北欧の移民大臣が面会中止 「ノルウェーの選挙運動にスウェーデンを利用している」

首都オスロで、進歩党FrPの選挙小屋 Photo:Asaki Abumi

スウェーデンの移民大臣が、ノルウェーの移民大臣との面会を突然キャンセルした。その理由には両国の移民政策の解釈の食い違いと、ノルウェーの選挙運動が関係していると憶測を呼んでいる。

右派陣営である保守党と進歩党の連立政権でなるノルウェー。進歩党は欧州で話題となっている「極右・右派ポピュリスト政党」に位置する。

ノルウェー移民大臣 Photo: Asaki Abumi
ノルウェー移民大臣 Photo: Asaki Abumi

同党のシルヴィ・リストハウグ移民・社会統合大臣は、あえて過激で物議を醸す「話し方」でメディアを騒がせることを得意とする。人々を感情的にさせ、「ノルウェーでは難民申請者を受け入れる余裕はない」というメッセージを国外に発信している。

リストハウグ移民・社会統合大臣が、以前から利用している言葉が「スウェーデンの移民政策のような失敗はノルウェーでは起こさせない」だ。

「ノルウェーは、スウェーデンのようにはならない」。現地メディアや自身の人気のFacebookページで、大臣はこの言葉を何度も発信していた。

ノルウェーよりもさらに寛容な移民の受け入れで知られているスウェーデンを、同大臣はマイナスに評価し、問題が起きている地域を「失敗例」だとする。

スウェーデン移民大臣 Photo: Jann Lipka/Government Offices of Sweden
スウェーデン移民大臣 Photo: Jann Lipka/Government Offices of Sweden

29日、リストハウグ大臣はスウェーデンを公式訪問し、スウェーデンのヘレーネ・フリツソン(Helene Fritzon)移民大臣との面会が予定されていた。

以前PR会社にも努めていたリストハウグ大臣は、ノルウェーの報道陣をあえて同行させ、過激な言動を国内に拡散させる手段に長けている。

今回の訪問もノルウェーの報道陣を連れてくることから、「スウェーデンが移民統合政策の失敗例」だとPRすることが狙いだろうと、他政党などから批判を浴びていた。

大臣という特別な肩書と権力を利用して、進歩党のプロパガンダ拡散を狙うことを批判する意見もある。

ノルウェーの国政選挙は9月11日となり、その直前に移民議論に火をつける狙いがあるのだろうともされている。

リストハウグ大臣が飛行機でスウェーデンへ向かう途中、突然、面会をキャンセルする連絡がスウェーデン側から入った。このことは、ノルウェーですぐに大きく報道される。

その後、ノルウェーで視聴者数が最も多いタブロイド紙のVGに、スウェーデンのフリツソン移民大臣はこう答える。

リストハウグ大臣の訪問がノルウェーの選挙運動の一環だということは、この数日間で明白となっていました。彼女はスウェーデンの誤った印象を拡散させることに、より大きな関心を示しているように見受けられます。彼女のスウェーデンに対する描写は、くだらない。

ノルウェーの選挙が終わった後に、彼女と面会することは可能です。しかし、私は今日はこの選挙キャンペーンに巻き込まれたくはありません

出典:スウェーデン移民大臣がVG紙にコメント

スウェーデン移民大臣の面会拒否は、リストハウグ移民大臣にとってはさらに注目を浴びる種となった。各社ではトップニュースとして報じられている。

スウェーデンの大臣は面会をキャンセルしましたが、私はスウェーデンの警察から話を聞き、Rinkebyという町を視察することを楽しみにしています。Rinkebyはスウェーデンで最も荒廃しているとされる地域です。

ノルウェーがスウェーデンのように2015~2016年に多くの難民申請者を受け入れていたら、ノルウェーは多額のお金を使うことになっていました。スウェーデンのような状況を、ノルウェーに作り出してはいけないのです。

出典:ノルウェーのリストハウグ移民大臣 Facebookページ

大臣の投稿は、3時間で4000以上の「いいね!」がついた。

自身への対抗勢力に対して、同大臣は以前から「政治家なら難しい課題から目を避けてはいけない」と反論。

ノルウェー国営放送局NRKには、「スウェーデンで何が起きているのかをノルウェー国民は知る必要がある」と話している。

スウェーデンのRinkebyとHusbyは、ノルウェー国営放送局NRKが現地取材をして以前報道した、移民が多い地域として知られている。記者は現地で若者に脅され、警察は現状をコントロールできていないことが報道されていた。

今回のスウェーデン側の反応に対して、リストハウグ大臣や進歩党の政治家たちは、「選挙直前で、スウェーデン政権側はノルウェー左翼陣営に勝利してもらいたいと思っているのだろう」と指摘している。

Photo&Text: Asaki Abumi