仕事掛け持ちOKのアメリカ副業事情。消防士×レストランシェフの二足の草鞋はアリ?ナシ?

FDNYのイメージ写真。ビル火災の多いニューヨークでは過酷な職業の一つ。(写真:ロイター/アフロ)

2018年1月、厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」で、「モデル就業規則」から「副業禁止」の規定を削除したことで、副業解禁元年と呼ばれるようになった。

副業を解禁したソフトバンク、丸紅、日産自動車、リクルート、花王、富士通、LINE、サイバーエージェント、サイボウズなど伝統的大手企業からIT企業を中心に、副業が少しずつではあるが広まりつつあるようだ。

「労働者は勤務時間外において、本業以外の業務に従事することができる」は、アメリカではすでに周知のことで、明文化の必要性がないくらい、ある意味当たり前。

もちろん、当たり前と言っても必ず許可されるものではないし、副業の時間や余裕すらないほど忙しい職業も存在するので、アメリカのすべての会社や従業員に当てはまるものでもない。

しかし可否の判断はいたってクリア。就業前に雇用主と従業員が取り交わす雇用契約書に準じていれば、副業は問題ないとされている。

百花繚乱なNYのハイブリッド職

ニューヨークでは、さまざまな副業スタイルがある。私の元同僚は大の音楽好きで、IT企業でフルタイムのエンジニアをしながら、週末は近所のクラブでDJをする。「違う脳」を使うので楽しいそうだ。

行政機関で働く友人も、英文チェックの業務を厭わない。勤務時間外なら進んでやってくれる。

とある銀行員の知人は、夜間と週末にウーバー(uber)の運転手をしている。先日ウーバーだけで月5,000ドル(約56万円)の稼ぎがあったそうだ。

また私は3年前、スタートアップに籍を置きながら、休職中に猫カフェを起業した女性を取材したことがある。女性が籍を置く職場での撮影を打診した際、「副業は許されているけど、奨励されているわけではない」という理由で断られたことがあり、もっともだと納得した。ただし彼女は「起業のことをきちんと上司に報告し、猫カフェにも招待した」と話していた。

レストランで自慢の腕をふるう男、本業は消防士

ニューヨーク・マンハッタンのキップスベイ地区に、3月8日新装オープンするレストランのシェフがちょっとした話題になっている。

レストラン「Home Base Bistro」(元RAISE New York)の調理場に立つ、ジョン・シアプさん(46歳)。彼の本業はなんと消防士だ。

参照記事:

ジョンさんが意気込みを語る映像  am new york

ジョンさんがFDNY(ニューヨーク市消防局)に入隊したのは2003年のこと。以降事あるごとに、消防署内で同僚に自慢の腕をふるってきた。

料理をはじめたのは大学時代で、イタリア系の母親直伝のレシピを自分なりにアレンジ。レストランのメニューにはフランス、タイ、キューバなど、多国籍風の創作メニューが並ぶ。レシピ本を参考にしたり、ケータリングクラスを受講したりして「独学」でシェフになったそう。

実はこれまでもいくつかのレストランの調理場に立ってきたというジョンさんは、料理がテーマの人気リアリティショー『Chopped』にも出演歴がある、ちょっとした有名人だ。

「レストランを新装開店するという旧友から声がかかり、再び調理場に立つことを決めました。おいしいハンバーガーやサンドイッチをご用意し、皆さんのお越しをお待ちしています。ぜひ近所に愛される店にしていきたい」と抱負を語った。

FDNYの初任給は、ニューヨーク市の発表によると、3万9370ドル(約440万円相当)とされており、時間外や週末勤務による追加報酬は3,704ドル(約41万円)程度。勤続5年で10万ドル(約1,120万円相当)を稼ぐことも可能だというが、それらも時間外や週末勤務を含んでの数字。

どのくらいのオーバータイムなのかが明記されていないため何とも判断できないが、家族やプライベートの時間を犠牲にしてまでがむしゃらに働き続けるより、時間外に好きなことでお金を稼いだ方がよいと考える消防士もいるのだろう。

消防士×シェフ、エンジニア×DJ、銀行員×運転手...百花繚乱なニューヨークのハイブリッド職。日本ではおそらく「常識外」のかけもちと見られるのかもしれない。日本に住む皆さんはそのような同僚や知り合いがいたら、どう思うでしょうか?

(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止