外国人の失業率や犯罪率の統計発表は、人種差別を助長するか?難民問題で敏感になっているノルウェーで議論
ノルウェー統計局SSBの調査によると、移民の間で失業率が上昇し、十分な税金を払わずに社会福祉援助に頼っているという現状が発表された。ノルウェー首相は、「国にとって大きな挑戦であり、このままでは国民が増税を余儀なくされる」としている(国営放送局)。
※「移民」にはスウェーデンなどの北欧出身者、欧米、日本人などのアジア人など外国人を含む。
統計局によると、移民の失業率は2014年の6.9%から、2015年には7%に。移民を除いた国民の失業率は1.9%から2.1%に上昇。約520万人の国全体の失業者は4.6%。失業者の3人に1人が移民となる(昨年の欧州難民問題によって増加した難民申請者は統計結果に含まれない)。
2014年の社会援助の受給者は、移民が7.5%に対し、その他国民は2.2%と、移民の社会福祉の依存率が約3倍以上高い。ソマリア、シリア、アフガニスタン、イラクの出身者が多くを占める。
国営放送局の報道に衝撃を受ける派
国営放送局は統計局の結果をもとに、「アジアとアフリカ出身者の納税率が低く、社会福祉援助の依存率が高い」という見出しで報道したが、同局のフェイスブックページでは、視聴者から「移民差別を助長するような偏った報道だ」、「かつてのドイツのプロパガンダ映像のようだ」、「このような統計では移民は悪くみられがちで、社会になじみにくくさせるだけ」という批判も寄せられている。
「これが真実だ」、「追い出せ」と、国の将来を危惧する派
それに対し、「早くこいつらを国外退去させろ」、「左寄りの人間の典型的な言い分だ」、「これが真実だ」、「国営放送局がこのような情報を出すことは喜ぶべきことで、この外国人たちは国にとって持続可能な存在ではない」、「不平等だ」、「侵略だ」、「爆弾みたい」、「俺たちの金が、なにに無駄遣いされているか、わかるな」、「彼らが社会参加するまでに、何年待たなければいけないのだ?」というようなコメントもある。
国籍をもとにした統計調査に、なぜ敏感になるのか?
国籍を背景に、犯罪率、納税率、失業率などの統計をだすことには意見が分かれている。統計局SSBは、移民・難民に最も厳しい与党・進歩党に、「国籍をもとに国内犯罪率」を調査するように依頼されたが、NOと却下したことが1月に大きく報道された。ノルウェーのプレス協会は「議論に重要なデータは発表されるべき」と非難し(国営放送局)、統計局は「資源に限りがあり、他の犯罪調査を優先させなければいけないため」だと主張した(アフテンポステン紙)。
進歩党は、欧州経済領域圏外からの労働移民は制限するべきだと、以前から主張している。
中央党のルンテイゲン国会議員は、「この数字は、ノルウェーの移民社会統合政策がうまく機能していないことを示している」とした(国営放送局)。
Photo&Text: Asaki Abumi