「ライオンの隠れ家」 家族の物語に「社会問題」を取り入れた背景は? P語る思い 批判的意見ほぼゼロ
俳優の柳楽優弥(34)主演のTBS金曜ドラマ「ライオンの隠れ家」(金曜後10・00)が、大きな話題を集めている。虐待やDVなど社会問題も練り込まれたオリジナル脚本のヒューマンサスペンスドラマで、放送毎にSNSを中心に大反響を呼んでいる。同作を手掛ける松本友香プロデューサーは、視聴者からの反応をどう受け止めているのか。最終回を控えた第10話放送を前に、現在の思いを聞いた。(中村 綾佳) 先の読めないオリジナルストーリーと、豪華キャストの演技が光る同作。真面目で優しい市役所職員・小森洸人(柳楽)と自閉スペクトラム症の弟・美路人(坂東龍汰)が、6歳の謎の男の子「ライオン」(佐藤大空)と出会い、ある事件に巻き込まれていく――という展開。 松本氏は、2017年に放送された同局「3人のパパ」でプロデューサーとして初めてドラマを手掛けた。松本氏の原点にあるのは、「ヒューマンドラマを描きたい」という思い。「香取慎吾さん主演ドラマ『人にやさしく』(フジテレビ系、02年)が好きで、大人と子供のヒューマンドラマがつくりたいと思っていました。新しい企画を考えていたときに、“きょうだい”の関係に子供が入るとしたら、どんなストーリーが生まれるだろう…と思い、企画書を書きました」と、物語が生まれた経緯を明かす。 作中では、病気や障害のある兄弟姉妹がいる「きょうだい児」の生活や、虐待やDVに関する描写など、社会問題に切り込んだ内容も描かれている。視聴者からは「アットホームコメディドラマかと思ったら、自閉症や虐待など心がギュッとなる題材」「公務員の主人公と自閉症の弟と保護した虐待児の3人が懸命に生きる中で精神的に成長していくお話で、みんなに見て欲しい」「このドラマでもっとDVをする人間のヤバさや逃げる難しさ、児童虐待に関する法改正の重要性について知ってほしい」という声が上がり、ドラマを通じて現代を取り巻くさまざまな問題を考える機会にもなっているようだ。 松本氏は「社会問題にズバリ切り込みたいという意図はない」とした上で、「ただ、毎日ニュースを見ていても、虐待やDVに関する報道は、時代が変わってもずっと存在している。最近では、子供の親権に関しての法改正もある。そんなタイミングで、このドラマは合うかもしれない…と思いました。不偏的な物語の中に、現代の社会問題をエンターテイメントにして入れ込み、視聴者のみなさまが知る機会になる…という仕組みを、うまく取り入れることができたらいいなと思いました」と意図を語る。 社会問題を描いた作品には鋭い指摘が寄せられることもあるが、今作については「あたたかい感想が多い」という。「過去の作品では、グサっとくる言葉や指摘に、自分たちも“もっとやれたよなあ”と反省することもありました。今回は、視聴者のみなさまからは本当にあたたかい言葉や反応ばかりで。このドラマの世界観を受け止めてくださる方々が素敵な方であふれているなって、いつも思っております」 画面を通して伝わる俳優陣の愛あふれる演技も、優しさの連鎖を生み出している。松本氏は「弟・美路人を演じる坂東さんが、兄・洸人を演じる柳楽さんを俳優としてリスペクトしているのが伝わります。お互いが敬意を持って演じているところが、2人の親密な関係をつくり上げていると思います」と、2人の関係に目を細める。 この兄弟に佐藤演じるライオンが加わり、一つの“プライド”をつくり上げている。「柳楽さん、坂東さんの関係に佐藤くんが加わって、何と言いますか…凄く、自然な感じがするんです。佐藤くんのことを制限することもなく、こうしてほしいということもなく、受け入れている。佐藤くんの存在は大きいです」と、5歳の子役に惜しみない賛辞を贈る。 「視聴者に楽しんでほしい」という思いでサスペンス要素を取り入れたが、根本にあるのは「ヒューマン」の部分。松本氏は「サスペンスの嵐があるからこそ、それぞれの人物がどう成長していくのか。彼らの温かさに癒されていただきながら、サスペンスがどう展開していくのか、注目していただければと思います」と願いを込めた。