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就寝中のホームレス4人を殺害した若者は、国外出身の家なき移民ニートだった

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
5人のホームレスが襲撃されたマンハッタン・チャイナタウン。(写真:ロイター/アフロ)

マンハッタン区チャイナタウン地区で10月5日深夜、男が路上で寝ていたホームレスに金属パイプで次々と襲撃し、4人を殺害、1人に頭蓋骨骨折の重傷を負わせる事件が発生した。

事件を犯したのは、ランディ・ロドリゲス・サントス容疑者(24歳、Randy Rodriguez Santos)。

チャイナタウンは昼間は華僑や観光客らで大変な活気があるが、夜になると店が閉まり、路上生活者が四方八方から暗い小路に集まる。その中でも犯行現場となったのは、ニューヨークのスキッドロウ(貧困通り)と呼ばれるバワリー通りなど数ヵ所。午前2時前から早朝にかけて犯行が行われた。

被害にあったホームレスは各所で就寝中に突然頭部を強打され、中には83歳の高齢者も含まれていた。まだ動機はわかっていないが、被害者の人種や年齢がさまざまであることからそれらのヘイトクライムではないとの見方だ。

監視カメラが事件の様子を捉えていた。

【注意:暴力的なシーンが含まれています】

地元紙『デイリーニュース』によると、サントス容疑者の母親(55歳)の証言として、容疑者はドラッグ中毒の問題を抱え、母親や祖父に家庭内暴力を振るうなど、トラブルメーカーだったとされている。

容疑者が祖国のドミニカ共和国からニューヨークにやって来たのは4年前で、移住後に薬物を乱用するようになったようだ。過去2年の間に、少なくとも6回の犯罪で逮捕歴がある人物だった。

数々の問題行動から3年前に家を追い出され、自身も路上生活をしていたようだが、つい先週の月曜日も自宅に戻り、携帯電話や充電器、時計を盗むなどしていた。

16歳の弟の証言によると、容疑者はジャケットを取りに事件を起こした前夜も自宅に戻っており、母親の帰りをずっと待っていたが、弟が母親は会いたがっていないと話すと、出て行ったという。

母親は、「息子は祖父の鼻を骨折させたり、私がドミニカ共和国にいる間に、私の顔を切りつけるよう人を手配すると脅していた。それでも…」と続け「人の命を奪うようなことをするとは思わなかった」と、最後は母親として息子を信じたかったであろう心境を覗かせた。

Twitterなどの反応では「国に帰れ」など乱暴な言葉も飛び交っているが、この青年がメンタルイルネス(精神的な病気)を患い、刑務所ではそれが悪化する可能性があり、彼は「助け」を必要としていると擁護する声もある。

事件から粗暴な性格が窺い知れるが、容疑者のものとされるフェイスブックでは、自身のことを「静かな男」と紹介していた。移住後、新天地ニューヨークで事もあろうに、ドラッグの魔の手にかかり「無敵の人」になってしまったのか。

より良い人生を求めて海を渡って来ただろうに、ただ寝ているだけの罪のない移住先の社会的弱者を相手に、このような残虐な罪を犯す理由がどこにあろう。

(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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