Yahoo!ニュース

感染者21人グランドプリンセス下船へ ダイヤモンドプリンセスの「過ち」生かし

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
オークランド港に向かうグランド・プリンセス号。(3月9日に撮影)(写真:ロイター/アフロ)

乗客乗員3483人を乗せたクルーズ船「グランド・プリンセス」号(Grand Princess)が、現地時間の今日3月9日午後、オークランド港に入港した。

WATCH LIVE: Grand Princess cruise ship to dock in Oakland amid coronavirus concerns(入港前後の様子)

先週、2月にグランド・プリンセスに乗った71歳の男性が新型コロナウイルスの感染により死亡。また船内で行われたウイルス検査では45人のうち21人に感染が認められたため、先週からサンフランシスコ沖合に停泊しながら上陸地をめぐってホワイトハウスや地元当局の関係者らの間で話し合いが進められていた。

カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、オークランドを選んだ理由として「オークランド空港にも近いため、チャーター便を利用するにも便利な場所」とした。

オークランド港周辺の地図

先週のウイルス検査は乗客乗員の一部にしか実施されていないため、感染者はもっと多いのではないかと言われている。

オークランド港では今後、すべての乗客が下船し、同州出身の乗客は港から車で1時間ほど北部のトラヴィス空軍基地へ、ほかの州の住民はテキサス州のサンアントニオ・ラックランド合同基地またはジョージア州のドビンズ空軍基地で、14日間隔離され検疫が行われるという。

外国人については空港からチャーター機などで帰国となるが、乗船している日本人3人についての今後は明かされていない。

また乗員については、そのほとんどが国外(多くが発展途上国)出身のため、検疫の場所についてはまだ決められていない。乗船したまま3日以内に港を離れるという情報もある。

3月8日のニューヨークタイムズ紙は、「Failures on the Diamond Princess Shadow Another Cruise Ship Outbreak」(ダイヤモンド・プリンセス号での失敗は別のクルーズ船での集団感染を影で覆う)というタイトルで、ダイヤモンド・プリンセス号がなぜ「失敗」したのか、人々に問いかけた。

なぜダイヤモンド・プリンセスは失敗したのか?

同紙が分析した失敗要因ポイント

(ダイヤモンド・プリセンスの失敗)

  • ダイヤモンド・プリンセスは、香港で下船した80歳の乗客(先日死亡)の陽性判定を受け「船内の消毒を行った方が良い」と香港の保健当局から警告メールを受け取ったにもかかわらず、船内の清掃だけをし消毒を行わなかった。
  • 感染者確認後、感染者は治療のため下船したため、ダイヤモンド・プリンセス側は楽観視し、船内のリスクは最小限であると過小評価した。
  • 2月1日に感染者確認後、2月3日の船長による船内アナウンスまで「48時間」も経過し、その間ウイルスが船内に広がった。(この48時間、乗客は船内を自由に行き交い、ビュッフェなども通常通り用意され、夜な夜なパーティーやオペラ公演が開かれた)
  • 乗客を部屋に隔離後、乗員は各部屋の配膳において、その都度ドアを開けて食事のトレイを直接手渡していた。(本来なら、食事はドアの外に置いておくのが良いとされている)
  • 感染者確認後、濃厚接触者を追跡し隔離すべきだが、それらが行われなかった。

(ダイヤモンド・プリンセスのオーナー会社、カーニバルコーポレーション&plcのグラント・ターリング医療責任者らは「船内の感染について、ソーシャルメディアで話題になる翌日まで知らされなかった」「乗員が同じ手袋を使い回したり、乗客に配膳するときに対面で行っていたことを知らなかった」など、言い訳ともとれる発言をしている)

(日本当局の失敗)

  • 日本当局の職員がクルーズ船に乗り込んだ際、日本側は、法的効力はないものの適切なプロトコルに従った医療ガイドラインによる奨励(感染者と濃厚接触をした疑いのある者を下船させ、船外(陸地)で検疫)を無視し、乗客乗員を船内に隔離したまま、船内でウイルス検査を行った。

(Text by Kasumi Abe)  無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

安部かすみの最近の記事