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ノーベル平和賞の国 ノルウェー現地メディアの予想

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
平和賞の発表は数時間後 Photo: Asaki Abumi

ノーベル平和賞が発表・授与されるノルウェー。発表日の前日夜に解禁される公共放送NRKと民放テレビTV2の予想合戦は、毎年の恒例行事となっている。

ノーベル委員会のメンバーが変わってから、数年前と比べて、関係者からの事前暴露が減り、現地メディアの的中率は下がってはいる。それでも、ノルウェー人で構成される委員会メンバーの思想や、これまでの傾向を、肌で知る現地メディアの予想は、どこよりも説得力がある。

公共放送NRKの予想

公共放送の公式HPの記事では、以下が有力候補

  • 地球のための闘い、スウェーデンの気候活動家グレタ・トゥンベリさん
  • 飢餓から逃れる人々のために活動、世界食糧計画(WFP)
  • 戦争状態を終わらせたエチオピアのアビー首相
  • 報道陣が攻撃される時代に、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」、シンクタンク「国際危機グループ」、ジャーナリスト保護委員会、トルコのCumhuriyet紙などメディア関係者

NRKのネット版記事とニュース番組では、優先度の順番が必ずしも一致していない。

19時の夕方ニュース番組「ダーグスレヴィーエン」では、

  • エチオピアのアビー首相
  • 世界食糧計画(WFP)
  • ミャンマーでイスラム教徒少数民族ロヒンギャの取材を巡り収監されていた、ロイターの記者2人

この3候補が集中的に紹介された。

グレタさんは有力候補ではあるが、平和賞の条件を満たしているかという課題、気候変動や環境という分野は平和賞を受賞しにくいこと、マララさんのように今年でなくとも、様子を見て、今後受賞する可能性があることなどが指摘された。

平和賞らしいクラシックな流れとしては、エチオピアのアビー首相、世界食糧計画(WFP)が妥当。

委員会が新たな選択をするとしたら、フェイクニュースが増える時代、脅迫や圧力を受けながら報道を続ける「メディア」という分野ではないかと、同局のマグヌス記者は番組で解説した。

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民間テレビTV2の予想

テレビ局TV2の予想には、グレタさんも含まれている。しかし、こちらでも、「気候変動」という分野が平和賞を受け取る難しさを指摘。

気候変動というテーマは、世界的にはすでに認知されている問題だ。よって、グレタさんが受賞するとしても、「若者の平和活動」というくくりで、ほかの人と一緒にではないかとされている。

若者の平和活動

  • リビアの平和構築のために、女性や若者の参画を訴えるハジャ・シャリーフさん
  • ソマリアの平和活動家イルワド・エルマンさん
  • 香港大規模民主化デモ「雨傘運動」を主導した羅冠聡さん

この中から、グレタさんを含め、2~3人での同時受賞のほうが可能性が高いと、TV2は紹介している。

他には、下記の名前もあげられている。

  • エチオピアのアビー首相
  • 世界食糧計画(WFP)
  • 乱射対応が評価されたニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相

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平和賞は、ノルウェーの首都オスロにあるノーベル員会で、現地時間11時に発表される。

別記事「ノーベル平和賞 グレタさんを巡る現地報道」

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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