北欧の激安ファッション批判ドキュメンタリー、第二弾がスタート。標的はあの大手企業

その服を誰が縫っているか、考えたことがありますか?(写真:アフロ)

ノルウェーとスウェーデンで話題となったファッションの裏側

2年前、ノルウェー最大手の新聞社アフテンポステンが電子版で提供した映像シリーズ「SWEATSHOP~死ぬほど安い価格のファッション~」が、現地で大きな話題を集めた。「SWEATSHOP」(スウェットショップ)は、英語でアパレル業界における「ブラック企業」を意味する。

シーズン1は英語字幕付きでAftenpostenで閲覧可能

シーズン1は各10分前後に渡る全5話構成。3人のノルウェー人の若者がカンボジアに渡り、どのような環境下で服が製造されているかを実体験したドキュメンタリーだ。想像以上の厳しい労働環境を、映像で目の当たりにした視聴者は衝撃を受けた。人口約520万人のノルウェーから発信された動画は700万回以上、You Tubeの英語版の予告動画は400万回以上も再生された。SNSやメディアを中心に議論が深まった。一時は大手ブランドでの買い物をボイコットする者もでたほどだ。

その服を縫ったのは誰? ノルウェーで深まるファッション議論

H&Mが批判対象に

当時、標的の対象となったのは、ノルウェーに現在106店舗を持つ、スウェーデン発の大手アパレルメーカーH&Mだった。世代を問わず、多くのノルウェー人が買い物をするブランドだ。そのため、「大企業だからこそ、社会的責任を果たすべき」という倫理が求められやすい。

シーズン2でも、放送1回目からH&Mが批判対象とされた。「縫製工場を見学させてほしい」という4人の若手ブロガーと、新聞社側の要望を、H&Mノルウェーの広報は拒否。できる限り、情報を透明化しようとするH&Mの姿勢も伝わるが、カメラが縫製工場に入ることを、様々な言い分で断固として嫌がる。

H&Mは、サステイナブルなブランドであるように努めるが、新聞社側の報道は常に批判的であるため、ブランドイメージに与えるダメージは計り知れない。シリーズ2は、H&Mの本国であるスウェーデンの大手メディアAftonbladetとの共同制作であり、スウェーデンの人気ブロガーも2人出演している。放送開始後、Aftenposten紙では、H&Mの実情や広報担当者とのやり取りを公開し、批判する記事を複数公開した。

偏向報道?

大手アパレル業界を批判することで、報道機関は大きなダメージを受けない。しかし、H&Mに対しては、あまりにも報道の仕方が偏りすぎているのではないかという批判もある。H&M・ノルウェーが、「なぜ、自分たちだけここまで批判されるのだ」と理不尽に感じることは、不思議ではない。

出演する若いブロガーたちには、大企業であるH&Mを巻き込むことに、見えない恐怖を感じている者もおり、動画では、その葛藤も映し出されている。

シーズン2では、カンボジアでの工場の現状を追い続ける。4人の若い北欧ブロガーたちは、今回何を見て、体験し、大量消費国である母国に何を伝えることになるのだろうか。新聞社とブロガーは、貧困国の服の作り手たちの労働賃金を改善するような、影響力を発揮できるのか。

SNSでは、「ファストファッションをボイコットしよう」、(ブロガーたちに対して)「がんばれ!」、(このシリーズを見ていると)「自分が今まで、どれだけ恵まれた環境にいたか実感する」というコメントが寄せられている。

情報が透明化されていないファッションにおいて、「でも、どうやって服を選べばいいのか」、「しょうがないだろう」という声もある。「我々はここまで情報を開示しています」と、自分たちはサステイナブルであると主張するアパレルメーカーもいる。

最終目標は、政治家を動かすこと

プロジェクトの最終的な狙いは、メディアで世間の関心を高め、アパレル業界における情報透明化と規制を定めた法案を国会で実現させることだろう。最終的な解決策を、政治家に求める動きは、ノルウェー社会らしいともいえ、すでに6月に国会で審議が予定されている。

Text: Asaki Abumi