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日本のお茶文化が北欧のカフェに フィンランドの抹茶ラテ現象

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
ブラックコーヒーが定番の北欧で、抹茶ラテがじわじわと浸透 Photo:Abumi

4月、フィンランドの首都ヘルシンキにて。

総選挙の取材をしている間にカフェを回っていると、とある「文字」を頻繁に見かけた。

ヘルシンキのArtisan Cafeのメニュー表 Photo: Asaki Abumi
ヘルシンキのArtisan Cafeのメニュー表 Photo: Asaki Abumi

「MATCHA LATTE」

マッチャ・ラテ。

ヘルシンキのカフェ「Andante」のメニューでも Photo: Asaki Abumi
ヘルシンキのカフェ「Andante」のメニューでも Photo: Asaki Abumi

そう、抹茶ラテだ。

私が住んでいるノルウェーでもたまに見かけるが、まだまだ浸透していない。

オスロにあるヴィーガンカフェOslo Rawでは抹茶ラテが人気、しかしノルウェーではまだまだ珍しい Photo: Asaki Abumi
オスロにあるヴィーガンカフェOslo Rawでは抹茶ラテが人気、しかしノルウェーではまだまだ珍しい Photo: Asaki Abumi

「どうして、至るところのカフェにあるのだろう? 流行っているの?」

「アルティザン・カフェ」で働くバリスタのカーポ・パーボライネンさんは、こう教えてくれた。

お客さんからの注文でカフェラテ、抹茶ラテをどんどん淹れるパーボライネンさん Photo: Asaki Abumi
お客さんからの注文でカフェラテ、抹茶ラテをどんどん淹れるパーボライネンさん Photo: Asaki Abumi

「フィンランド人は、甘いものが大好き。抹茶ラテには砂糖を入れることが多いから、男女問わず人気なんだ。甘すぎるとも、僕は思うけどね」。

「首都だけでだよ。ヘルシンキ以外の街では、こんなに抹茶ラテは見つからない」。

そう言いながら、こだわりの抹茶の粉などを見せてくれた。

確かに、フィンランドのカフェやスーパーを見ていると、甘いケーキやお菓子の種類が豊富で驚いた。ノルウェー国民に比べると、フィンランドの人は糖分の摂取量が多そうだ。

ノルウェーとフィンランドのカフェの違いはケーキの多さ。フィンランドの人はスイーツが大好き Photo: Asaki Abumi
ノルウェーとフィンランドのカフェの違いはケーキの多さ。フィンランドの人はスイーツが大好き Photo: Asaki Abumi

実は、高品質のコーヒーにこだわる北欧スペシャルティコーヒーのカフェには、「メイド・イン・ジャパン」がひっそりと隠れている。

バリスタの皆さんが愛用している器具は、大抵は日本製のHARIO(ハリオ)か、Kalita(カリタ)だ。

そして、今ヘルシンキのカフェでは、メニューに「マッチャラテ」という日本語が躍るようになった。

カフェ・アンダンテでは中古の北欧食器をたくさん販売している。モノを大事にする文化、このようなカフェはもっと増えてもよさそう Photo: Asaki Abumi
カフェ・アンダンテでは中古の北欧食器をたくさん販売している。モノを大事にする文化、このようなカフェはもっと増えてもよさそう Photo: Asaki Abumi

なぜ、抹茶ラテが流行るようになったか? 

ぱっと思いついた理由は、スターバックスとエスプレッソハウスの進出だ。

エスプレッソハウスというのは、スウェーデン発のコーヒーチェーン店で、北欧各地に店舗を構える。

ブラックコーヒーやカフェラテ以外のコーヒーメニューに加え、フラペチーノなどの新しいドリンク文化が広まったのには、彼らの役割が大きい。

さて、肝心の味はどうか?

薄めの味のカフェが多かった Photo: Asaki Abumi
薄めの味のカフェが多かった Photo: Asaki Abumi

「なんだか、薄いぞ」というのが私の感想。

日本での抹茶ラテはこんな感じだろうか?もうちょっと抹茶の味を濃くしてくれると、さらにいい感じだ。

4月にヘルシンキ・コーヒー・フェスティバルを取材した際、自分が耳にする音や目にする色で、同じコーヒーでも味が違うように感じるという実験をした。

Pauligバリスタ機関が開催していた味と色のコーヒーテスト
Pauligバリスタ機関が開催していた味と色のコーヒーテスト

そのことを思い出し、鼻をつまんで、ヘルシンキの抹茶ラテを飲んでみた。

泡の上にかかった抹茶の粉の香りがないと、ホットミルクを飲んでいるようだった。

まぁ、これも海外を旅している時の醍醐味か。

5月、ヘルシンキをEU議会選の取材で再び訪れた。カフェ「ポーリグ・クルマ」で、抹茶ラテを淹れてくれたのはソニアさん。

フィンランドの大手飲食品会社Pauligのカフェ。バリスタのソニアさん Photo: Asaki Abumi
フィンランドの大手飲食品会社Pauligのカフェ。バリスタのソニアさん Photo: Asaki Abumi

「オートミルクと緑茶のブレンドを好む人が多いので、抹茶ラテを健康的なドリンクだと思っている人が多い」。

「私たちのカフェでは砂糖を入れないので、甘い飲み物を好む若い人はチャイラテを代わりに注文します」。

Pauligで飲む抹茶ラテ Photo: Asaki Abumi
Pauligで飲む抹茶ラテ Photo: Asaki Abumi

「10人中1人は抹茶ラテを注文。これからもブームは続くと思います」。

「抹茶」という言葉がそもそも浸透していなかった数年前を考えると、フィンランドの人が「マッチャラテ」、「マッチャラテ」とカフェで注文している光景には、しみじみとしたものを感じる。

コーヒーやカフェ文化にこれだけこだわりが強い人々だ。いつかメニューには、「マッチャ」が登場して、抹茶を点てる人が現れるかもしれない。

観光客に人気の「ムーミン・カフェ」にも抹茶ラテはあるかな?と行ってみたら、ここにはなかった Photo: Asaki Abumi
観光客に人気の「ムーミン・カフェ」にも抹茶ラテはあるかな?と行ってみたら、ここにはなかった Photo: Asaki Abumi
ヘルシンキ空港のスーパーで買った抹茶ラテ。オートミルクを売るスウェーデンのOatlyが販売。冷たいのも悪くない。「オーガニック・100%ヴィーガン・オートミルクの抹茶ラテ」とトレンドの先を行く文字が並ぶ Photo: Asaki Abumi
ヘルシンキ空港のスーパーで買った抹茶ラテ。オートミルクを売るスウェーデンのOatlyが販売。冷たいのも悪くない。「オーガニック・100%ヴィーガン・オートミルクの抹茶ラテ」とトレンドの先を行く文字が並ぶ Photo: Asaki Abumi
日本のお茶文化が、北欧のカフェにじわじわと浸透するか。アンダンテ・カフェにて Photo: Asaki Abumi
日本のお茶文化が、北欧のカフェにじわじわと浸透するか。アンダンテ・カフェにて Photo: Asaki Abumi

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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