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至近距離から7発!子連れ黒人男性に警官発砲、一命取り留めるも半身不随に ── 終わらないBLM

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
警察に背後(至近距離)から4発を被弾し倒れたジェイコブ・ブレークさん。(提供:Incident Response/ロイター/アフロ)

BLM(ブラック・ライヴズ・マター)運動が終わっていないアメリカでは、人々の神経を逆なでするような黒人男性に対するショッキングな事件が再び起きた。

中西部ウィスコンシン州ケノーシャ市で8月23日午後5時すぎ、警官がジェイコブ・ブレーク(Jacob Blake)さんの背後、しかも至近距離からブレークさんに向け7発を撃った。

WGNニュースに掲載された事件当時の映像は、家庭内暴力の通報で出動した警察が、道路上でブレークさんに静止を求めるところから始まっている。ブレークさんは警察の命令に耳を貸さない様子で自分のSUV車に向かって歩き始めたところ、警官はブレークさんに銃口を向けた。それでもブレークさんが無視して運転席に乗り込もうとしたため、警官2人のうち1人がブレークさんのシャツを後ろから引っ張り、突然発砲し7発も連射した。

ブレークさんは常に警察には背を向けており、攻撃している様子はない。なぜ警官とブレークさんの話がもつれたかについてはまだ明かされていないが、ブレークさんはただ喧嘩の仲裁に入っただけという証言もある。また警察の発表では、ブレークさんがナイフを持っていたとしているが、目撃者の中でナイフを見た人はいなかった。同州のイバース知事も、引き続き調査中だとしながら、ブレークさんがナイフやほかの武器を所持していた証拠は現時点でないと述べている。

(Updated: その後の報道で、ブレークさんの車の中からナイフが見つかったことが明らかになったが、警察がそれを知っていたか否かは不明。記事

7発のうち背中に4発を被弾し重傷を負ったブレークさんは同日、銃弾の摘出手術を受け集中治療室に入っているが、命に別状はないという。これについては「奇跡だ」という声が多く挙がっている。ただしブレークさんの父親によると、ブレークさんは腰から下が麻痺し、半身不随の状態だという。担当医師は半身不随が永久的なものかどうかはまだ分からないとした。

事件の日はブレークさんの息子の8歳の誕生日で、朝から忙しく準備をしていたという。3人の子どもはSUV車の後部座席で父親を待っており、発砲は子どもたちの前で行われた。ブレークさんの父親は「孫の前でこのようなことが起こり、あの銃撃のどこに正当性があるのか?」と警察を強く非難した。

この一部始終の映像は、5月末に警官に殺されたジョージ・フロイドさんのときと同様に、事件後すぐにソーシャルメディアで拡散された。大規模な抗議活動が起き、略奪や無関係のトラックや店舗で火災が発生するなど暴徒化の様相だ。

同地では翌24日午後8時より夜間外出禁止令が出されているが、多くの人々がそれを無視して外出して抗議が巨大化。混乱に備えるため州兵125人が招集された。

全米各地では、警察によりジョージ・フロイドさん、レイシャード・ブルックスさん、また3月に殺されたブレオナ・テイラーさんなど、数え切れないほど多くの無実の黒人が殺害される事件が頻繁に起き、今も警察や市長への抗議デモが続いている。多くは平和的に行われていたが、火に油を注ぐような今回の事件でBLMデモが再燃した。背後の至近距離から、しかも子どもの前での残虐な殺人未遂事件は許されるものではない。黒人をターゲットとした「国内テロ」は終わりがまったく見えない。

  • 当初8発との報道でしたが「7発」に修正しました。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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