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ノルウェーが「Facebook警察」を検討、コントロールが効かないSNSに警戒

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
昨年、アフテンポステン紙の「親愛なるマークへ」抗議文 Photo:Abumi

ノルウェー犯罪調査機関Kriposが、投稿内容のコントロールができていないとされるFacebookに対して、独自の「Facebook警察」を検討していると、経済紙DNが報じた。

同紙によると、ノルウェー社会において現地の警察がもつ特権をFacebookに対しても発動させることになるかもしれない。国内の街頭だけではなく、Facebook内でも警察官がパトロールできる状態を示し、クローズされたグループ内の監視も可能となる。

Kriposの広報であるドゥエ氏はDN紙に対し、「検討中であり、まだ決定事項ではない」と回答。

TNS Gallupの調査によると、16~65歳のノルウェー人が週に最低1度は使っているSNSで、Facebookは80%以上と最も国民に利用されているサイトとなっている。

独走するFacebookに批判的なノルウェーの伝統メディア

影響力が巨大化するFacebookは権力を持ちすぎていると、眉をひそめるのはノルウェーの伝統メディアだ。読者がSNSへと移り、デジタル化により経営手段に頭を悩ませる各紙は、Facebookの権力肥大化に以前から懐疑的だ。

昨年、ベトナム戦争で投下されたナパーム弾から裸で逃げる少女の写真を「全裸の子ども」という理由で、同社はノルウェーの関係者や報道機関の写真、また写真付きの批判記事を続々と削除した。

ノルウェーの最大手アフテンポステン紙の編集長であるハンセン氏は、マーク・ザッカーバーグ氏に紙面で抗議する手紙を書き、騒動は世界中で報じられた。

24日、ハンセン氏は米国で開催されたグローバル・メディア・アワード授与式で「ベスト・イン・ショー」を授与される。ニュースと偽ニュースなどの違いに困惑する現代で、アフテンポステン紙の「親愛なるマークへ」キャンペーンはFacebookの問題点に大きな注目を集めたと評価された。

情報の透明化などを重視する北欧各国では、自分たちでコントロールが不可能となっているFacebookにいら立ちを見せる傾向が強まっている。

ノルウェー文化大臣を始めとして、独走するFacebookに協力姿勢を求める政府、警察、伝統メディアは増加の一途をたどる。

22日、英ガーディアン紙はこれまで非公開だったFacebookの投稿コンテンツにまつわる社の秘密のルールを報道した。ポルノ写真やリベンジポルノの消去対策などが暴かれたが、「巨大化しすぎたプラットフォームで、Facebook本社さえもすでにコントロールが効かなくなっている状態」とノルウェーの各メディアは批判的に報道した。

Photo&Text:Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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