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観光客増大で住民が困惑、墓地にテント、外に排泄物 ノルウェー絶景ロフォーテン諸島

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
美しい自然を求めて世界中から観光客が訪れる北極圏、ロフォーテン諸島(写真:アフロ)

ノルウェーの人気観光スポットであるロフォーテン諸島。北部に位置し、美しい自然の雄大さを求めて世界中から旅行者が訪れる。しかし、観光客が増えすぎていることが問題となってきた。

ノルウェーの人口は約520万人。約2万5千人が住むロフォーテン諸島には毎年100万人以上の観光客が訪れる。

宿泊施設は足りず、サッカー場墓地にテントを張り野宿する人が現れ、家賃は高騰。屋外では人間の排泄物が目立つようになった(国営放送局NRKの写真はこちら)。ゴミの収集も追いつかず、ゴミがゴミ捨て場からあふれでる。人間の排泄物があるため、子どもたちを散歩に連れていく地元の幼稚園・保育園が困惑している状態だ。過密状態や衛生環境の悪化に嫌気がさし、住民がSNSなどで悲鳴をあげはじめている。

自治体は観光税の導入を希望していたが、ノルウェー政府は却下。ロフォーテン諸島には、すでにこれ以上の観光客を受け入れる余裕がないということは、昨年も話題となっていた。

ノルウェーの観光PRを担うのは産業革命の推進などを支援するイノベーション・ノルウェー。同社のぺッテルセン氏は、今後は観光客がロフォーテン諸島だけではなく、ノルウェーの他の自然も体験したいと思えるように、観光PRを変えていく必要があるとNRKに語る。「もしどうしてもロフォーテン諸島を訪れたいのであれば、夏ではなく冬に行くという手段もある」。

同じくイノーヴェション・ノルウェー観光局長であるホルム氏は、住民が自分たちの居場所がないと感じ始めた時は、限界を超えた合図だと指摘(NRK)。

ロフォーテン諸島がバルセロナのようになるのではという懸念が、ノルウェーではささやかれ始めている。

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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