米大統領選も終盤へ「10月には魔物がいる...」歴史を変えてきた決戦前夜の大逆転は今回も起きるか
メラニアが意外なサプライズとなる
「何か大きな地政学的変化があっても、それはトランプの手柄にもハリスの責任にもならないし、そもそも有権者の関心はそこにない」とベネットは言う。 「イラン米大使館人質事件や株価暴落といったオクトーバー・サプライズが効いたのは、それが国民に具体的な衝撃を与える出来事だったからだ」 それでも、トランプの妻メラニアが意外なサプライズとなる可能性はある。10月8日に出た回顧録『メラニア』で、彼女は「女性は政府からの介入や圧力を受けることなく、自分自身の信念に基づいて出産するかどうかを決める権利を保障されなければならない」と書いている。 トランプの指名した最高裁判事らは人工妊娠中絶の権利を認めた1973年の「ロー対ウェード」判決を覆して中絶反対派を喜ばせた。だが最近のトランプは、連邦レベルの中絶禁止に消極的な姿勢も見せている。 メラニアの発言は「トランプの選挙運動に複雑な影響を与える可能性がある」と言うのは、フロリダ・アトランティック大学のクレイグ・アグラノフ教授(政治マーケティング論)だ。 女性の中絶権を明確に認めたメラニアの立ち位置が「助けになるか障害になるかは、この問題に関するトランプ陣営の終盤戦での対応次第だ」とも言う。
歴代の「サプライズ」事例
「オクトーバー・サプライズ」という語を世に出したのは、1980年の大統領選でロナルド・レーガン陣営を仕切っていたウィリアム・ケーシーだ。 ライバルで現職のジミー・カーターが再選を確実にするため、在イラン米大使館に捕らわれている人質の解放を土壇場で発表するのではないか、そうなればすごいサプライズだ。ケーシーはそう言った。 幸か不幸か、このサプライズは実現せず、むしろカーターの敗北を決定づける要因となった。 アメリカの人質52人が解放されたのはレーガンの大統領就任式の直後だった。そのため、レーガン陣営が人質解放のタイミングをイラン政府と協議していたのではないかという疑惑も生じた。 実際、ニューヨーク・タイムズは後に、レーガン陣営が人質の解放を遅らせるよう画策していたらしいと報じている。 その後、オクトーバー・サプライズは7回の大統領選で起きている。 まずは前回の20年。10月2日に、トランプと妻メラニアの新型コロナウイルス感染が発表された。 その2週間前にリベラル派の最高裁判事ルース・ギンズバーグが死去したのを受け、これ幸いとトランプは保守派で若いエイミー・コニー・バレットを後任に指名し、ホワイトハウスで盛大な発表式典を開いた。 その場が集団感染の舞台となったらしい(ちなみにギンズバーグの死去自体を早めのオクトーバー・サプライズと見なす向きもある)。