米大統領選も終盤へ「10月には魔物がいる...」歴史を変えてきた決戦前夜の大逆転は今回も起きるか
アメリカと世界を変える決戦まで3週間、過去の大統領選に影響を与えた「オクトーバー・サプライズ」は、トランプvsハリスの大接戦の結果も変えかねない
あれは2016年10月7日、民主党のヒラリー・クリントンと共和党のドナルド・トランプが対決する大統領選の投票日のちょうど1カ月前のことだった。【キャサリン・ファン、イワン・パーマー(いずれも本誌記者)】 【動画】トランプ集会で再び混乱、メディア批判直後に警察が男を拘束 午後4時頃、ワシントン・ポストがトランプの卑猥で下劣な発言を収めた未公開ビデオ(10年前にゴシップ番組『アクセス・ハリウッド』の収録中に撮られた)の公開に踏み切った。党内の良識派は猛反発し、トランプ人気は急落。 それは典型的な「オクトーバー・サプライズ」だった──が、この年はそれだけでは終わらなかった。 既に内部告発サイト「ウィキリークス」はクリントン陣営から流出した電子メールの公開を始めており、中にはクリントンが高額の謝礼をもらって銀行家の集まりで行ったスピーチの録音や、テレビ討論会で出される質問内容の一部が事前に知らされていたことなど、クリントンにとって不都合な情報がいくつも含まれていた。 まだある。最大のサプライズは投票日の11日前(10月28日)に来た。当時のFBI長官ジェームズ・コミーが議会に宛てた書簡で、国務長官時代のクリントンが私的なサーバーを使っていた疑惑の捜査に「関連すると思われるメールの存在」を明らかにした。あれでやられたと、クリントンは後に語っている。
10月には魔物がいる
選挙戦最終盤の10月には魔物がいる。たった一発で流れを変えてしまうようなサプライズが起きる。 もう何十年も前から、アメリカの大統領選に挑む人たちはそう思い、腹をくくっていた。だが共和党のトランプと民主党のカマラ・ハリスの対決となった今回は暑い夏からサプライズ続きだ。これ以上に劇的な出来事など、あり得るのだろうか。 今年6月までの選挙戦は退屈だった。前職トランプと現職ジョー・バイデンの再戦に新味はなく、どちらの支持率も低迷していた。世論調査をやれば、有権者の多くはこう答えていた。2期目を狙う高齢の男2人以外なら誰でもいいと。 流れが変わったのは6月27日。早々と開かれた恒例のテレビ討論会の、そのわずか90分で81歳の現職バイデンは醜態をさらし、半世紀に及ぶ政治生命に事実上の終止符が打たれた。これでは次の4年間は任せられないと、与党内からも厳しい声が上がった。 それでも本人は、まだ続投の強い意欲を示していた。 その2週間ほど後、トランプはペンシルベニア州での選挙集会で銃撃されたが、無事だった。銃弾は耳をかすめただけで、彼はすぐに立ち上がり、こぶしを振り上げてみせた。そのシンボリックな写真は世界中に流れた。民主党内にも、トランプの勝ちだという悲観論が広まった。