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物議を醸した日本総領事の始球式。仕切り直しイベントで大投手と和解

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
森美樹夫大使(左)とマックス・シャーザー選手。提供:在ニューヨーク日本国総領事館

野球がアメリカから日本に伝来したのは1872年、つまり今年は150年の節目の年にあたる。

それを記念し、ニューヨーク市で25日、日米友好イベント「日米野球ヒストリーナイト(Japan U.S. Baseball History Night)」が催された。

会場は、大リーグのニューヨーク・メッツの本拠地、シティフィールド。この日のコロラド・ロッキーズ戦との試合開始に先立ち、在ニューヨーク日本国総領事館の森美樹夫大使・総領事による始球式が「ついに」実現した。

クイーンズ区にあるメッツ・シティフィールド。(c) Kasumi Abe
クイーンズ区にあるメッツ・シティフィールド。(c) Kasumi Abe

(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

始球式に先立ち、メッツ社長のサンディー・オルダーソン氏や始球式で捕手を務めた元メッツ選手の吉井理人氏らとグラウンドに現れた森大使は、「先ほどセントラルパークで、吉井さんに相手になってもらい、ボールを投げる練習をしてきました」と、始球式への抱負を語った。

(左から)メッツのオルダーソン社長、森大使、メッツのキャラクター、始球式で捕手をした吉井氏。(c) Kasumi Abe
(左から)メッツのオルダーソン社長、森大使、メッツのキャラクター、始球式で捕手をした吉井氏。(c) Kasumi Abe

始球式でボールを投げる森大使。捕手は元メッツの吉井氏。(c) Kasumi Abe
始球式でボールを投げる森大使。捕手は元メッツの吉井氏。(c) Kasumi Abe

実は同球場で今年5月、「ジャパニーズ・ヘリテージナイト(Japanese Heritage Night)」が行われ、森大使による始球式は本来、そこで予定されていたものだった。大使はこの時マウンドに向かったものの、メッツの先発投手、マックス・シャーザー選手が投球練習をはじめ、始球式が行われることはなかった。SNSでは「なぜシャーザー選手は日本の大使を無視したのか」「失礼では?」などと話題になった。

その後、始球式を巡る混乱の背景について、メッツ社長のオルダーソン氏より森氏へ説明があり「誠実な謝罪がなされた」(在ニューヨーク日本国総領事館)と伝えられていた。よってこの日は、仕切り直しの始球式という意味合いが込められていた。

森大使は5月の騒動を振り返り、「球団内部でのミスコミュニケーションがあったそうです。あのようなことが二度と起こらないように手順を見直すと球団より説明を受けている」と語った。

また森氏は、この日の始球式直前にクラブハウスでシャーザー選手と再会したという。その際、同選手より、初回の始球式で段取りの打ち合わせが球団内でうまくできていなかったことを謝罪されたとし、「気持ちよくお話しさせていただきました」と述べた。和解の印として「今日は2人で始球式をしようという気持ちでお願いした」と言い、同選手の直筆サイン入りキャップも見せてくれた。

「災い転じて福となす、英語ではBlessing in the skyとも言いますが、そのような諺通り、2度始球式に臨むことができ、経験を糧に野球を通じた日米交流イベントができてよかった」と語った。

「今日は気持ちよく投げることができたか?」との記者からの質問には、「そうですね、はい。ちょっと蒸し暑かったですが」と言って微笑んだ。

この日は始球式のほかにも、球場内で日米野球交流の歴史についての動画上映、太鼓演奏、折り紙ワークショップなどもあり、これらを通して日本の文化がメジャーリーグのファンに披露された。また試合はピート・アロンソ選手(20番)が2ランホームランを放つなどし、3対1で勝利の女神はメッツに微笑んだ。

球場前で披露された、僧太鼓による太鼓演奏。(c) Kasumi Abe
球場前で披露された、僧太鼓による太鼓演奏。(c) Kasumi Abe

ホットドッグとフレンチフライ(14.25ドル、約1950円)。球場ということで値段が高めだが、この雰囲気の中で食べるホットドッグは美味しさが増す!(c) Kasumi Abe
ホットドッグとフレンチフライ(14.25ドル、約1950円)。球場ということで値段が高めだが、この雰囲気の中で食べるホットドッグは美味しさが増す!(c) Kasumi Abe

(Text and most photos by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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