空き店舗の有効活用で県内初の4者協定 家賃滞納など悪質借り手防止効果も 埼玉・蕨
埼玉県蕨市は今秋、不動産開発リノベーション会社、金融機関、蕨商工会議所の4者間で「空き店舗等の有効活用等の促進に関する協定」を結び、商店街の活性化を目指している。空き家・店舗対策が得意な不動産会社を取り入れたのが特徴。市はこうした形態の空き店舗有効活用協定は県内で初めてとしている。相互で情報交換することで、家賃滞納などする悪質な借り手を事前に見極める効果も期待できそうだ。 ■低コストで有効活用 蕨市と11月14日に協定を結んだのは、不動産開発などを手掛けるジェクトワン(東京都渋谷区)、埼玉りそな銀行(さいたま市)、蕨商工会議所(蕨市)。 ジェクトワンは、リノベーション費用を所有者の代わりに負担し新たな入居者に一定期間転貸するサービス「アキサポ」を展開。同サービスは新規入居者がコストと手間をかけずに空き店舗を有効活用できるメリットがある。大河幹男社長は「蕨市は東京からのアクセスが良く人口密度が高いので、空き店舗を有効活用できる可能性の高い地域」と参加の理由を述べた。 埼玉りそな銀行は今年4月、社内に「空き家タスクフォース」というチームを立ち上げ、所有者と入居希望者のマッチングや空き店舗の有効活用啓発セミナー開催などのサポートを開始。福岡聡社長は「今協定はこのタスクフォースで扱う自治体との協定の第1号」とする。蕨商工会議所は空き店舗所有者の情報交換を3者と行う。 市は、自治体がからむことで所有者に安心感が生まれ、専門の不動産会社と地元に密着した銀行が携わることで、悪質な入居希望者がいた場合に、見極める力も高まるとしている。 ■買い物客の流れ変化 蕨商工会議所によると、市内の空き店舗数は令和6年2月末時点で約60店舗。JR埼京線が開業し同戸田駅などができた昭和60年ごろから市内の買い物客の流れが変わり、特にJR蕨駅の西口から約1キロ続く商店街に空き店舗が出てくるようになったという。 市は平成23年、「蕨市空き店舗有効活用事業補助金」を創設、令和5年には設備購入費の補助などを行う「魅力ある店舗づくり支援事業補助金」を創設した。ただ、空き店舗の有効活用について「民間企業は非常にスピード感がある」(商工観光課担当者)と早期進展を狙うために、今回のジェクトワンを含めた協定締結をした。