死刑や復讐は解決策にはならない オスロで死刑廃止世界会議

オスロ市庁舎前で、死刑廃止を訴えるパレード Photo:A Abumi

ノルウェーの首都オスロで、第6回死刑廃止世界会議が6月21~23日に開催された。会議には80か国以上から30人以上の大臣や300人以上の外交官、80人のスピーカーや死刑判決を受けたことのある証人が集まった。

日本の現状を語る袴田さん Photo: Asaki Abumi
日本の現状を語る袴田さん Photo: Asaki Abumi

日本からは、強盗殺人事件で再審開始決定を受けた袴田巌さんの姉・秀子さんが参加。釈放されるまでの間、弟の精神状態が次第におかしくなる一方、弟の無罪を信じ、生き続けてきた日々を振り返った。「最愛の弟と暮らし始めてちょうど2年がたちます。事件発生から50年。巌にとっても私にとっても、取り戻すことのできない半世紀です。巌は心を閉ざして、必死で生きていくための戦いをしていると思います。その心の中には、張り裂けんばかりの無実の叫びで、溢れかえっていると思います」。えん罪の恐ろしさを訴えた秀子さんの会話後は、会場は聴衆による拍手で包まれた。

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連続テロを体験したノルウェー 「憎悪に対して、さらなる憎悪や復讐は解決策にならない」

ノルウェーは、1人の男性によって、2011年に77人の命が奪われた連続テロを体験した。ブレイビク容疑者に対する禁錮21年が「最高刑」であり、刑務所での生活が他国と比較して「快適すぎる」のではないかと、国外から驚きをもって受け止められることがよくある。当時、ノルウェーでは、事件のために国の制度や価値観を変えることは、「まさにブレイビクの思う壺になる」と、憎しみに対して、さらなる憎しみで向き合うことを政治家や世論は拒んだ。刑務所の環境が快適すぎるのではないかという声はあるが、死刑を望む世論の動きはみられない。

ノルウェーでは、刑務所は「罰する場所」ではなく、「社会復帰をするための場所」と考えられている。連続テロから生き延びたオスロの副市長は、「なぜオスロという街が、ブレイビクを生んでしまったのか、問い続ける必要がある」として、憎悪や新たな事件が広がらないように、議論し続けることの必要性を強調している。

ノルウェー連続テロ 生存者や遺族が振り返る「あの日」。なぜオスロは殺人犯と憎しみをうんでしまったのか

ノルウェーのブルゲ・ブレンデ外務大臣は、世界会議の公式プログラムで次のように述べている。「死刑制度は、人間の尊厳を傷つけるものです。どのような重犯罪であっても、死刑は適切な対応策ではありません。国家は、罰や復讐として、人命を奪うべきではないのです。なによりも、間違いをおかさない、完璧な司法制度というものは存在しません。無実の人への死刑宣告が絶対にありえないと確信することは、誰にもできません」。

死刑台を逃れ、その後夫婦となった2人 Photo:Asaki Abumi
死刑台を逃れ、その後夫婦となった2人 Photo:Asaki Abumi

世界会議の最終日には、クロージングセレモニーが開催されたオスロ市庁舎から、大通りのカール・ヨハン通りを通り、中央駅まで死刑廃止を訴えるパレードがおこなわれた。パレードの後方で、ゆっくりと後を追っていた高齢の夫婦がいた。車いすに乗っていたのは、米フロリダ州で電気椅子から逃れたサニー・ジェイコブさん。車いすを押していたのは、アイルランドで絞首台から逃れたピーター・プリングルさんだった。遠い地で、死刑という同じ運命を逃れた2人は、その後偶然に出会い、夫婦となった。

AFP 死刑台からロマンスへ、夫婦で取り組む死刑廃止活動

ジェイコブさんは、死刑という運命に落胆することよりも、監房での生活をできるだけポジティブに捉えようとし、ヨガや書道などをして、時間を黙々と過ごしたと振り返る。「いつか、日本でも講演がしたいと思っています。袴田さんに起きた出来事は信じがたいもの。えん罪という可能性をゼロにすることは、誰にもできません」と語った。

アムネスティ・インターナショナルによると、現在102か国で死刑は廃止されている一方、2015年には少なくとも1634人が死刑を執行された。この数は2014年と比較して、573人増加している。世界中では、少なくとも2万292人の死刑囚がいるとされており、世界会議では、死刑執行国である日本を含むアジアもメインテーマとなった。

駐日ノルウェー王国大使館 「死刑廃止世界会議」オスロで開催

Photo&Text: Asaki Abumi