米大統領選も終盤へ「10月には魔物がいる...」歴史を変えてきた決戦前夜の大逆転は今回も起きるか
16年には3つのサプライズが
トランプは重症化し、入院を余儀なくされた。これにより、大統領選の雲行きは怪しくなり、既に20万を超える死者が出ていたアメリカの危機も改めて浮き彫りとなった。 それから2週間足らず。今度はニューヨーク・ポストが、バイデンの息子のパソコンから、バイデンの汚職疑惑を示す電子メールが見つかったと報じた。 他国のハッキングによる偽情報かもしれないとの懸念から(実際は違ったが)フェイスブックとツイッター(現X)がこの記事の表示を制限すると、偏向的だと共和党が激しく反発する事態に発展した。 16年には3つのサプライズがあった。トランプの『アクセス・ハリウッド』ビデオ、ウィキリークスによるクリントン陣営の電子メール暴露、クリントンの私用サーバー利用に関するFBI長官の書簡だ。 12年には大型ハリケーン「サンディ」が来襲するサプライズがあった。ハリケーンの被害状況が明らかになると、現職のオバマはすぐに遊説を中止し、被害地域に足を運んだ。 当時のニュージャージー州クリスティー知事が空港で大統領を出迎える姿が一斉に報じられ、オバマの株が上がり、リビアの米領事館で大使ら4人が殺害された件の責任追及は鳴りを潜めた。 一方、民主党陣営から金持ちのエリートと揶揄されていた対立候補のミット・ロムニーの場合は、支持者の前で「国民の47%は政府のすねかじりだ」と語る動画が流出、これが手痛いサプライズとなった。
10月になると何かのサプライズが起きるのが常
08年にはリーマン・ショックがオバマに追い風となり、04年にはビンラディンの犯行声明がブッシュの助け舟となった。00年の投票日の数日前には民主党支持の弁護士が、若き日のブッシュに飲酒運転による逮捕歴があることを暴露した。 92年には、レーガン政権時の国防長官がイラン・コントラ事件で起訴された。もともと支持率が低迷していたジョージ・ブッシュ(父)は再選を果たすことはできなかった。 【期日前投票で影響小さく】 「アメリカの選挙では、10月になると何かのサプライズが起きるのが常だった」。 危機管理のプロとして知られるジェームズ・ハガティは本誌にそう語った。しかし今はメディア環境が変わったので、一発の大サプライズではなく、小サプライズの乱発が目立つそうで、「たいていは個人攻撃で、ハリスはアメリカ嫌いの共産主義者、トランプは人種差別主義のファシストといった具合だ」と続けた。 「中東での停戦とか、ロシアの軍事的勝利とかのグローバルな出来事もあり得るが、そういうのは予測し難いし、誰に有利となるかも判然としない」 20年の民主党予備選でバーニー・サンダース上院議員の選対本部長を務めたファイツ・シャキールによれば、今は期日前投票をする人が増えたので、10月に何かのサプライズがあってもあまり影響はない。