米大統領選も終盤へ「10月には魔物がいる...」歴史を変えてきた決戦前夜の大逆転は今回も起きるか
こんなサプライズ続きの大統領選はめったにない
だがその1週間後、まだ包帯姿のトランプが共和党大会で正式に指名されてから、今度はバイデンが流れをひっくり返した。自ら撤退を表明し、代わりにハリスを推薦した。前代未聞の候補交代だ。 ハリスは8月の党大会で正式に大統領候補となったが、その3週間半後にはまた、トランプの命を狙う者が現れた。 こんなサプライズ続きの大統領選はめったにない。 最終盤の10月には、いったい何が待っているのか。国内では何も起きなくても、例えばパレスチナ自治区ガザの戦争で停戦が実現するとか、ウクライナが軍事的勝利を収めるとかの進展があるならば、ハリスへの追い風になるかもしれない。 逆に、イスラエルがレバノンへの本格的な地上侵攻に踏み切ればトランプに有利かもしれない。副大統領候補を含め、誰かの不都合な真実が暴かれる可能性もある。雇用の伸びには衰えが見え、消費者心理は冷え込んでおり、景気後退の懸念もなかなか消えない。 【サプライズへの対応が肝心】 共和党のクリス・クリスティーがニュージャージー州知事に初当選した際の選挙参謀マイケル・デュヘイムが本誌に語ったところによると、今回はどちらの候補も公人としての生活が長く、今さら個人問題でぎょっとするような問題が出現するとは思えない。 「サプライズがあるとすれば、それは人格の問題ではなく、想定外の何かだろう」
危機に際して動じないのは誰か
デュヘイムはジョージ・W・ブッシュ元大統領と故ジョン・マケイン上院議員の選挙参謀も務めた人物。国内外で多くの危機が進行中の今、オクトーバー・サプライズの影響は非難の矛先がバイデン政権に向くか(結果としてハリスに打撃となるか)、両候補がどう対応するか、「冷静かつ沈着で、危機に際して動じないのは誰か」で決まるという。 デュヘイムは共和党全国委員会の政治部長も務めた。「どの陣営も不測の事態への備えはできていると考えたがる。だが最善の準備は、危機においても平静を保ち、冷静に対処することだ」と指摘した。 過去にデュヘイムは痛い思いをしている。 08年9月に世界を震撼させたリーマン・ショックの直後、マケインは選挙運動の「一時中断」を決断した。次のテレビ討論会には出ないと語り、現職候補のバラク・オバマにもそうしろと迫った。 だが、逆にオバマにかみつかれた。「まさに今こそ、米国民は約40日後にこの混乱に対処する責任を負う人物から話を聞く必要がある」と。それでマケインはワシントンへ戻ると言い、デービッド・レターマンのトーク番組への出演を急きょ取りやめた。が、すぐには戻らなかった。 その晩の番組収録中、レターマンはニューヨークの『CBSイブニング・ニュース』のライブ映像を何度も流した。そこに、なんとマケインの姿があったからだ。共和党にとっては最悪の展開だった。 これでマケイン陣営の混乱が露呈しただけでなく、オバマの対応は安定しているという印象が出来上がった。