【遊んで楽しい】新型Nワン 「MT」設定 意外に多いライバル5選
衝撃的な「フルモデルチェンジ」
text:Takahiro Kudo(工藤貴宏) editor:Taro Ueno(上野太朗) 【写真】Nワン、アルトワークスなど【MT車ライバル比較】 (200枚) Nワンのフルモデルチェンジにビックリしたのは筆者だけではないだろう。 プラットフォームを刷新した嘘偽りないフルモデルチェンジでありながら、アッパーボディは従来型から変わらず。フロントはヘッドライトやグリルとバンパー、リアはテールランプレンズとバンパーのデザインが新しくなっているとはいうものの、パッとみて新型と旧型を見分けるのは難しい。こんなモデルチェンジはアリなのか? ホンダによると「Nワンはスタイルを気に入っているユーザーが多い。そういったユーザーは、見た目はそのままで中身の進化を求める」のだという。 もちろんプラットフォームやエンジンは新世代のNシリーズ用に刷新されているから走りは従来モデルとは別物。 また、先進安全機能の追加や性能アップなど、見た目は変わらずともクルマとしては大きくアップデートされているのだから、胸を張って「新型」を主張していいと思う。 さて、そんな新型Nワンに関してクルマ好きの間で話題になっているのが「アレ」だ……。 「アレ」とはそう、MT。マニュアル・トランスミッションのこと。ドライバーみずからの足でペダルを操作してクラッチを切ったり繋いだり、みずからの手でギアを選んでいくトランスミッションである。 いまや日本の新車市場における比率が2%を切っているMTが、新型Nワンには用意されているのだ。なんとも嬉しすぎる話である。
MTサイコー!
先代にはなかったMTが新型で展開された背景には、意外な理由がある。Nバンの存在だ。 2018年夏に発売されたNバンはNシリーズの商用車であり、プラットフォームはNボックスやNワンなどと同じ。そして商用車といえばMTは欠かせないということで、現行世代のNシリーズ用プラットフォームは当初からMTが搭載できるように(シフトレバーの設置場所やワイヤーの取り回しも含めて)設計された。 従来モデルのNワンはプラットフォームにMTを搭載できなかったからその設定がなかった。しかしプラットフォームを刷新した新型はそれが可能になったから、ラインナップされたのである。 ちなみに、Nワンの「RS」に組み合わせるギアボックスは、同社のミドシップ2シーター・スポーツカーである「S660」とギアリングまで含めて同じもの。だからシフトフィールはカッチリとしているし、さらにショートストロークだからシフトチェンジはスパッ、スパッと決まって気持ちいいのなんの……。 ギアリングは1~5速をクロスレシオ化しつつ、6速は100km/h走行時に3000rpm+αに収まるようにハイレシオに。ワインディングロードを走る際の中心的な速度域となる30-60km/hは2速だけでフォロー可能だ。 乗り込む前は「えぇーそこかよ!」と思ったインパネシフトも、実際に運転してみると意外にどころかまったく違和感がなかった。シフトレバーがステアリングのすぐ脇で手が届きやすいのも良い。 これは楽しすぎる。素晴らしい。やっぱりMTサイコー! こうしてMTを手に入れたNワンの初試乗は、とにもかくにも意味なくシフトチェンジを繰り返してしまった……。Nワンのように「適度なパワー」のMT車は、パワーを使いきれる感が気持ちいい。 300ps、400psもしくはそれ以上のハイパワー車はもちろん、200psくらいの「普通のパワー」のクルマだって、公道でエンジンを「ぶん回せる」時間はそう長くはない。ほんの数秒だろう。 でもターボつきとはいえ64psのエンジンなら、速すぎないゆえにアクセル全開を楽しめる時間が長いのがいい。使いきれないハイパワーよりも、使いきれる手頃なパワーのほうが乗っていて楽しいのだ。 そんなわけで顔がニヤけっぱなしだったNワンのMTモデル試乗だが、同時に思ったことがある。真剣に買おうと思うと、この価格帯で運転を楽しめるMT車にはNワンのほかにも魅力的なモデルがあるんじゃないかと……。 ちなみにNワンのMT搭載グレードである「RS」の価格は199万9800円だ。