TANIDA、BJ用エンジン部品仏社から直接受注 経産省、中小企業の海外進出支援
半導体製造装置の部品や自動車・航空機エンジン部品など軽金属を鋳造するTANIDA(金沢市)は12月24日、仏サフランから直接受注したビジネスジェット(BJ)用エンジン「BR710」向けトランスミッションの鋳物ケース供給について、経済産業省で概要を説明した。経産省とフランス民間航空総局(DAGC)が進める、日本企業とサフランの民間航空機産業での協力強化の一環で、経産省は日本の中小企業の海外進出を支援し、中小企業が重工各社に過度に依存する従来の体制からの脱却を目指す。TANIDAは海外進出を本格化させる。 ◆ボンバルディアBJに供給 経産省とDAGCは2019年6月に、協力強化について合意。経産省は日本企業の航空機産業への進出を支援している。サフランはこれらの企業が持つ技術の実用化などを進めるほか、日本の産業界や学術機関、研究機関を通じた革新的な技術協力や機体ビジネスへの参画、日本を含むアジアでのサプライチェーンの構築などで連携を期待している。 サフラングループのサフラン・トランスミッション(Safran Transmission Systems、仏パリ)は、民間機向けのエンジントランスミッションを製造し、BR710のほか、エアバスA320ceoに搭載するCFMインターナショナル製エンジン「CFM56」やA320neoなどに搭載するCFMエンジン「LEAP」、A350 XWB向けのRR製エンジン「Trent XWB」を手がけている。 BR710は英ロールス・ロイス(RR)が製造するエンジンで、サフラン・トランスミッションはサプライヤーとして参画している。TANIDAはBR710の下部に付く「アクセサリ・ギヤボックス・ハウジング」と呼ばれる部品の製造を担う。BR710はボンバルディアのビジネスジェット「グローバル5500」と「グローバル6500」、ガルフストリームの「G500」と「G550」に搭載されるが、TANIDAの部品はボンバルディア機のみ供給する。 サフラン社代表日本担当のギィ・ボノ氏は、ガルフストリーム機へのTANIDA製部品の搭載について「ドアはオープンだ」と述べ、今後の拡大に含みを持たせた。 契約締結は12月11日で、契約期間はエンジンの製造を終了する約25年間。契約金額はおよそ20億円となる。 サフランと日本企業の契約例では、A320neoに搭載するLEAP-1A向け部品の量産サプライヤーに、栃木県足利市のAeroEdge(エアロエッジ)を選定。エアロエッジは低圧タービンのブレードを生産し、日本の中小企業が直接量産契約を勝ち取っている。 ◆3Dプリンター技術で製造 TANIDAは3Dプリンターを用いた「3D積層造形技術」と、強度の高い製品を製造できる「差圧鋳造技術」を連携させて、アクセサリ・ギヤボックス・ハウジングを製造。世界的に製作が困難な「複雑形状ギヤボックス」を、低コストと短納期で実現する。 BR710向けの同部品は、TANIDAのほか欧州企業も製造を担っている。TANIDAの駒井公一社長によると、現在は開発を始めたところだが、年内には「量産機種」の出荷を目指すという。駒井社長は「まず認めていただくこと。欧州では期限内の納品を守らないと厳しい見方をされる」と気を引き締めた。 今後は2-3年後をめどに生産量の増加を目指す。駒井社長は「われわれはスピード感が命。お客さまを驚かせる」と意気込みを語った。 TANIDAは1962年に谷田銅合金鋳造所として創業。1979年に社名を谷田合金に変更した。銅合金の生産を経て、現在はアルミ合金やマグネシウム合金などによる半導体製造装置やロボット部品を製造している。今年4月に現社名の「TANIDA」に変更し、海外進出を見据える。 2009年には、航空宇宙・防衛産業に特化した品質マネジメントシステムに関する国際規格「JIS Q 9100」を取得し、航空機産業へ参入。これまでは重工各社からの仕事請け負っており、サフランとの契約により海外進出を本格化させる。 ◆重工各社への依存態勢脱却目指す 航空機産業は厳しい状況が続くが、需要回復後は成長産業となることが見込まれる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により国内の重工各社からの発注が減る中、中小サプライヤーにとって海外への販路開拓は成長戦略の1つとなる。また経産省は、新型コロナの影響が長引くことから、中小企業が重工各社に過度に依存する態勢からの脱却を目指したい考えだ。 経産省製造産業局航空機部品・素材産業室の宮越朗室長は、国内の中小企業はこれまで、重工各社から仕事を請け負うのがメインだったとした上で、「中小企業は今後、自分で海外に出て行き、自分で仕事を取ってくる“メガサプライヤー”に育ってもらいたい」と述べ、「今回の直接契約は大きな実績になる。努力しているサプライヤー(中小企業)も続いて」と期待を込めた。
Yusuke KOHASE