Clubhouseの流行は日本だけ? 本国アメリカでの意外な認知度と「日本と違う」使われ方

joinclubhouse.comのスクリーンショット。筆者が作成。

アメリカ人の意外な反応

日本で話題沸騰のアメリカ発の新SNS、クラブハウス(Clubhouse)。

昨年パンデミックの到来と同時期に誕生し、アプリの登録者は5月の時点で1500人、12月の時点で60万人だったのが、ここにきて急増中だという。データ分析会社Sensor Towerによると、今月2日の時点での登録者は約360万件に増え、過去6日間で110万件がインストールされた。この2週間ほどの日本でのブレイクの影響で、数字も日々更新中だ。

驚くかもしれないが、アメリカ在住の筆者がこのアプリについて初めて聞いたのは、1月26日のことだった。ヤフーニュースに掲載されたFUNQの記事を読んで、こんなアプリがあるのだと知った。

最近になって、知らないのは筆者だけかと心配になり、フェイスブックをチェックするもアメリカの友人でクラブハウスの話題を上げている人は1人もいない。周りの友人にも聞いてみたが「What is Clubhouse?」という答えしか返ってこない。念のためニューヨークでソフトウェア開発の運営をしているIT系の知人にも確認したが、やはりつい最近まで聞いたことはなかったという。

アメリカのIT業界は、西はサンフランシスコ(シリコンバレー)、東はニューヨーク(シリコンアレー)と言われており、シリコンバレーだけで話題になるケースも意外とあるので、西海岸の知人にも確認したが答えは皆、同じだった。(ヒアリングしたのは20〜60代)

西海岸が拠点の教育系ユーチューバー、Hapa 英会話でも、30代の自身の周りでも20代の家族の間でも、これまで聞いたことがなかった人が圧倒的ということだ。

しかし筆者は今日になって

やっと1人、知っている人を見つけることができた! 

ニューヨーク在住の知人はオンライン上で週2度、外国人対象にある会合を開いている。ダメ元で聞いてみたところ「先週、トルコ人がその話をしていたわ。面白いアプリだからおすすめって話題にしていたわよ」と教えてくれた。利用しているのは、当地在住のトルコ人のようだ。ということは、おそらくトルコの友人にも話題が伝わっていることだろう。

米メディアではいつ頃から話題に?

アメリカの主要メディアを調べてみたところ、ニューヨークタイムズの昨年12月23日付の記事を見つけた。このような趣旨だった。

YouTuber、Viners、Dubsmashers、TikTokersそしてLinkedInなどまで、アプリ上での人気ユーザーがスターダムにのし上がった。次はシリコンバレー界隈のテック系や投資家に使われてきた音声アプリ、クラブハウスの番だ。

1月30日付のワシントンポストでも、クラブハウス関連の記事が1つだけある。

ラッパーのミーク・ミルがほかのラッパーを軽蔑するトークをしてルーム内が荒れたことから、クラブハウスに注目が集まった。失言などのモラル違反にどう対処していくのか、また一部のユーザーがお金を搾取し始めたなど、いくつか問題がある。

これらの記事が当時、一体どのくらいの人に読まれたのかは不明だ。通常、話題性の高い記事には何百ものコメントがつくが、ワシントンポストの記事へのコメントは今のところゼロだ。

次に、アメリカの大衆メディアの扱いはどうだろうか?

そのほかのメディアがクラブハウスについて報じ始めたのは、2月2日の週になってからだ。大衆紙ニューヨークポスト、ウェブメディアのビジネスインサイダーなどが「クラブハウスの流行の兆し」について報じ始めた。

2月4日付のニューヨークポストは「What is Clubhouse? Everything to know about the invite-only app」(Clubhouseって何? 招待専用アプリについて知っておくべきこと)という記事を出した。クラブハウスが一般的に知られていない前提での記事なので、やはりこのアプリの知名度が、先週の時点でも一般的にそれほど高いものではなかったということを表しているだろう。

では先週、なぜ米メディアがいっせいに報じ始めたのかというと、著名人の登壇が関係する。1月31日にイーロン・マスク氏とヴラッド・テネフ氏(株取引RobinhoodのCEO)が、2月4日にマーク・ザッカーバーグ氏がクラブハウスで定期開催されている「ザ・グッドタイムショー」(The Good Time Show)に現れたのだ。

FBのザッカーバーグ氏も4日、クラブハウスに出現し話題に。「インスタグラムがスナップチャットの機能を真似たように、フェイスブックにクラブハウスの何らかの機能が今後つくか?」と米ビジネスインサイダー。
FBのザッカーバーグ氏も4日、クラブハウスに出現し話題に。「インスタグラムがスナップチャットの機能を真似たように、フェイスブックにクラブハウスの何らかの機能が今後つくか?」と米ビジネスインサイダー。写真:ロイター/アフロ

