「憎しみを広げない、ゲイパレードに参加しよう」ノルウェー極右政党も呼びかけ 米国銃撃事件で高まる議論

毎年大規模に開催されるプライド・パレード Photo: Asaki Abumi

銃撃事件を受けて、自分の存在が否定されていると衝撃を受ける人々

米国での銃撃事件は、ノルウェーでも大きな波紋を広げている。同性愛者の権利が否定され、イスラム教徒への憎しみが広がるのではないかという不安から、議論を活性化させようと人々が声をあげはじめた。イスラム教徒や同性愛者にとっては、ノルウェーはいまだに住みにくい社会であること。特に、同性愛者であると同時にイスラム教徒である人にとっては、カミングアウトがさらに難しいことなどが議論されている。

オスロ市民が米国大使館前に追悼の花束 憎しみの連鎖に動揺

同性愛者と宗教が異なる人々への支持と国民の団結力を強めるために、ノルウェーの政治家や各政党は、人々に今年のゲイパレードに参加することを強く訴えている。意外なことに、「パレードなどは左派勢力のすることだ」と通常は距離を置きやすい与党・右翼ポピュリスト政党の進歩党までもが、参加を強く呼びかけている。

次々とカミングアウト。議論して、みんなで考えよう

警察官もLGBTを支持するために毎年参加 Photo: Asaki Abumi
警察官もLGBTを支持するために毎年参加 Photo: Asaki Abumi

ノルウェーで最も人気がある女性ブロガーであるソフィエ・エリーセ氏は、自身のブログでバイセクシュアルであることをカミングアウト。「私は男性にも女性にも恋をした。それはOKなこと。オスロ・プライドに参加するのが楽しみだわ。“あなたはゲイ”、“彼女はレズっぽい”とか、そういう考え方はもうやめましょうよ」。

同性愛者について、考えを改めた政治家

昨年の地方選挙後、オスロの市長候補のひとりであった緑の環境党のショアイブ・シュルタン氏。イスラム教徒である彼は、過去に同性愛者を否定するネット投稿をしており、「多民族文化でなるオスロの市長にふさわしくない」と大きな反感と批判にさらされた。当時、同氏は過去の言動を謝罪し、現在は同性愛者を支持している。

「今回の事件は、憎しみがどれだけ残酷なものか、憎しみの言い訳に宗教が利用されることが証明されています。憎しみやテロを正当化するために、私の宗教が使われることは耐え難い。ノルウェーのイスラム教徒の皆さん、憎しみに立ち向かうために、今年のプライドに参加しましょう」。(緑の環境党、ショアイブ・シュルタン氏のFacebookより)

イスラム教徒によって、ゲイプライドのような公の行進行事に参加をすることは非常に勇気がいることだ。現地の団体や報道機関は、シュルタン氏の呼びかけを評価している。

報道機関が一般市民や政治家の投稿を連日掲載

地元メディアでは、同性愛者やイスラム教徒からの寄稿が連日掲載されている。

Photo: Asaki Abumi
Photo: Asaki Abumi

「異性愛者は、“ノルウェーはそこまでひどい国ではない”と言います、でも、日常生活は、まだたくさんのホモフォビアで溢れています。私はプライドを楽しみにしていました。いつもなら、そこは“安全な場所”だからです。でも、私たちは今恐れています、銃で撃たれるのではないかと。米国での事件は、私の心を粉々に砕きました。私たちは虹の旗をもって、パレードに参加しなければいけません。どれだけ恐怖に怯えていても、みんなで一緒に立てば強くなれるから」(アフテンポステン紙 6月17日 17歳の同性愛者の女性マヤ)

「私は同性愛者でイスラム教徒です。私たちは、自分たちの宗教の輪から否定され、まったく存在しない人間として見られている」(アフテンポステン紙 6月15日 18歳の男性オマール)

「毎年、多くのジャーナリストは私に問いかけます、なぜ、プライドが今も必要なのかと、今年、その質問を投げかけてくる報道陣はいません」(国営放送局 6月17日 オスロ・プライド代表 ラーシュ・アーネセン)

移民に否定的な進歩党と大臣の言動に注目

移民やイスラム教徒に否定的な進歩党の言動にも注目が集まっている。今年は、いつもとは違うようだ。

進歩党の党首を仮装する人も(口紅のドレスを着た人物) Photo:A Abumi
進歩党の党首を仮装する人も(口紅のドレスを着た人物) Photo:A Abumi

「来週の土曜日は、誰もが通りに出て行進に参加することを望みます。特に、移民環境にいる人々に」(国営放送局6月18日 ソールヴァイ・ホルネ 子ども・平等大臣、進歩党)

「リストハウグ移民・社会統合大臣、あなたは行進に参加する予定ですか?進歩党のホルネ大臣が、移民にパレード参加を求めていますね。でも、本当に説得される必要があるのは、彼女の進歩党の同僚、リストハウグ大臣でしょう。移民大臣のこれまでの発言は、移民を委縮させています。パレードのことを、“半裸でダンスする同性愛者の行進”と2009年に形容したのですから。“社会統合”大臣なのですから、ノルウェーがどのような国であろうとするのか、その責任が彼女の肩にはかかっています」(アフテンポステン紙6月18日 労働党の時期党首候補 ハディア・タジク氏)

「LGBTへの攻撃は、全ての人間、自由と民主主義への攻撃です」(進歩党青年部代表 ビョーン・クリスチャン・スヴェンスルード氏)

進歩党のオスロ支部は、今年のゲイパレードへの参加を表明している。これまで同性愛者に対して、一部で否定的な発言をしている党員もおり、同時に移民や難民、イスラム教徒に最も否定的な政党・与党だ。進歩党がパレードに参加し始めているということは、ノルウェーの平等社会が、少しずつ、一歩先へと進んでいることを表しているのかもしれない。

1人の男性によって、77人の命が奪われた連続テロを経験したノルウェーにとって、米国での銃撃事件は衝撃的だった。連続テロ事件以降、ノルウェーでは「犯人の思う壺にはさせない。憎しみには負けない。私たちは、彼の否定した今の寛容なノルウェー社会を維持する」という考え方がある。「同性愛者もイスラム教徒も、社会の大事な一員だ」ということを示すために、25日には過去最大規模の人々がパレードに参加するとみられている。

ノルウェー連続テロ 生存者や遺族が振り返る「あの日」。なぜオスロは殺人犯と憎しみをうんでしまったのか

Photo&Text: Asaki Abumi