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ノルウェー大手スーパーがパーム油入りイースターエッグをボイコット、「環境に優しいチョコレートを」

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
今年のFreia社のイースターエッグはすでに店頭に Photo:A Abumi

イースター(復活祭)まで、あとおよそ2か月。ノルウェー各地のスーパーでは、イースターエッグの形をした、美味しいチョコレートが販売され始めている。

この時期には、子どもから大人まで、大量のチョコレートを市民が消費する。同時に、「イースターエッグとパーム油」の議論が、当たり前のようにメディアを騒がせるようになった。

ノルウェーでは、「パーム油=熱帯雨林の破壊」という情報が、広く浸透している。同時に、イースターで大量消費するチョコレートには、パーム油が入っている。

「“未来を担う”子どもたちに、大人気のチョコレート」だからこそ、大人はどのようなメッセージを子どもに送るべきか?企業としての姿勢も問われるため、活発な議論が行われてきた。

特に、メディアや市民から集中批判を浴びる企業が、チョコレートブランドで有名な大手Freia(フレイア)だ。同社の人気商品であるイースターエッグでは、パーム油の占める割合は、原材料の約20%。その数字は、他のチョコレートよりも高いとされている。

2015年は、「北欧のチョコレート会社が防げなかったSNS炎上事例」として、かつてないほど、その倫理が問われることになった。

ノルウェーの大手スーパーであるレーマ 1000(Rema 1000)は、国内に580以上の店舗をもつ。2016年に、ネット経済新聞E24に対し、こう宣言していた。

「もし、イースターエッグにまだパーム油を使用していたら、来年、Freiaの商品が棚に並んでいることはないでしょう」

しかし、Freiaは、今年もパーム油入りチョコを販売する姿勢を変えなかった。

結果、Rema 1000は、売れ筋商品の販売を一切拒否することに。

環境団体グリーンピースのリーダーであるグロウセン氏は、Rema 1000のボイコットをきっかけに、他のスーパーも後に続いてほしいと、E24に語る。「パーム油がたっぷりと詰まったイースターエッグに、世界中が依存しているわけではありません」。

FreiaのライバルブランドであるNidarは、パーム油を使用していないイースターエッグを販売しており、「なぜFreiaには、これができないのだ?」と比較対象にされやすい。

Freiaの母体であるモンデリーズ社は、「わが社のエッグの中身のクリームは、スプーンですくえるほどフワフワしており、他社の商品とは比較にならない」と、商品の特徴を維持するためのパーム油の必要性を主張し、批判を否定。

今まで議論されてきたイースターエッグに対し、大手スーパーが、このような形で、大人気商品をボイコットすることは初。国営放送局NRKや大手新聞社など、現地メディアが2月に一斉に報じた。

環境議論などにおいて、「ボイコットは解決策にはならない」とは時に言われることではある。しかし、Freia社はこれまでに批判があったにも関わらず、むしろ商品価格を値下げすることで、消費者をさらに魅了しようという戦略を試みている。毎年の批判報道や議論が、反対にブランドネームを浸透させている一面もある。環境問題にそこまで熱心になれないという消費者には、安くなった人気商品は魅力となる。

大手チョコレートブランドは、消費者やメディアからの「環境に配慮した商品を」という声に、どう耳を傾けていくのだろうか。イースターエッグとパーム油の議論は、この国ではまだまだ続きそうだ。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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