Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

コロナで中小企業の賃料負担に悲鳴の声 軽減を図れる「税の特例措置」まとめ

配信

  • この記事についてツイート
  • この記事についてシェア
税理士ドットコム

「戦後最大の危機」とも言われる新型コロナウイルスの感染拡大ですが、経済への影響は深刻さを増しています。ウイルスの問題は、日本だけで解決できるものではなく、仮に一旦日本で終息しても、海外との行き来を再開すれば、たちまちウイルスが侵入し、元の状態に戻ってしまうかもしれません。 そのため、新型コロナウイルスとの闘いは、ワクチンができるまでの年単位の長期戦が予想され、世界全体で終息しない限り、以前のような経済活動はできないものと考えられます。 このような状況の中、特に苦しいのが中小事業者の賃料負担です。自粛要請によって売上が激減していても固定費である賃料は支払い続けなければならないからです。本来であれば、国が十分な休業補償や賃料の一部負担などをすればよいのですが、家賃支援についてやっと議論がはじまったところで、すぐに解決することは期待できません。そこで、今回は、少しでも家賃の軽減が図れる可能性のある税の特例措置について解説したいと思います。(ライター・メタルスライム) ●国土交通省からの通知 国土交通省は、3月31日付で「新型コロナウイルス感染症係る対応について(依頼)」という通知を出しており、そこでは、賃貸用ビルの所有者に対して、「賃料の支払いの猶予に応じるなど、柔軟な措置の実施をお願いします」としています。 また、4月9日には、「新型コロナウイルス感染症に係る対応について(補足)」という通知を出しており、具体的支援策について紹介しています。 さらに、4月17日には、「新型コロナウイルス感染症に係る対応について(補足その2)」という通知を出しており、具体的支援策の細かな要件について紹介しています。以下、これら通知の内容についてポイントをまとめて紹介します。 ●取引先の賃料を免除した場合、損金となる基準が明確化された 新型コロナウイルス感染症の影響により賃料の支払いが困難となった賃借人に対し、賃貸人が賃料を減免した場合、次の条件を満たす場合には、その免除による損害の額は、寄附金に該当せず、税務上の損金として計上してよいことが明確化されました。賃借人に対して既に生じた賃料の減免を行う場合についても、同様に取り扱われます。 ① 新型コロナウイルス感染症に関連して収入が減少し、事業継続が困難となったこと、又は困難となるおそれが明らかであること ② 実施する賃料の減額が、賃借人の営業継続や雇用確保などを目的としたものであること ③ 賃料の減額が、賃借人において被害が生じた後、相当の期間内に行われたものであること ただし、本取扱いにより損金処理を行う場合、新型コロナウイルス感染症の影響により取引先に対して賃料を減免したことを証する書面の確認を税務署より求められる場合がありますので、減免通知書などの書面を保存しておく必要があります。 本来、賃借人が支払い困難なため、賃貸人が債務を免除した場合、その額は、損金となるのですが、税務署から免除した額を寄付したと評価されることがあるため、今回は、損金となる基準を明確化したものです。 支援というよりは、不動産オーナーに対して損金になるから安心して減免してくださいという程度のことにすぎません。それでも、余裕のある不動産オーナーであれば一定の減免をしてくれる可能性はあるので、寄付金と認定されるかもしれないという不安を取り除いたという点は評価できます。 ●国税・地方税・社会保険料の猶予措置 新型コロナウイルス感染症により国税・地方税・社会保険料を納付することが困難な場合には、個人・法人の別、規模を問わず、申請することにより、原則として1年間、納税(納付)が猶予されます。 令和2年2月1日から令和3年1月31日までに納期限が到来する税・社会保険料については、令和2年2月以降の1カ月以上の任意の期間において、収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少していることが必要です。その上で、一時に納付することが困難と認められる場合に、無担保で延滞税(延滞金)なく、1年間納付が猶予されます。