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NYで募る警察憎悪犯罪 署内で パトカーで 警官に向けた連続発砲事件 混沌とする治安

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
NYPD警官のイメージ写真。(写真:ロイター/アフロ)

ニューヨーク市で2月8日夜から翌9日朝にかけて、警察をターゲットにした2件の銃撃事件が発生した。

事件が発生したのは、マンハッタンの中心地から北に車や電車で30分ほどの、ブロンクス区ハンツポイント地区のNYPD(ニューヨーク市警察署)第41管区内。

まず1件目は8日午後8時30分ごろ、同地区の路上で起こった。何者かがパトロール中のパトカーに向け、突然数発を発砲し逃げた。凶弾の1発は運転席側にいた警官の顎付近に命中し警官は病院に運ばれたが、命に別状はないとされている。

同地区は最近、麻薬の取引や銃撃などの凶悪事件が起こっており、パトロールが強化されていた。

パトカーに向け何者かが発砲したときの監視カメラの様子

そして、それから約11時間後の9日午前8時前、パトカーへの銃撃事件が起こった場所から徒歩10分ほどの場所にある第41管区警察署内で、もう1件の発砲事件が発生した。男は警察署の入り口すぐの受付カウンター越しに警官に向かって数発を発砲し、そのうちの1発が警官の左上腕部に命中した。この警官も病院に運ばれたが、命に別状はないとされている。

警察署内で男が発砲してから捕らえられるまでの監視カメラの様子

容疑者のロバート・ウイリアムス(Robert Williams)は、自らの弾丸を使い果たしたことがわかると拳銃を放り投げ自ら倒れて降伏し、現行犯逮捕された。

警察署内では男が発砲した9ミリ拳銃が見つかっており、前日のパトカーへの発砲事件との関連が捜査されているが、同一人物による事件という見方が濃厚だ。

ウイリアムス容疑者は2002年にも、銃を使用した殺人未遂で逮捕、有罪判決を受けていたが、17年に仮釈放されていた。警察では事件の動機について取り調べが進められているが、同時に容疑者の交際相手で、NYPDで働いているとされる女性を重要参考人として事情聴取している。

市内で募る警察への憎悪犯罪

ビル・デブラシオ市長は、9日声明を発表し「警官への襲撃は我々すべての市民、民主主義を思想とする社会への襲撃である」と警察への憎悪犯罪を強く非難した。

人種問題などに絡んだ市民への公正でない取り調べなどに対して不満を募らせる人々が「アンチ警察運動」として、警察と小競り合いになるケースは当地で少なくない。

つい最近も地下鉄の乗車券についてトラブルになったとされる人物による、警察への憎悪を表す落書きやイタズラが問題になったばかりだ。

また警察への憎悪犯罪といえば、2014年に起こった痛ましい警官殺人事件が記憶に新しい。市内ブルックリン区ベッドフォード・スタイバサント地区の路上で、パトカーに乗っていた2人の警官が突然至近距離で犯人に撃たれ殺された。この時の犯人は犯行後、自らを銃で撃ち自殺している。

今回の2つの事件の解明が待たれる。

(Text by Kasumi Abe)  無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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