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「まず撃て」米テキサス警察 自宅にいた無実の女性を窓越しに射殺(動画あり)

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
ボディカメラの様子。(出典:NBC Dallas-Fort Worth)

連日銃がらみの事件が後を絶たないアメリカ。無差別乱射事件、ギャング絡みの銃撃事件、警官による誤射など、内容はさまざまだ。

筆者の周りでは「今アメリカ国内は戦場と化している」「外国からのテロリストより、同胞人による国内テロの方が深刻」と嘆く声が聞こえてくる。

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10月12日土曜日、今度はアメリカ南部のテキサス州フォートワース市で、信じられない事件が起きた。

28歳のアタティアナ・ジェファーソン(Atatiana Jefferson)さんは、8歳の甥の面倒を見るために、フォートワース市の住宅街にある自宅で、甥とビデオゲームをしながら金曜の夜を過ごしていた。

以前撮影されたジェファーソンさん。元同僚からジェファーソンさんのいとことされる女性へのリプには「いつも静かで優しい人で大好きだった」とある。

周辺が寝静まった深夜、この家の前を通りかかった近所の女性が「普段とは違う異変」に気づいた。女性は叔父にそれを伝え、叔父に当たる近所の男性が、家の様子を見に行った。

「家の中で人が動いたりしているのは見えなかったが、敷地内に2台の乗用車が停車し、家じゅうの電気がついていた。そして、入り口の二重のドアが両方、午後10時ごろからずっと開いていた」と男性。「こんな深夜過ぎに、これまで見たことがない異変」を不審に思った男性は午前2時を過ぎて、ほんの親切心から緊急通報用ではない警察番号に電話し、隣人の安全確認の要請を出した。

(* 日本の119番にあたるアメリカの緊急通報用電話番号は911、緊急時以外は311)

通報を受けフォートワース市警察が駆けつけた、ジェファーソンさんの家。アメリカの郊外によくある、ごく普通の平家の一軒家。(出典:Google Map)
通報を受けフォートワース市警察が駆けつけた、ジェファーソンさんの家。アメリカの郊外によくある、ごく普通の平家の一軒家。(出典:Google Map)

15分ほどすると拳銃の音が轟いたため、通報した男性が再び様子を見に行くと、その家の敷地内に5〜10人ほどの警官がいたという。

警察の発表では、深夜2時25分ごろ通報を受けたフォートワース市警察は、その3〜4分以内に2班に分かれて現場に到着。警官は、家の周りを懐中電灯で照らしながら、中の様子を確認した。

そして、窓越しに人の影を感じた瞬間、家の中に銃口を向けた。事情聴取もせぬまま「手を挙げろ」と言いながら、間髪入れずに発砲した。

その弾は室内にいたジェファーソンさんに命中し、その場で死亡が確認された。

「警察が安全でないとすると、ほかにどこを頼る?」

ジェファーソンさんの姉妹は地元メディアに向け、「警官はどういう訓練を受けているのか?」と涙ながらに訴えた。また通報した男性も「警察に来てもらって安全でなければ、私たちは誰に頼ることができるでしょうか?」と問いかけた。

全米黒人ジャーナリスト協会「NABJ」のレポーターによると、家族側の弁護士のコメントとして、その後ジェファーソンさんの自宅で銃が見つかったが、警察による今回の発砲の理由にはなっていないということだ。

警察によるこの信じられない事件に、人々は怒りを抑えきれない。ツイッター上にはさまざまな議論が沸き起こっている。

  • 緊急通報ではないのに、警察はなぜドアをノックし安否を確認しなかったのか? 警察車両には大音量のスピーカーシステムも搭載されているから、そこから確認もできたはずなのに。
  • 「まず撃て、事情聴取は後」というような訓練は今すぐ止めるべき。誰もが簡単に警官になるべきではない。
  • テキサスで丸腰のアフリカ系アメリカ人が警察に窓越しに撃たれるのは、私が知る限りこれで2回目だ。
  • これは白人警官による黒人への国家認可のリンチだ。
  • 黒人にとって道端ではなく自宅の中でさえ充分な安全が確保できないとはどういうことか(黒人である自分に)誰か説明してくれ。そして次は何が起こるか?
  • 私が通報した男性だったとしても、同じことをしただろう。この男性が罪の意識を背負いながら今後生きていくことになるとすれば、それはとても気の毒だ。
  • 人は誰しも間違いを起こす。しかし警察が間違いを起こすとき、それは人々の死に繋がる。
  • 深夜にドアが開放されるのはただ事ではないので、警官も警戒していただろう。発砲した警官が窓越しに何を見たのか、この監視カメラからは確認できないので何とも...。
  • (殺された)女性は家の外で何が起こっているのか不安だっただろう。一体誰が敷地内を歩いているのか知る由もなかっただろうから。
  • テキサスで、というのが話題になっているが、テキサスだけのことではなく、これはアメリカ全体の問題。

フォートワース市警察の発表によると、「発砲したのは2018年4月より配属されている白人警官で、事件が調査中の間、謹慎中(* 下記追記)。情報の透明性のためにボディカメラが捉えた様子を一般公開する」とある。

【注意:暴力的なシーンが含まれています】

警察によって一般公開された、ボディカメラが捉えた事件の動画。この映像では、「(銃撃された)ベッドルームには凶器(銃)があった」とある。

この映像を観て、警官がいとも簡単に拳銃の引き金を引いているのにショックを受ける。まるで、ビデオゲームでもしているかのように。

October 14, 2019 Updated:

発砲した警官の名前などが発表された。名前はAaron Dean(35歳)。解雇前に自ら辞職し、14日殺人罪で起訴された。またジェファーソンさんは怪我をした母親の介護でしばらく実家に滞在中で、秋風を室内に入れるためにドアを開けていたとされる。記事

(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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