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海外旅行で「虫刺され?」と思ったら、「南京虫/トコジラミ」を疑え

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
寝ている間に、気持ち悪い虫があなたの血を吸っているかもしれない(写真:アフロ)

海外旅行でホテルに宿泊。

帰国後に、なんだか背中や腕がかゆい。

赤い虫刺されのような跡があれば、「トコジラミ」(南京虫・ナンキンムシ)だと疑ったほうがいいかもしれない。

日本のネットニュースでもトコジラミはたまに触れられているが、北欧各国では毎年夏休みの時期になると、さらに深刻なニュースとして報道されている。

私が初めて被害にあったのは、2~3年前。ベルギーの高級ホテルに宿泊後、ノルウェーに戻ってから、手や腕が異様にかゆくなった。

「虫刺されにしては、ひどいな」と思い、薬局で店員に見せたところ、「ほかの国に旅行に行ってた?これ、多分トコジラミよ」と薬をもらう。

ノルウェー語で「壁虫」(veggedyr)と聞いて、「なんだ、それ」と思いネット検索すると、「あなたが寝ている間に、あなたの血を吸う。旅行中のよくあるトラブル」という説明で、気持ち悪い虫の写真がぞくぞくと出てきた。

しかも、スーツケースにくっついてくるという。ぞわっとして、家で掃除機をかけたのを覚えている。

その後、たまたまノルウェーの病院に行く機会があったのだが、まだかゆい跡が残っていたため、ついでに医者に見せた。

「トコジラミにかじられた跡だと判断するのは難しいんだけど、数か所あって、国外旅行に行っていたなら、そうだろうね」とのこと。

その時は、トコジラミのことを知ることに必死で、ホテルに連絡はしなかった。海外に住んでいる時、外国語でクレームするのは体力を使い、ストレスがさらにたまることもあるので、避けたいこともある。

・・・・・

今年、フィンランド出張中に、また同じようなことが起きた。手や足がかゆくなりはじめ、「もしかして、またトコジラミ?」とため息。

虫のいるベッドに寝ていたと想像するだけで、おぞましい。

かゆくなり始めたからといって、すぐにトコジラミとは100%確信できない。ベッドを確認しても、必ずしも虫が見つかるわけではない。

帰国後、足や手、10か所以上に虫刺されのような跡があり、かゆかった。

初回ほど頭はパニックにはならなかったが、すぐさまスーツケースを家から外に放り出し、服などはできるだけお湯で洗濯、未練のないものは捨てた。

今回は、「まさか」と思い始めた頃から、前回の教訓で、証拠に肌の写真を撮っていた。

だが、滞在先のAirbnbのホストはとても親切で、クレームする気も起きず、返金してほしいという気持ちにもならなかった。むしろ、「トコジラミがベッドにいるなんて……、かわいそう」と思った(駆除が大変)。

メールだけして、「絶対だと確信はできないんだけど、ベッドにトコジラミがいるかもよ。次のお客さんが来るまでに、ベッドをなんとかしたほうがいいかも?」と連絡だけした。

英語で検索すると、Airbnbでトコジラミのトラブルがたくさん発生していることが分かった。

興味のある人は、「Airbnb bedbug」で検索してみるといい。「客がトコジラミを持って来た!」、「トコジラミがいる家だった!最悪!」と、怒っているホストとゲストの両方がいる。

ホテルにせよAirbnbにせよ、相手側も認めたくない事実ではある。

肌に違和感を感じたら、証拠写真を撮る。ベッドもシーツをはがし、トコジラミの糞(黒いシミ)や血の跡がないかを探してみる(あったら、写真を撮っておく)。

Airbnbでクレームするなら、やり取りは公式サイト経由で、筆記で残そう。

トコジラミの困るところが、「すぐにかゆくなる」わけではないこと。帰国してから気づくこともあり、宿泊先が複数あったとすれば、どこのホテルが原因か確信もできないかもしれない。

かゆいだけでも疲れるので、わざわざ英語でクレームするのは面倒だと思う人もいる。とはいえ、相手がトコジラミの存在を知らない場合もあるので、教えてあげて損はない。返金されるかは、交渉次第だろうが、あまり期待はしないほうがいいだろう。

Airbnbはホストが一般人で、プロの宿泊業者でもないので、さらに期待はできない。運営側の対応がしっかりされていないから、ホストもゲストもネットで怒り爆発させているのだろうと予想がつく。

想像するだけで気持ち悪いし、かゆくて不快だが、いずれ治る。むしろ大事なのは、自分がトコジラミを自宅に持ち帰っている可能性もあること。荷物の熱処理やスーツケースを置く場所など、対応を早くしたい。

虫を殺すには最低55度以上のお湯で服を洗う、スーツケースは4日間マイナス20度で冷やすなどの対策があるらしいが、どれも簡単ではない。

私はノルウェーの洗濯機では、60度以上でタオルや下着や消毒するが、繊細な服を60度はためらうし、夏にマイナス20度の場所でスーツケースを置くのは無理だ。

とはいえ、虫の侵入を想像するだけでおぞましいので、私が落ち着くまでスーツケースは外に放り出す。

いまのところ、トコジラミは自宅に持ち帰っていないようだった。

「トコジラミ」や「南京虫」とネットで検索するといろいろと情報がでてくる。

北欧各国では、夏休みの時期になると「トコジラミに注意しないと、旅行が台無しになりますよ」というニュースが出るのが恒例となった(例:今年のノルウェー国営放送デンマーク国営放送)。

滞在先が注意していても、トコジラミはやってくる。高級ホテルだからといって、虫にはそんなことは関係ないのが恐ろしい。

旅行後に被害に気付いて、情報収集をしていると対応が遅れる。旅行前から、トコジラミのことは知っておいて損はない。

(とはいえ、検索すると、虫や刺された人の被害写真が出てきて気持ち悪いので、ひと呼吸おいてから、リサーチしよう)

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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