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服装で搭乗拒否のDJ SODA。日本では知られていない、米飛行機で「絶対にしてはいけない」こと

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
アメリカン航空(イメージ写真)。(写真:イメージマート)

何が起こった?

DJ SODAという韓国人女性DJが、ニューヨーク発ロサンゼルス行きアメリカン航空機で、履いていたボトムスが原因で降機させられ嫌がらせを受けたと告白し、米メディアでも話題になっている。

DJ SODA氏によると25日、ビジネスクラスでウェルカムドリンクを飲みながら出発を待っていたところ、突然現れたスタッフに、荷物をまとめて飛行機を降りるように求められたという。

理由は、DJ SODA氏の履いていたスウェットパンツにプリントされていたFワード(F**K YOU)が、搭乗には「不適切」で「攻撃的」と受けとめられたため。

同氏のSNSによると、何ヵ月にもわたる北米ツアー中も同じスウェットパンツを履いて移動し、問題になったことは一度もなく、同機に搭乗した際も、始めはまったく問題視されていなかったという。

同氏が結局スウェットパンツを脱いだところ、スタッフに「もっと早く脱げただろうに」と皮肉を言われたという。

最終的にはスウェットパンツを裏返しで履き、1時間遅れで再び搭乗できたとか(飛行機の出発も1時間遅延)。同氏はお怒りで、同社に対して「不当な扱い、ハラスメント(嫌がらせ)を受けた」と批判し、ボイコット宣言をした。

筆者の経験から思うこと

まずFワードについて。アメリカでは言葉の爆弾のような破壊力があり、子どもに悪影響を与えかねないため、メディアや公の場で厳しくセンサーシップがかかり、テレビでは「ピー音」が必ず入る。テレビでは「バカ」などの言葉が21世紀の今でもたまに聞こえてくる日本にいるとあまりピンとこないかもしれないが、アメリカでは言葉の暴力であるFワードは、厳しく規制されている。

DJ SODA氏が同社とここまでこじれた理由について。筆者が思ったのは、同氏が航空会社の指示に対して抵抗し、反抗的な態度を見せたからではないだろうか。初めから素直に応じていれば、相手の態度は硬直化せず、事態の収束に1時間もかからなかっただろうし、嫌味を言われることもなかったのではと推測する。(あくまでも憶測の域だが)

また動画を見る限り、男性マネージャー(真ん中)はアメリカ英語を話しているが、このようなアメリカの慣習やルールに配慮していなかったのも不思議だ。

一言断っておくが、米系の航空会社が乗客に対していつも高圧的かというのは、必ずしもそうとは言えない。パイロットによっては到着後にわざわざコックピットから出てきて乗客を笑顔で見送ってくれたりもするし、ジョークを交えた個性的な機内アナウンスをして乗客をリラックスさせる客室乗務員がいたりするなど、マニュアル通りに丁寧過ぎる日本の航空会社と比べても、柔軟でフレンドリーな側面もある。

ただし「安全運行のための機内ルールの徹底」ともなれば、彼らは時に強気&ドライな態度を見せることもある。日本のように「お客様は神様です」とは決して見ない。

参照

オーサーコメント

米系機内でやってはいけない3つのこと

(アルコールを飲みすぎない、など周知されていることは割愛)

人を不快にさせる見た目やメッセージ性の高い服装

DJ SODA氏のスウェットパンツ(彼女のスポンサー)のように、いくらデザインの一部だからと言っても人を不快にさせるメッセージが服装(Tシャツやキャップなど)に含まれていると、アメリカでは「Offensive(攻撃的、侮辱的、不快)」と捉えられることがある。あくまでも「それを見た客室乗務員がどう受け取るか」によるので、搭乗拒否やトラブルを避けるためにも、飛行機では無難な格好がベストだ。

また、セクシー過ぎる服装も「攻撃的、不快」と捉えられ、時に搭乗拒否の対象となるので、注意が必要。

英語で書かれたTシャツやキャップなどに関しては、日本人は注意が必要だ。なぜなら、英語で書かれたメッセージの意味を完璧に理解して身につけている日本人は、そう多くはないから。

事例1.

2019年には、アメリカで「Rope. Tree. Journalist. Some assembly required」とプリントされたTシャツを着た乗客が物議を醸した。

意味は「ロープ. 木. ジャーナリスト. (そのような)取り付けが必要」、つまりジャーナリストをロープにかけて木に吊るし上げるリンチをイメージさせるメッセージだ。この男性は搭乗拒否の対象にはならなかったが、メディアで取り上げられ議論の対象となった。

政治色の強い服装

政治的なメッセージが含まれた服装と言えば、アメリカでは飛行機のみならず、学校や職場などでも度々問題になっている。このようなメッセージも「攻撃的、不快」と捉えられるので、避けたほうが無難。

事例2.

男性の乗客は、着けていたマスクにある「Let's Go, Brandon(がんばれブランドン)」が「不快なメッセージ」と判断され、マスクを変えるように客室乗務員に指示されている。「こんなの、もはやアメリカではありません」と男性。

客室乗務員に反抗的な態度をとる

機内ではとにかく、安全第一を優先させる客室乗務員の指示に素直に従うことが乗客には求められている(上記のマスクの男性も「ただ理由を聞いているだけ」と、納得はしていないがあくまで低姿勢)。いくら納得できないからと反抗し硬直化した態度を見せると、アメリカでは空港警察がやって来て、力ずくでキックアウトされたりすることもある。

事例3.

2017年ユナイテッド航空で、オーバーブッキングで降機を求められたアジア系の医師、デービッド・ダオさんが、頑なに「降りない」と拒否したため、警官に無残に(まるで動物のように)引きずり降ろされる騒動が起こった。「人間への扱いではない」とし、警察と航空会社に対して批判が殺到した。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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