すべき課題はあります」と、出産や育児がある女性は語学を学ぶ場での出席率が男性よりも低い傾向にあるとLaukkanenさんは話す。

グループ規模を小さくし、複数のボランティア講師がいることで質問しやすい環境を作り、週に1回2時間で集まる。通常の語学学校では特定のレベルに上達することを目的とするが、ここではもっとカジュアルな雰囲気の中で、日常生活で使う会話ができるようになることを目指している。

教室は大人向けで男女ともに参加でき、子どもも同伴可能だ。「家で育児をしている両親も参加できるように必要な配慮」とLaukkanenさんは語る。

フィンランドに仕事のために引っ越してきた人、難民や難民申請者、大学卒業者もいれば、母国で教育を受ける機会に恵まれなかった人など、さまざまな背景の大人たちが生徒として集まっている。

団体はフィンランドの社会福祉保健省傘下の財政機関から資金を得て活動しており、受講者は無料で語学レッスンを受けることができる。

Zoomグループ学習に参加してみた

取材のために、私はZoomでのフィンランド語の初心者コースに参加させてもらった。90分コースで休憩はなく、4人の大学生がおよそ10人以下の生徒にオンラインレッスンをする。

数字、天気、挨拶、時間の基本的な言い方を学んだ後は、4グループに分かれて先生と生徒の少人数グループでの会話練習が始まる。教科書はなく、先生は英語は一切話さない。

先生が画面上に打つ文字を追うだけでなく、動画や写真を使って単語を声に出して学んでいく。自分で考えて、瞬時に答える能力が必要とされる雰囲気だった。最後には宿題が出て、「また来週ね」とその日の学習はあっという間に終わった。

レッスン後に取材に答えてくれた生徒は、ロシア出身のオルガさんだ。「私はフィンランドの文化や人が大好き。この国では誰もが英語を話せるわけではないから、フィンランド語は話せたほうがいい」と話す。

「フィンランド語を難しい言語だとは思わない。コロナによって家で勉強する時間は以前よりも増えた。勉強を続けるための私の工夫は、フィンランド語で音楽を聞いたり、読書をしたり、ニュースを聞いて、たくさんの単語を何度も書くこと。フィンランド人の友人が私ならできると信じてくれているから、がんばれる」と笑って答えた。

先生が感じる、オンライン学習の便利・不便な点

先生を務めていたのは。オウル大学で「第二言語としてのフィンランド語」を専攻する4人の3年生、フィンランド人女性だった。今はコロナの影響で大学キャンパスに行くことはなく、自宅でオンライン授業を受けている。将来は移民にフィンランド語を教える仕事に就くことが夢だという。

オンライン学習になってから感じるメリットやデメリットを聞いてみた。

  • ジェシカさん「オンラインよりも対面学習のほうが楽しかったなとは感じます」
  • ヴィルマさん「生徒の顔を見ることができないので、自分が孤独を感じることもあります」
  • イーダさん「私たち以上にオンライン学習を不便だと感じているのは生徒側でしょう。どうしても対面と同じような交流ができないので、質問をすることを恐れている人が多い。理解できていなくても、質問しにくいようです」

対面教室だった時は、コーヒーを飲みながら、カフェおしゃべりしているようなリラックスした雰囲気があったため、その空気をネットでは作りにくいことが悩みだと4人は話す。

対面教室の時よりも、オンラインでは文法を説明する時間、先生が一方的に話す時間が増えがちで、「講義形式」になってしまい、どうしたらいいものかと考えているそうだ。

それでも教室への通学は現状では難しい。

オンラインで語学スキルをあげたいと思っている生徒へのアドバイスを聞いてみた。

顔出しして、たくさん話そうとする生徒は上達が早い

  • ヴィルマさん「顔を公開しない生徒が多い。私たちは顔出しを強制することはできないので、生徒さん自身の判断になってしまう。カメラとマイクをオープンにして、顔を出したほうが先生にとっても交流しやすい。自分からたくさん話すことも大事」
  • イーダさん「言語は聞いているだけでは学ぶことはできません。自分で使わないと。正解しなくていいから、挑戦してみて」

フィンランド語は世界一難しい?

フィンランド語は「世界一難しい言葉のひとつ」とも言われているが、このことについて「一緒に読もう」団体の職員Sanna Laukkanenさんに聞いてみた。

「その噂は神話のようなものだと私は思っています。難しいとされる格変化は規則的でもあるので学ぶことは可能です。最も重要なのは、文法ではなく、コミュニケーションです。もしあなたが言いたいことを相手が理解できるのであれば、格変化が正解しているかなんて、誰が気にするでしょう?」

英語だけでは暮らせない?

質問:フィンランドでは英語が話せる人も多く、そのことが外国人がフィンランド語を学ぼうとしない理由になっていることはありますか?

Laukkanenさん「多くの仕事ではフィンランド語が話せる必要があります。フィンランドで勉強したい場合、市民権を申請する場合もそうです。その国の言葉がわかったほうが、現地にもっと溶け込めますよ。ニュースを読んだり、現地の人と知り合うなどの工夫をしてみてください。私たちの教室ではできるだけ応援をする、楽しい空気をつくるようにしています」

語学レベルを上げるためには?

質問:語学スキル上達のカギは?

Laukkanenさん「できるだけたくさん使うこと。最初はルールや構造のことは忘れてもかまいません。文法に集中する時間は後からたくさん作れます。まずは自分にとって役立つフレーズや単語から始めるといいでしょう。語学勉強アプリやネットで話し相手を見つけてもいい。短い会話の中で、その言葉の構造を自然と紐解いていけばいいですね」

Text: Asaki Abumi