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不安症、うつ、お肌のケア、妊娠や育児の悩み 北欧の解決策

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
これから必要となる商品やサービスとは?(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

私たちの生活をより便利にしてくれるかもしれない発明。今回は北欧最大級スタートアップイベント「スラッシュ」(Slush)の取材中や、現地でみつけたスウェーデンとフィンランドのテクノロジーを紹介。

あなたに、ちょっとした気づきを与えてくれるかもしれない。

Slushでは多くの投資家や起業家が集まり、あちこちでミーティングが行われる Photo: Asaki Abumi
Slushでは多くの投資家や起業家が集まり、あちこちでミーティングが行われる Photo: Asaki Abumi

妊娠中のママ、育児する両親を応援!

「世界で一番大変な仕事なのに、孤独で悩みを打明けることもできない、そんな時に」Photo: Layette
「世界で一番大変な仕事なのに、孤独で悩みを打明けることもできない、そんな時に」Photo: Layette

スタートアップ業界で話題のアプリがある。フィンランド発「Layette」(レイエッテ)は子育て支援システムだ。

「ネウボラ」という言葉をご存知だろうか?妊娠期から、子どもが小学校にあがるまでの支援サービスを意味する。

レイエッテはネウボラのサポートや情報をベースにしたヘルスケアプリで、日本でもリリースされたばかり。日本語で利用可能だ。

妊娠期や育児中は、ネットや本などから、情報を探すこともあるだろう。情報の山の中で混乱することはないだろうか?

産後うつを含め、知りたい情報は、このアプリに詰まっている。パートナーとの関係(夫婦関係の構築や睡眠不足の夫婦)、父親になること(父親の懸念や役割)と、お父さんも役立つアドバイスもある。

この便利なアプリは、猛スピードで各国に広まっている。女性たちによって始まった、ママやパパを応援するサービス。

なぜ、北欧が「育児がしやすい国」と評価されているのか、そのヒントが見つかるかもしれない。利用して損することなし!

プラスチックフリーのスキンケア

フィンランドの首都ヘルシンキのナチュラルストアなどで販売中 Photo: Asaki Abumi
フィンランドの首都ヘルシンキのナチュラルストアなどで販売中 Photo: Asaki Abumi

プラスチックをできるだけ使わない生活をしようとすると、ぶつかる壁がある。コスメやスキンケア製品となると、容器がプラスチックになりがちだ。

自宅ではなんとかプラスチックフリーの容器だったとしても、出張や旅行などの時は、ミニサイズほうがスーツケースに入れやすい。そうなると、また容器がプラスチックなんてことも。

フィンランドのルオンコス(Luonkos)社のクレンジングやボディ石鹸は、自然原料でできており、堆肥可能な紙製の容器を採用。

代表のピリッタ・フォルスさんは、フィンランドの大学院で未来学を修了し、国際的なトレンドエキスパートでもある。今の若者は環境思考が高く、商品展開もこれまでとは変える必要があると語る Photo: Asaki Abumi
代表のピリッタ・フォルスさんは、フィンランドの大学院で未来学を修了し、国際的なトレンドエキスパートでもある。今の若者は環境思考が高く、商品展開もこれまでとは変える必要があると語る Photo: Asaki Abumi

「もう、エコではない包装を理由に、罪悪感を感じる必要はありません」。ゴミを減らすゼロウェイストやプラスチックフリーに徹底したスキンケア製品がこれからの定番となると、代表のピリッタ・フォルスさんは取材で語る。

私も使ってみたのだが、お肌がもちもちとして、ぜひリピートしたいと思った。パッケージは日本の折り紙にインスピレーションを受けたそうだ。今度から、旅行やサウナでこの石鹸を愛用しようと思う。

私の消費行動による環境負荷を数値化すると?

フィンランドのEnfuce社のアプリ「My Carbon Action」では毎日の消費から、日常生活で個人がどれほどの環境フットプリント(環境に与える負荷の数値化)を出しているかを可視化する。市民がサステナブルな選択をよりしやすくするためのツールだ。

このように、人間活動でどれほどの排出量をだしているかを知るツールは、今後どんどん増えるだろう。

これからもっと必要になる、自宅で心の病気をケアする方法

私個人の体験では、北欧はメンタルヘルスに関する理解やケアは日本よりも進んでいる。

ただ、日本のほうがいいなと思うのは、北欧での「待ち時間の長さ」だ。自分の好きな病院や医師を選べないシステムのため、心の病で苦しんでいても、心理カウンセラーにすぐに面会できるわけではない。

適切な治療を待っている間にも、心はどんどん弱っていく。その間、自分ひとりでも自宅でケアができるようなサービスが必要だと、各国では開発が進んでいる。

スウェーデンの「マイマーズ」(Mimerse)は、ストレス・不安症・疲労などを軽減するために開発された仮想現実(VR)体験だ。

同社のニコラス・ヴィクストゥルムさんは、北欧は幸福な国として知られてはいるが、メンタルヘルスの問題はどこの国でも同じだと取材で話す。

「北欧の福祉制度が良くても、誰もがアクセスできるわけではありません。心理カウンセラーが必要だと医者が診断しても、待ち時間が長すぎて半年かかることもある。カウンセラーの数が足りなくて、多くの人が必要な治療を受けられていないんです。アジアのようなヒエラルキーがある社会では、心の病気は弱さとされ、相談もしにくい」

「脳はVRと現実世界を見分けられないので、治療効果が期待できます」と話した。

社会の変化にあわせて、必要とされるサービスやテクノロジーは変化している。

別記事で紹介したフィンランドの月経カップ「ルネッテ」(Lunette)も、ぜひチェックしてみてほしい。

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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