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NYの高級レストラン2店が今年も強気の値上げ。最低賃金アップ(1,600円超)が要因か

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
(ペイレスイメージズ/アフロ)

日本からニューヨークを訪れた観光客が驚くことの一つとして、「物価の高さ」がよく挙げられる。

地価や家賃が上昇の一途をたどるニューヨークだが、観光客がもっとも身近に物価の高さを感じやすいのは滞在中の飲食費だろう。

東京とのわかり易い価格比較として、下記のようなファクトがある。地方から観光に来た人であれば、なおさらその物価高に面食らうはずだ。

参照:

平均的な2ベッドルームの家賃(月額)

東京22万4100円、ニューヨーク32万4400円 ーー 『Business Insider Japan』の記事

ニューヨークでのディナーは、平均48.56ドル(約5,300円相当)とされている。コストパフォーマンスが重要視されがちな日本で日ごろ食べるディナーと比較してみるといい。ドリンクなしで、チップや消費税なども含めると6,000円近くの出費となる。どういう印象を受けるだろうか?

『48.56ドル出して、ニューヨークではどんなものが食べられるか?』ーー 『Zagat』の記事

  • これらの料金にさらに15〜20%ほどのチップ、8.875%の消費税、注文数に応じたドリンクやデザート料金などが加算される。

高級レストランが強気の値上げを「今年も」断行

新年が明け、ニューヨークの2つの代表的な超高級レストランが、いずれも値上げを実施した。

一つは名シェフ、トーマス・ケラー(Thomas Keller)のフレンチ店、パー・セ (per se)と、もう一つはダニエル・フム(Daniel Humm)とウィル・グィダラ(Will Guidara)のニューアメリカンの店、イレブン・マディソン・パーク(Eleven Madison Park、以下E.M.P. )だ。

いずれもミシュランガイド三つ星の常連店で、食通の間では「ニューヨークで必ず行きたい店」として大変人気だ。特にE.M.P.の方は、世界のトップレストランを決める毎年恒例の「World’s 50 Best Restaurants」で、2017年の世界1に選ばれた実績もある。

値上げ後は、パー・セでの9コースディナーが、チップ、消費税、サプリメント(高級食材を選ぶことによる追加料金)、ドリンク代が含まれていない状態で、前年より15ドル高の355ドル(約3万8,000円相当)になった。

E.M.P.も、ワインペア・ディナーが前年より20ドル高の550ドル前後(約6万円相当)、テイスティング・ディナーが335ドル前後(約3万6,000円相当)に引き上げられたことで、フードライターなどからは「E.M.P.でディナーをすると2人で1,100ドル超えか」と、嘆息が漏れた。

実はこの2店、ちょうど1年前も同時期に値上げして話題になったばかりだった。それから1年しか経っていないにもかかわらず、再度の値上げを断行と、かなりの強気な姿勢を見せているのだ。

これらの毎年の値上がりは、市内の最低賃金の上昇が大きく関わっているのではないかというのが、専門家の見解だ。

ニューヨーク市では2018年度、最低賃金が2度も引き上げられている。従業員数が11名以上の企業において、昨年1月の時点で最低賃金が13ドル(約1,400円相当)に引き上げられていたが、同年12月31日にはさらに上をいく15ドル(約1,630円相当)にまで再び引き上げられたばかりだった。

(従業員数が10名以下の企業では最低賃金は13.50ドルだが、2019年末までに15ドルに引き上げられる予定)

高級店のみならず一般のレストランにおいても、毎年少しずつ値上がりしている印象だが、今後さらなる値上げが予想される。

市内の一般のレストラン経営者からは、「すでにメニュー価格を充分高くしているので、値上げはしたくない。しかし最低賃金が15ドルまで引き上げられると、今後何らかの対応を検討せざるを得ない」という声も挙がっている。

(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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