収入の減少には、不動産所有者がテナントの賃料支払いを減免した場合や、賃料支払いを猶予した場合も含まれる見込みです。 これらの措置は、税や社会保険料の支払いを猶予することで、当面のキャッシュを少しでも確保できるようにするものです。多額の納税や社会保険料納付が予定されている場合には有効な手段と言えますが、納税額も社会保険料も少ない事業者については、キャッシュの確保につながらないため、別途の支援が必要になるでしょう。 ●固定資産税の減免 新型コロナウイルス感染症の影響により収入に相当の減少があった場合、個人事業主や中小企業者が所有し、事業の用に供する建物等の令和3年度の固定資産税と都市計画税が、「免除」または「半額」になります。 具体的には、令和2年2月から10月の任意の連続する3カ月の事業に係る収入が前年同期比30%以上50%未満減少した場合は「1/2に軽減」し、50%以上減少した場合は「全額免除」となります。こちらも、不動産所有者がテナントの賃料支払いを減免した場合や、賃料支払いを猶予中の場合も収入の減少として扱われることとなる見込みです。 この措置も、賃貸人に賃料の減免や賃料の支払い猶予を促す狙いがあります。ただ、固定資産税は賃料に比べると非常に小さい額なので、固定資産税の減免があるからと言って、直ちに賃料の減免がなされるとは考えにくいと言えます。したがって、賃料の猶予がなされるきっかけなればという感じです。 ●欠損金の繰り戻し還付の拡充 資本金1億円以下の中小企業に限り適用が認められていた「欠損金の繰り戻し還付」を、資本金10億円以下の中堅企業にも拡大するという支援策です。 欠損金の繰り戻し還付とは、たとえば、前年に1000万円の黒字を計上し、法人税(15%)として150万円納付していたところ、今期1000万円以上の赤字を計上したという場合、前年の利益と今期の損失を相殺し、前年に納めた150万円の税金を還付してもらうという制度です。 この還付を受けることで、キャッシュを確保することができますので、これまで納税してきて今期赤字という場合には有効な手段と言えます。ただ、資本金1億円以下の中小企業は以前から利用できた制度なので、新たな支援策というわけではありません。既存の制度を中堅企業にも広げたということなので、中堅企業にとっては、メリットがあるでしょう。 ●一番迅速に支援できる手段は何かという視点で検討することが大事 今回は、飲食店やライブハウスなど売上の急減により賃料の支払いが困難になっている事業者や不動産の賃貸人に向けて、今取り得る税制上の措置について紹介してきました。もちろん、この程度の支援策ではどうにもならないという事業者が大多数だと思います。 諸外国に比べ日本の支援策は非常に貧弱で遅いのですが、それは政治家が官僚に頼りすぎているからです。政策の実現や法律の作成は政治家から指示があれば、官僚は迅速に処理します。 ところが、通常の業務においては、官僚が政策について提案し、政治家が了承するというスタイルになっているため、非常に処理が遅いのです。官僚はミスがないよう十分に検討して根回しするため時間が掛かるのです。しかも、政策を立案するには必ずお金が絡むので全て財務省の了承を得る必要があります。だから処理が遅いのです。 賃料支援については、現在、与党、野党ともに支援策が提案されている段階ですが、支援する方向では意見が一致しています。後は手段をどうするかだけなので、手段の是非についてあれこれ議論するといよりも、一番迅速に支援できる手段は何かという視点で検討することが大事だと思います。そのためには、与党、野党ともに妥協する必要があります。 経済活動においてお金は血液であり、今は自粛という形で血管を意図的に止めている状態なので、止めた先に血液を送らないと壊死(倒産)してしまいます。一刻も早く輸血(経済支援)して救命(倒産回避)しなければなりません。 支援については、給付という形がベストですが、給付となると財務省のハードルが高くなり、時間が掛かってしまうので、とりあえずは融資を行い、時間の猶予を得た上で、事後的に審査して返済を免除するという形で処理するのが現実的な案のように思います。与党案も野党案も基本的な枠組みは同じなので、早急な実現が待たれるところです。

弁護士ドットコムニュース編集部

【関連記事】