ノルウェーでミシュラン星獲得店が次々閉店する理由は「ストレス」?のびのびした環境を好むシェフたち

ベルゲンの人気店Lysverket Photo: Marius Fiskum

ミシュランガイドの北欧版が初めて発売されたのは2015年。2016年度は2月26日発売予定で、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンから266のレストランと122のホテルが紹介される。

北欧の中でもグルメのイメージがあまりないノルウェーだが、地元食材を利用しながら、土地の活性化に貢献し、伝統食材の常識を破る料理デザインを主とした「新北欧料理」レストランが新たな観光客を近年魅了し続けている。

これまで、ミシュラン星といえば、日本などの国が大量に獲得し、北欧は少なく、またノルウェーでいえば首都オスロの料理店のみで、ベルゲンなどの他都市が獲得しないことが、地元の料理界から指摘されていた。

北欧初の三ツ星獲得

Photo:amazon.co.uk Nordic Countries 2016
Photo:amazon.co.uk Nordic Countries 2016

2016年度の表紙写真は、ベルゲンにある世界遺産のカラフルな家屋ブリッゲンであることから、「ベルゲンが初の獲得か!?」と発表前から話題を集めた。しかしながら、表紙のベルゲンでは星獲得店は現れず、またオスロに集中することとなった。

24日の発表で、三ツ星を北欧で初めて獲得したのはオスロのMaaemoとコペンハーゲン(デンマーク)のGeranium。スウェーデンでは24店舗、デンマーク22店舗、フィンランド4店舗、ノルウェーでは5店舗のレストランが星を獲得し、スウェーデンとデンマークの2か国が星をほぼ独占した。

ノルウェーでは、Kontrast、Fauna、Stadtholdergaardenが一つ星、またオスロ以外の街で初めてスタヴァンゲルのRe-Naaが一つ星を獲得。

ノルウェー初の三ツ星を獲得したMaaemo Photo:Asaki Abumi
ノルウェー初の三ツ星を獲得したMaaemo Photo:Asaki Abumi

ミシュラン星店が、次々と閉店

その一方、ノルウェーでは最近これまでのミシュラン星の獲得レストランが続けて閉店を発表していた。ファウナ(Fauna)とイラヤリ(Ylajali)がその代表だ。

ダーゲンス・ナーリングスリヴ紙に対し、2013年にオープンしたファウナの店長は「もう限界だ。ファウナは我々が予想していた以上に大きくなってしまった。楽しく営業するはずが、成功への恐怖に頻繁に襲われるようになった」と、原因は経済面ではなく、精神的なものだと語る。今回一つ星を維持したが、ファウナは年内7月に閉店予定。イラヤリは昨年末に閉店した。

オーナーたちは料理界から去るわけではなく、新しい料理プロジェクトに意欲を燃やす。彼らが別れを告げるのは、ミシュラン星を獲得して有名になりすぎた店だ。「鳴りやまない予約の電話がなくなると思うと、ほっとする」とファウナのキッチンシェフのスヴェンソン氏は同紙に語る。

過剰労働やストレスを好まないノルウェー人

日本人とノルウェー人では、ストレスの考え方が異なる。わが社のためならと、残業をしながらストレスに耐えて仕事をする日本人の働き方は、多くのノルウェー人には無理だろう。ミシュラン星という世界的な評価を得ることで、国内外からの注目を浴び、休みなく働く。そのライフスタイルを理想としないノルウェー人がいることは、驚きではない。

最近はノルウェーの政治・教育現場を取材していても、学校政策が、「子どものストレスをどう減らしていくか」ということが基盤になっていることに驚いている。「評価主義・競争環境でストレスを乗り越える強さを養う」ではなく、「どれだけ試験や成績評価制度を減らし、かわいそうな子どもをストレスから守るか」という議論になりやすいのだ。この国で、ストレスと忙しい労働環境を美徳としない大人が育つことは、自然な流れかもしれない。

新たな星獲得店が、今後恐らくぶつかる同じ壁

新たな星獲得店では、1~2年後に、店長や店員はまだ元気に働けているだろうか。ミシュラン星は経済を潤滑させ、国民を喜ばせ、新たな客を呼ぶが、のびのびとしたノルウェーではそれで必ずしも全てがプラスに働くわけではない。そのことを、この国の人々は薄々気づき始めている。

フィヨルドに囲まれたノルウェーでは、新鮮な海鮮物がおいしく、国際的には無名でも実力のある料理店も多い。ミシュランガイドにのらないほうが、長生きできる店も多いのかもしれない。いずれにせよ、今年のノルウェーの観光客はさらに増加しそうだ。

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Text: Asaki Abumi