ツイッターやユーチューブのように多くの政治家にはまだ支持されていないが、一部のセレブ(俳優のケヴィン・ハートやラッパーのドレイクなど)がパイロットプログラムとして選ばれ、ルームを作っているようだ。アプリのアイコンや黒人用絵文字とも関連するのか、ニューヨークポストには「黒人のクリエイターやセレブが積極的に参加している」とある。

日本とアメリカでの使われ方の違い

筆者がクラブハウスを初めて聞いた時、友人同士で雑談をしたり聞いたりするアプリだと思っていたので、アメリカでは流行らないだろうと見ていた。しかし知れば知るほど、アメリカではベンチャーキャピタリストの討論、有名人のトークショー、DJイベント、ネットワーキング、スピードデート、演劇などとさまざまな用途で使われており、中でもシリコンバレーのテック系や起業色が強く、その界隈に興味がある人に利用されているようだ。

コロナ禍になってZoom上では、起業家や著名人を招いたバーチャル講演会やビジネス系フォーラムが頻繁に開かれるようになったが、アメリカでのクラブハウス(特に初期、シリコンバレーで人気が出たころ)の使われ方は、それにとても似ている。

メンター的な成功者がトークをし、聴衆(Z世代、ミレニアル世代)が話を聞く、というのがメインの使われ方だ。主催者に質問の場合に挙手しアンミュートとなるところや、モデレーター、タウンホール(Q&Aタイム)、ノミネートなどの「フォーラム(ビジネス)用語」が使われていることからも、Zoomで開かれるウェビナーの音声オンリー版や、ラジオの機能とLinkedInのコンセプトが合体したネットワーキング系のSNSといったところか。

ニューヨークタイムズの記事では、新しいアプリの多くがZ世代やミレニアル世代を意識したものであるのに対し、クラブハウスのパイロットプログラムとして初期に選ばれた登壇者は40、50代の成功者が多い。

一方日本では、起業家や芸能人によるルームも多いが、一般人によるルームも今のところ多いようだ。またフォロワーを増やしたい人がフォローバックし合うための「無言の部屋」もあるらしい...(!)。

どの国も、現在トークをする人への報酬システムはないが、今後は国ごとに使われ方が異なり、独自路線で進化していくかもしれない。

まだまだ謎の多いクラブハウス

クラブハウスの運営元はアルファ・エクスプロレーション(Alpha Exploration Co.)で、CEOのポール・デイビソン(Paul Davison)氏とロハン・セス(Rohan Seth)氏が2020年2月、シリコンバレーで共同創業した。

現時点でツイッターのフォロワーは19万以上だが、ウェブサイトはほぼ空の状態。ダウンロードはアイフォンのみ、言語は英語のみ。スタッフは現在たったの10人ほどだという。

シリコンバレーという限られた地域で、しかもIT系の人々の間で話題になったというストーリーは、ハーバード大学の生徒間で使われていた初期のフェイスブックと似ている。しかしクラブハウスがフェイスブックと違うのは、アメリカの大衆に認知される前に、アジアに上陸し人気が出たということ。異例のグローバリゼーションが興味深い。

2月3日付のロイターは、1日の時点で無関係のClubhouse Media Groupの株が117%アップしたことを伝えている。中国ではAlibaba系のIdle Fishで招待枠が販売され、ユーザーは増えているようだ。中国のテック企業Agoraがクラブハウスのテクノロジーパートナーである可能性も報じられており、そのシェアが30%急上昇したという。「日本では投資家、テック系、メディアがクラブハウス界隈で盛り上がっている」とも書かれている。

いずれは廃止されると言われているが、試験的に導入されている2名のみの招待制というクローズドな特性が、アメリカの大衆まで認知されていない理由の1つだろう。

日本ではすでに「クラブハウス疲れ」「退会」などの声も聞こえてくる。ちなみに退会には、英語のメールを運営元に送る必要があるなど、退会しにくいシステムになっているようだ。また、音声データが残らない中で、ルーム内での嫌がらせやヘイトスピーチにどう対処していくのかといったことや、将来的にトーク配信者は報酬制になるのか、課金制度やサブスクリプション制になっていくのか?...

誕生からたったの1年、未知数の新アプリには課題や謎が多い。今後世界中でどのように認知、利用されていくのか注目していきたい。

  • Updated: その後中国で利用が禁止された。中国での活路が閉ざされた今、クラブハウスにとって日本での動向がアジア市場で成功できるか否かの鍵となった。

(Text by Kasumi Abe)  無断転載禁止