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人気ドラマ続編セックス・アンド・ザ・シティ新章が配信!若年層の共感も呼ぶだろうと思う理由

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
'And Just Like That...' 公開前日、8日のパーティー。(写真:REX/アフロ)

ニューヨークを舞台に4人の女性とさまざまな恋愛模様を描き、90年代後半から2000年代前半にかけて一世を風靡したドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』(Sex and the City、以下SATC)。その続編である『アンド・ジャスト・ライク・ザット(And Just Like That…)』(HBO MAX)が9日、アメリカで配信開始した。

当地在住の筆者も心待ちにしていたこの続編。観た感想は、初回から笑いあり驚きの展開ありで、非常に面白かった。本稿では極力ネタバレにならない程度に紹介していきたい。

(注:まっさらな状態でドラマを観たい人は、ここから下の内容を読まないことをお勧めする)

まず、SATCの初回オンエアから約20年以上が経ち、主役(ロンドンに移住したサマンサ以外)の女性3人は年齢を重ね、皆50代半ばになっていた。当然、シワや白髪が自然に出てくるお年頃だ。しかしそれらが気にならないほど、彼女たちは相変わらず人生をそれぞれ謳歌し、輝いている。

SATCを今観ると、ケータイの形やタバコを吸う姿に時代を感じるように、2021年版の今作にも当然、現代的な要素が鏤められている。

まずパンデミックで人々がハグをしなくなったことや、エレベーターのボタンを押すために手袋を着用したりしていることなど、きちんとコロナ禍による「ニューノーマル」が描写されている。

ビッグが「新しい本のネタ?」と質問することから、主役のキャリーは相変わらず書く仕事を続けているようだ。スマホには「VOTED」(投票してきた)のシールが貼られ、コンピュータはMac。さらに、インスタグラムで発信をしたりポッドキャストに出演したりするなど、Z世代やミレニアル世代に負けず劣らずの精力的な活動が見られる。

ほかに人種やジェンダー問題、LGBTQ関連はより多様に描かれており、トイレはもちろんオールジェンダートイレ(みんなのトイレ)がデフォルトだ。当地では(特に黒人の)髪型についての言及は御法度など、近年人々に意識が広がりつつある要素も含まれる。

9月に亡くなったスタンフォード役のウィリー・ガーソンの姿も。
9月に亡くなったスタンフォード役のウィリー・ガーソンの姿も。写真:Splash/アフロ

そして何より、ドラマ全体を通して、ミドルエイジ(中年)がずば抜けておしゃれに描かれている。

主人公のキャリーがこの年でマノロブラニクのハイヒールをエレガントに履きこなすなど、ファッションセンス然り、自宅のインテリアセンス然りだ。きっと若年層が見ても、ファッションやインテリア、ひいては主役の女性らの生き方について、「年齢を重ねても彼女たちのように人生を楽しみたい」「生き方のお手本にしたい」という気持ちになること請け合いだ。

また、エピソード2までに「Life is too short」という言葉が2、3度出てくる。「人生は短い、よって今を楽しもう」という意味で、アメリカ人がよく使う言葉だ。続編がスタートしたばかりの現段階で、全体の構成やテーマを語るのは時期尚早だが、ミドルエイジの人々なら誰もが思い悩むこと、孤独感や今後の人生について、また自分の存在意義について、人々に問いかける作品なのかもしれない。

ちなみに、続編の冒頭で出てくるレストランは、ホイットニー美術館の1階にあるホイットニーカフェだ。

(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

以前は映画「素晴らしきかな、人生」でも使われた、ロケ地の常連のアンタイトルドゥという店名で、ハンバーガーが美味しく、筆者のお気に入りでもあった。そんな実在する素敵なスポットが所々に登場するのも、ニューヨーク好きにはたまらない。

日本でもこの冬、U-NEXTにて独占配信される予定ということだ。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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