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かわいい衣装満載のファッション映画!/学校を舞台にしたオランダとノルウェーの若者映画2選

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
Photo: 100% Coco/Oslo Pix

『100% Coco』(2017)は中学校に通い始めた13才の少女ココの話。ファッションとヴィンテージ、パリが大好きなココの部屋はカラフルな洋服でいっぱい。

オランダの作家Niki Smit氏の本が原作だ。

学校でファッションが好きな友達を作ることを楽しみにしていたココ。だが、校庭を歩く生徒たちはジーンズ、学校カバン、スニーカー、落ち着いた色の服と、「みんな似たような服」。

頭に大きなリボンをつけて、ひらひらのレース、目立つピンクなど、ココだけがみんなと違っていた。

学校でクールとされる女子グループに、「ピエロ」といじめられて、周囲と同じような格好で目立つまいとするココ。

ファッションセンスがある若者を見つけるためのプロジェクトにこっそりと顔を隠して投稿してみたら、思わぬ展開が待っていた。

本作はノルウェーのOslo Pix映画祭で上映中。

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ファッション映画が少ない、北欧版の若者映画といえば?

以前、私がオランダの首都アムステルダムの通りを歩いていた時のこと。「ノルウェーみたいに、服はカジュアルな国なのだな」と感じたことを覚えている。

小さな国で人と違う格好をしていると目立ってしまうのだろう。いろいろな価値観の世界が広がるネットでのほうが、ファッションセンスを受け入れてもらえる。

このオランダ映画は、いろいろなファッションがより許容されている日本のほうが共感されるのだろうなと感じた。

とはいえ、このような映画が作られるオランダは、私が住んでいるノルウェーよりも、まだファッションの多様性が高いのだろう。

平等精神が強い北欧では、「外見よりも中身」(映画ではココの母親のセリフ)という考え方が強い。だからファッション映画というのは制作されにくい。

最近のノルウェー版の若者向け映画といったら、なんだろう? 連想したのが『Psychobitch』(2019、サイコビッチ)という映画だった。

個性的すぎて学校でのけ者にされている少女に、同級生の男の子が恋をする。周りとうまくコミュニケーションができない彼女は、すぐにケンカをしたり、自殺願望があるなど、「頭がおかしい子」として有名だった。

上映当時、映画館にはたくさんの中学生が溢れていた。

話はファッションには重みを置いていないが、会場は笑いであふれ、現地の若者に受け入れられているのは確かだった。

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自分がどんどん年をとってくると、映画を見て、「今の若い人は、こういう作品が好きなのか」と別の社会の側面を知ることができる。

両作品では、「自分らしさ」と「周囲からの視線」の間で悩む若者の姿が描かれる。ココみたいに、100%自分らしく生きている人は、どれだけいるだろうか?

国ごとに特徴が異なる若者映画、見比べてみるのもおもしろい。

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個性的な服の組み合わせ、ヴィンテージのアレンジ、ネットで存在感を増すファッションブロガー。

オランダのファッション映画はあまりみたことがない人もいるのではないだろうか。

言葉はわからなくとも、予告動画を見ているだけで、なんだか元気が出るかもしれない。

ココの映画はすでに続編が出ることが決定している。

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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