米大統領選も終盤へ「10月には魔物がいる...」歴史を変えてきた決戦前夜の大逆転は今回も起きるか
トランプは常に場当たり的で、ハリスは常に計算ずく
オクトーバー・サプライズの犠牲者は共和党だけではない。民主党のベテラン政治コンサルタント、ロバート・シュラムは00年のアル・ゴア、04年のジョン・ケリーと、2度の大統領選で上級顧問を務めた。 04年の投票日の4日前(10月29日)、アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディンが9.11同時多発テロへの関与を認め、共和党候補で現職のブッシュを強く非難。その動画の一部が中東の衛星テレビ局アルジャジーラで流れた。 20年後の今、シュラムは、ブッシュ勝利の決定打はこのビンラディン動画だったと信じている。この映像は泥沼化するイラク戦争のニュースを選挙戦終盤の報道から消し去り、9.11テロから3年後にその脅威を有権者に思い出させた。 ブッシュ自身も、後にこう語っている。「あれで国民は記憶を取り戻したのだと思う。あそこまでビンラディンに嫌われるような男なら、やはりブッシュは大統領に適任なのだと」 【メラニアと中絶問題が焦点に】 今回の選挙では、トランプは常に場当たり的で、ハリスは常に計算ずくで動いている。だから、今さらサプライズが起きるとは考えにくいとシュラムは言う。 今回、オクトーバー・サプライズが起きるとすれば、トランプよりもハリスへの影響が大きいだろうとみるのは、かつてブッシュ陣営の選挙参謀を務めていたスコット・ジェニングズだ。
ハリスの僅差の優位は続く
「トランプに関しては、今さら有権者を『驚かせる』のは難しい。これ以上に何がある? 彼は起訴され、有罪判決も受けた。2回も暗殺されそうになった。既に大統領をやり、2度の弾劾も受けた。これ以上、何が影響を与えるというのか」とジェニングズは問う。 もちろん「ハリスには、まだ何かがあるかもしれない。しかし最も可能性の高いサプライズは、有権者の現政権への評価に悪影響を与えるような緊急事態が起きることだろう」。 18年の中間選挙では民主党の躍進を、20年にはバイデンの勝利を正確に予測した政治戦略家レイチェル・バイテコファーに言わせると、今回のサプライズは10月ではなく、既に7月に起きている。つまり、バイデンからハリスへの候補者交代だ。 「あれですっかり流れが変わった。この流れをさらに変えるような事態は想像できない。ハリスの僅差の優位は続くだろう。明日にでも第3次世界大戦が起きれば話は別だが、それはないと思う」 ビル・クリントンの2度の大統領選に携わった民主党のベテラン戦略家マット・ベネットも、ハリスが候補者になって以降は世論調査の結果が安定していることを踏まえ、「仮に大きな事件が起きても」大勢に影響はないだろうとみる。