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混雑する店で、そこまで体力と時間を浪費するほどブラックフライデーはお得?

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
ノルウェー・オスロの通りで Photo:Asaki Abumi

今年のブラックフライデーでは、ノルウェーの人々はこれまで以上に多くのお金を出費した。買い物でクレジットカードを使用した回数は870万回(NTB通信社)。

一人当たり1,6回カードを使い、昨年と比較すると8,7%上昇した。

ノルウェー人が買い物に使った額は今年は36億ノルウェークローネ、昨年の33億ノルウェークローネより上昇。

最も買い物がされていた時間帯は11~18時だという。

ノルウェーでは2010年頃からブラックフライデーが広まり始めた。

この日の夜、オスロ中心地を歩いた。カール・ヨハン通りは、セールで買い物をして、大きな紙袋を手に抱えて歩く人でにぎわっていた。

店頭でのセール額を見ると、20~50%割引の文字が目立つ。

Photo: Asaki Abumi
Photo: Asaki Abumi

不思議だったのは、この程度の割引であれば、他の時期のセールのほうが混雑せずに、もっと安く買えるではないかということだった。

ノルウェーでは日本以上にセールが頻繁に開催されており、最終的には70%まで割引される。自分には何が必要かを分かっており、お気に入りの店の情報をフォローしていれば、もっと安く買えるだろう。

それとも、クリスマスプレゼントとして今必要なのだろうか。ノルウェーの60~70%引きセールに慣れている筆者には、ブラックフライデーの店頭価格はあまり魅力的とはいえなかった。

ニュースや広告チラシで話題になっているから、「買わなきゃ」と思う人も多いのかもしれない。

ノルウェーの新聞社やテレビ局は、この日は実際は通常よりも「高く」売る店もあることを報道。

経済紙Hegnarによると、この日に買い物をするために、仕事や学校を休むというノルウェー人は、なんと36万人。1人あたり3万3千円以上を使う予定と調査で答えたそうだ。

インターネットで買い物をした人も多く、今、各地の郵便局は荷物で溢れかえっているとのこと(NRK)。

ブラックフライデーに対抗する動き

「買い物しなきゃ」と思わせる社会現象に抵抗する人もいる。

筆者が普段チェックする北欧ファッションブランドの中には、「申し訳ありません。ノー・ブラックフライデー」と、売り上げの一部をチャリティーに寄付するというところもあった。

ノルウェーのファッションブランドHolzweilerはこの日本店をクローズ。他店とネットでの売上の20%は地元の慈善団体に寄付と発表 Instagram:Holzweiler
ノルウェーのファッションブランドHolzweilerはこの日本店をクローズ。他店とネットでの売上の20%は地元の慈善団体に寄付と発表 Instagram:Holzweiler
北欧ファッションブランドを売るF5 Concept Store。割引はせず、通常価格での売上10%をアムネスティ・インターナショナルに寄付 Instagram:f5_concept_store
北欧ファッションブランドを売るF5 Concept Store。割引はせず、通常価格での売上10%をアムネスティ・インターナショナルに寄付 Instagram:f5_concept_store

本当にこの日に買わなければいけないものなのか、自分は躍らされていないか。ブラックフライデーは、そのことをふと考えさせる日だ。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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