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NY外出制限中もバーにビーチに人が殺到 警官の暴力的な取り締まりに市民の不満さらに

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
暴力的な警察への抗議活動が各所で起こっている。(c) Kasumi Abe

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の全米最大の感染拡大スポットとなっているニューヨーク州では5月15日、一部地域で外出制限が緩和した。

州では経済活動再開のために7つの基準を設けており、10地域のうち5地域(18日現在で6地域)がすべての基準を満たしたとして、建築業や製造業など生活に必要不可欠で感染リスクの低いもの(フェーズ1)から徐々に再開が始まっている。

ただしニューヨーク市はそのうち3つの基準しか満たしておらず、まだ再開の見通しは立っていない。

3月22日にロックダウン(外出制限)してから、もうすぐ2ヵ月となる。この間、飲食店では持ち帰りやデリバリーに限って認められてきた。ただし感染拡大がもっとも深刻だった4月は、閉まっている店も多かった。

流行のピークが過ぎ、5月に入って徐々に営業を再開する飲食店も増えてきた。筆者がたまに利用するスターバックスも、先週から持ち帰りのみで営業を再開している。

少し前に中国のニュース映像で見たような光景。注文はすべてアプリで行い店頭で受け取る。(c) Kasumi Abe
少し前に中国のニュース映像で見たような光景。注文はすべてアプリで行い店頭で受け取る。(c) Kasumi Abe
市内でも大型建設現場は稼働し始め、街に「音」が戻り始めている。(c) Kasumi Abe
市内でも大型建設現場は稼働し始め、街に「音」が戻り始めている。(c) Kasumi Abe

気温が20度前後と気候の良い季節になり、芝生の上に座ったり寝転んだりして日光浴を楽しむニューヨーカー。公園では人々がソーシャルディスタンシング(社会的距離)を守るための輪が描かれるなど、さまざまな工夫も見られる。

輪が描かれておらず「密」だった1週間前

輪が描かれ、他人と一定の距離が保たれた先週末

週末、バーにビーチに人々が殺到

しかし、このように少しずつ変化が始まったからだろうか。この2ヵ月間自由を奪われた人々の気が、ここにきて緩み始めている。

初夏のような天気に恵まれた16日、再開したマンハッタンのバーに多くの人々が殺到し問題になった。持ち帰りのアルコール類を求めてやって来た人々が帰宅せず、バーの前で飲みながらたむろしている様子が、地元メディアやソーシャルメディア(下記)に映し出された。

多くはソーシャルディスタンシングを守っておらず、中にはマスクをしていない人、店の中で雑談している人も見られた。(ちなみにニューヨークでは、路上飲酒は法律で禁止されている)

また市内のビーチにも多くの人が殺到した。

前述の通り市内は経済活動再開まで程遠い状態だが、人々の中には「まだ外出制限下」というのを忘れ始めた人がいるようで、市ではこれらの現象に危機感を持ち警戒を強めている。

さらに17日、デブラシオ市長は今月末に迫っている国民の祝日、メモリアルデーウィークエンドのビーチを閉鎖すると発表した。

メモリアルデーは戦没者の追悼記念日で、その週末は例年ビーチや公園などでバーベキューやフリスビー、ビーチバレーなどをしながら家族や友人と楽しむ「夏の初日」でもある。今年はどうなるかと思っていたら、15日にクオモ知事が、周辺4州で足並みをそろえ、混み具合50%に抑えるという条件で、メモリアルデーの週末よりビーチを開放するという嬉しい発表があったばかりだったのだ。

しかし状況によって、この方針はいつでも変更すると釘を刺していた。そして2日も経たぬ間に一転し、閉鎖が決まった。

デブラシオ市長は「多くの人はステイホームしているので、あくまでも一部の人々の行いだ。彼らはここがエピセンター(震源地)であることを忘れている。どうかバーで買ったドリンクは家に持ち帰って欲しい。ビーチは散歩に限り許可し、わざわざ訪れての遊泳、バーベキュー、スポーツは一切禁ずる」と記者会見でコメントした。

この祝日を楽しみにしていた市民の大きなため息が聞こえてきそうだ。

カオス状態:人々の不満は募り、警官の振る舞いも激化

ここにきて、警官(NYPD、NY市警察)による取り締まりも激化している。「マスクをきちんと着けていない」「ソーシャルディスタンシングを守っていない」などの理由だが、まさにカオス状態だ。

【閲覧注意:動画にはNYPDによる暴力的なシーンが含まれています】

レストランでソーシャルディスタンシング違反の取り締まり。警官が泥酔者を投げ飛ばしている。

マスクをあごにかけている人に対しての取り締まり。子の前での過剰な取り締まりに批判が集中。市ではこの後、マスク関連の取り締まりを止めると発表した。

ソーシャルディスタンシング違反?に対する、過剰な暴力による取り締まり。

これらは目を覆いたくなる光景だが、今のニューヨークの現実の一部である。

こんな中、さらに気になる事実もある。

現在マスクやソーシャルディスタンシングを理由にした逮捕者が増えているが、対象の多くは黒人であると地元各メディアは報じている。

警官が路上で疑わしい人物を呼び止め、身元確認や身体検査をすることはストップ・アンド・フリスク(Stop-and-Frisk)と呼ばれるものだが、以前より黒人やヒスパニック系が不当に対象となることが多く問題視されてきた。パンデミックとなり、黒人への不適切なストップ・アンド・フリスクや暴力的な取り締まりが増加しているのだ。

15日も「これ以上、黒人を不当に扱うな」と、NYPDやデブラシオ市長への抗議活動が行われた。

Black Lives Matter Greater NYによる抗議活動。市内では、エリック・ガーナー氏の窒息死事件などが記憶に新しい。(c) Kasumi Abe
Black Lives Matter Greater NYによる抗議活動。市内では、エリック・ガーナー氏の窒息死事件などが記憶に新しい。(c) Kasumi Abe

このように人々のストレスや不満はさらに鬱積し、問題は山積みだ。

冬が長いニューヨークでは、5月末のメモリアルデーの週末から9月頭のレイバーデーまでの実質3ヵ月間は、人々がもっとも屋外活動を楽しむ時期なのだ。今後この街はパンデミックや諸問題とどう向き合っていくのだろうか。

(Text and some photos by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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