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「難民の波は国の価値観を圧迫する」。子どもの将来を心配するノルウェー移民大臣。高校生の意見は?

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
難民申請者(奥)と移民大臣(手前)Photo:Asaki Abumi

「私が自分の子どもたちの将来を心配していることは明白です。ノルウェーへ来る人数が統制できなければ、我々が慣れた福祉制度に陰りがみえてくるでしょう」。難民問題が連日ノルウェーで報道される中、新設された移民・社会統合大臣であるシルヴィ・リストハウグ氏は1月8日付のノルウェー全国紙アフテンポステンのインタビューでそう答えた。

筆者が難民受け入れに反対・不安派の人々にインタビューし、ソーシャルメディアでの様々な投稿を見ていると、よく目立つ声が「子どもたちが心配」という親の本音だ。難民申請者の受け入れ施設がある地域では、子どもが危険な目にあうのではないかという不安。国の行く末を長期的に考えた時に、今の大人たちが享受している福祉制度が難民増加で悪化し、子どもたちが現在のような整った教育や医療制度を受けられないのではないかという不安。

「難民の波は我々の価値観を圧迫する」と同紙に話す大臣。他国との異文化を例に、移民の男女が好きな相手と結婚できなかったりという現実がノルウェーで起こっていることに懸念を示し、難民の波は「ノルウェーの民主主義への挑戦状となる」と述べている。移民・難民に最も厳しい進歩党出身の移民大臣は、過激な発言で物議を醸しやすい。その一方、一部の親が人種差別者と思われることを恐れ、口に出せずにいる本音を代弁していることも確かだ。

親世代と同じように、将来の大人たちは心配しているのだろうか?

オスロの高校に通うベットレ・ブレッケ(18)さんは、ノルウェーに富をもたらしている石油資源もいつかはなくなるのだから、福祉制度はいずれにせよ今よりも悪くなるだろう、それでも生きていくことはできると話す。

「多くの難民申請者がノルウェーに来たときにどうなるかはわからない。けれど、“ノルウェーの福祉制度の甘い蜜を吸いにくる”(移民大臣の過去の発言)と言ってしまうのは、なんだか不平等だと思う。難民申請者の人たちは、まだ何もしていないしね。彼らは運に恵まれなかっただけ。僕は、ノルウェーはもっと難民を受け入れていいと思っているよ」。

Photo&Text:Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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