ノルウェー財務大臣がインディアンの格好、「文化の盗用」だと炎上

「財務省で秋祭り」と笑顔でインスタグラムに投稿 @sivjensen

ノルウェーのシーヴ・イェンセン財務大臣がインディアンの格好をした写真をインスタグラムに投稿し、物議を醸している。

※ノルウェーでは「インディアン」という言葉で今回は議論されているため、この記事では「アメリカ先住民」や「ネイティブ・アメリカン」ではなくインディアンという呼称に統一

「財務省で秋祭り」と、笑顔の絵文字を入れて、財務大臣は自身のインスタグラムに写真を投稿。

13日(金)におこなわれたパーティーでは、「西部開拓時代」、「スーパーヒーロー」、「ファンタジー」がドレスコードとなっていた。

Instagram: @sivjensen
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現時点ではアカウントには2600件以上のコメントがついており、多くは批判的な内容だ。

「これはダメでは」、「吐き気がする」、「カルチャーはコスチュームではない」、「人種差別」、「文化の盗用」という投稿の中には、ノルウェー語だけではなく英語のコメントも目立つ。

ノルウェーのメディアでは、批判する側の意見が特に大きく報道されている。

代表的なものは「抑圧されてきたマイノリティ(少数民族)のカルチャーを理解せずに、ハロウィンの感覚で、インディアンの格好をするのは無礼だ」、「これこそが、まさに文化の盗用」というもの。

「あなたのコスチュームではない」(#notyourcostume)という意味のハッシュタグをつけて、抗議する人も続出。

「なにがだめなの?」、「ただのコスチュームじゃないか」。「財務大臣がそこまで非難されるのが、理解できない」という立場の声も、批判記事が掲載されたSNSのコメント欄では目立つ。

軽はずみな思いで、(強者が)マイノリティのカルチャーを真似る(盗む)行為が、相手を軽視していると思われることもある。「『文化の盗用』(Cultural appropriation)とは、なにか?」という議論へと広まっている。

ノルウェーにはスカンジナヴィア半島北部に居住する先住民族サーミ人を代表する「サーミ議会」がある。何世紀にもわたり差別や抑圧を受けてきた立場として、サーミ議会や委員会のメンバーは財務大臣の行為を強く抗議した。

なにがだめなのか

「なにがだめなのか」という反応も国内で目立つことから、ノルウェー国営放送局NRKなどを通じてサーミ人が発言をし始めている。

サーミ議会の元議長で、サーミ委員会の現メンバーであるヘンリクセン氏は、NRKにコラムを寄稿した。

ハロウィンが近づいています。私からのアドバイスは、財務大臣のような真似はしないことです。

何世紀にもわたり、抑圧され嘲笑されてきた人々の恰好はしないほうがいいでしょう。

過去の抑圧や同化政策が原因で、ためらいがあった服をやっと着れるようになり、アイデンティティやカルチャーを取り戻しつつある今。その服がコスチュームとして着られると、胸が痛みます。

(ディズニー映画にでてきた)『セクシーなポカホンタス』を連想させる仮装は、暴力を受けてきた女性を軽視するだけではなく、性的な対象という印象を増長させます。

私たちは消滅したカルチャーではなく、今も生きている人間です。

あなたは知らなかったかもしれませんが、世界中にいるマイノリティはつらい歴史を背負っています。

パーティーに出席するから、SNSに投稿をするからと、マイノリティの格好をする必要はありません。想像力を使って、他の格好をしてください。

出典:サーミ委員会 ヘンリクセン氏 NRK記事より動画での発言を要約

この議論は、1週間経った今でも収まっていない。

財務大臣を批判する人が、さらに炎上するというケースも起きている。

インスタグラマーとして人気のある、ドラマ『SKAM』に出演したファルクさんは、「イェンセン財務大臣のコスチュームを支持する人は、白人で高齢の男性だ」とVG紙に寄稿。

「白人で高齢の男性」というカテゴリーに当てはまらない一部の人を苛立たせることとなった。「あまりにも低レベルな議論」、「コスチューム警察!」、「私は女性です。財務大臣の政策は支持しませんが、服を着る自由を私は支持します」などと、炎上の連鎖をうんでいる。

インディアンの衣装はノルウェーでは以前からネット販売などで売られていたが、ここまで大きな議論とはなっていなかった。

服を着た人物が、マイノリティや移民・難民に厳しい右翼ポピュリスト政党である「進歩党」党首で、政府の財布の紐を握る財務大臣という権力ある立場だからこそ、批判を浴びた側面も否定できない。同党は、少数民族サーミ人への公的支援削減や、サーミ議会の廃止を支持する。

イェンセン財務大臣は、インスタグラムでの投稿は削除しておらず、この件に関するコメントは避けている。

Text: Asaki Abumi