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難民申請却下者に足輪GPS装着を検討 「国民の安全のために」ノルウェー移民大臣

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
ノルウェー移民・社会統合大臣 Photo: Asaki Abumi

シルヴィ・リストハウグ移民・社会統合大臣(進歩党)が、難民申請を却下された者などを対象に、足輪によるGPS監視を検討していることを、現地の国営放送局が明らかにした。

ノルウェーでは、拘留期間が4か月以内や再犯の可能性がある性犯罪者など、一部条件に該当する犯罪者の場合、位置情報が把握できるGPS器具を足首に付けることを条件に、刑務所の外で自宅待機、就労、通学が可能。このような足輪GPS、または、なんらかの別の形での電子機器によるコントロールを、難民申請却下者にも適応できないか、大臣は現地警察を訪れ、検討するように求めている。この案は、大臣が可能性として希望している段階で、まだ導入が正式決定しているものではない。

国営放送局によると、大臣が足輪GPSを検討している対象者は、現時点で主に以下の3つのグループ。

  • 難民申請を却下された子連れの保護者(子どもを置き去りにして逃亡する親がいるため)
  • 不法滞在している犯罪者(母国が受け入れを拒否、もしくはその者が非協力的な結果、強制送還できない者たち)
  • 身元証明ができない者たち

「子どもが長期的に独りぼっちで置き去りにされることを、我々は望まない。強制送還できない一部の者たちは、再犯を繰り返す。欧州でテロの危険が増している中、身元が不確かな者は、なんらかの形で監視する必要がある」と、大臣は、国営放送局に話す。

だが、現状の足首GPSは、犯罪者に使用される「刑罰」の象徴でもある。まだ子どもを置き去りにしていない家族に同じGPSを取り付けることには問題もある。紛争国から逃れてきた者の中には、正式な書類を持っていないことも珍しくない。身元が確認できないというだけで、どれくらいの期間、個人の自由を監視・拘束するのか。逃亡者や危機対策のための規制案としてありえないものではないが、犯罪者との区別が必要であり、そのまま採用できるものではないと、ノルウェー難民申請者機関のリーダー、アウステンノー氏は国営放送局に語る。

リストハウグ大臣は、自身のフェイスブックで「最も重要なことは、ノルウェー国民の安全だ」と語る。

大臣のSNSのコメント欄には、熱烈な支持者からのコメントが殺到しやすい。「とてもいい提案ですね」、「DNAも採取するべきだ」、「早く追い出せばいい」という声などがある。

一方、「お願いです、人をそのように扱わないでください。今は2016年です。超えてはいけない一線というものがあります」、「あなたが、このような形で人々に汚名を着せることを、私は悲しく思います」、「あなたにとって、人権の定義とはなんですか?」と疑問の声を投稿する人々もいる。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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