「ワンダヴィジョン」に「ホワット、イフ…?」も。合わせて観たい『ドクター・ストレンジMoM』関連作まとめ
マーベル・シネマティック・ユニバース(以下、MCU)の最新作、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(以下、『ドクター・ストレンジMoM』)が大ヒット公開中だ。本作は、そのサブタイトル通り、マルチバース=多元宇宙を題材とした作品であり、これまでに発表されてきたMCUの一部の映画や配信ドラマとも密接な関係を持った形で構成されている。そこで今回は、『ドクター・ストレンジMoM』をより深く楽しむために、時系列的につながりを持つ作品と、マルチバースを扱った関連作品を紹介していきたい。 【写真を見る】闇落ちしたストレンジが登場する「ホワット、イフ…?」の第4話もチェックしてほしい ※本記事は、「ワンダヴィジョン」や「ホワット、イフ…?」などのストーリーの核心に触れる記述を含みます。 ■“至高の魔術師”の誕生譚『ドクター・ストレンジ』 ドクター・ストレンジの誕生譚が描かれたシリーズ第1作目『ドクター・ストレンジ』(16)。天才整形外科医だったスティーヴン・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)は、交通事故によって“神の手”と呼ばれた両手の機能を失い、絶望の淵へと追いやられる。そんな時、奇蹟の回復が実現するという、カトマンズにある治療施設のカマー・タージの噂を聞きつけ、現地へと向かう。しかし、そこは治療施設ではなく、厳しい鍛錬によって、現実世界の物理法則を無視した特殊能力“魔術”を会得するための修行場所だった。そこで、ストレンジは、それまで自身が存在を知らなかった新たな世界を目撃し、“至高の魔術師”を目指すことになる。 この作品ではマルチバースについて深く語られることはないが、ストレンジが使う魔術の概念、シリーズにおける重要な施設として描かれるカマー・タージがどのような場所なのかなど、作品世界の基本を知ることができる。また、『ドクター・ストレンジMoM』にも引き続き登場するキャラクターとの関係性も重要になってくるので、まずは基本として押さえておいてほしい。 ■ワンダに起きた出来事をたどる「ワンダヴィジョン」 サノス(ジョシュ・ブローリン)とのインフィニティ・ストーンを巡る戦いのその後を描いた作品のなかで、『ドクター・ストレンジMoM』に直接大きな影響がある作品と言えば、MCU初のドラマシリーズとしてDisney+で配信された「ワンダヴィジョン」だ。 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(18)にて、愛するヴィジョン(ポール・ベタニー)を失ったワンダ・マキシモフ(エリザベス・オルセン)。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)でその怒りをぶつけるようにサノスと対峙した彼女だったが、「ワンダヴィジョン」ではなぜか、1950年代を思わせる郊外の一軒家に、死んだはずのヴィジョンと幸せな家庭を築いていた。ちょっと世話焼きの隣人やヴィジョンが勤める会社の上司、婦人会の知り合いとのやり取りなどの近所付き合いをするなかで、ヴィジョンは自分が住む世界がどこかおかしいことに気付き始める。実はその町は、ワンダの力によって生みだされた理想的でありながら、隔絶された世界だったのだ。 大きな陰謀と対峙しながら、ワンダは自身が生みだした理想と現実を行き来するなかで、自分のなかに眠る魔女の力に目覚め、物語のラストではカオスマジックを操る“スカーレット・ウィッチ”として覚醒する。 『ドクター・ストレンジMoM』において、マルチバースの存在を知ったドクター・ストレンジは、大きな力を得たワンダに協力を求めることで、物語が動きだすことになる。本作はある意味で「ワンダヴィジョン」の直接の続編と捉えることができる。もちろん、この作品を観ずともワンダの能力や彼女の苦悩は理解することができるが、作品をより深く理解するには、やはり観ておきたい作品になっている。 ■マルチバースの可能性と危険に迫る「ロキ」&「ホワット、イフ…?」 マルチバースを題材とした作品は、Disney+ですでに2作品が発表されている。一つは、アベンジャーズの中核メンバー、ソー(クリス・ヘムズワース)の義弟であるロキ(トム・ヒドルストン)を主人公に据えた「ロキ」。 『~エンドゲーム』の劇中にて、四次元キューブを手に入れて時空を超えたロキは、時空を歪めたという罪で“世界の時間”を監視する組織TVAに拘束される。ここでロキはTVAのエージェントと共に時空を超えて、自分が改編した時間を修復する任務を受けることに。しかし、任務を続けるなかで、TVAに隠された事実を目の当たりにしたロキは、時間軸がいくつも枝分かれするマルチバースを生みだすきっかけを作ってしまう。 本来であれば一つの時間の流れしか存在しなかった“世界の時間”は様々な事象の“もしも?”によって、枝のように分岐し、いくつもの時間軸が異なる宇宙が生まれてしまう。そして、そのように広がったいくつものマルチバースの世界を描いたのが「ホワット、イフ…?」という作品だ。 MCU初のアニメーション作品として作られた「ホワット、イフ…?」は、世界を監視するザ・ウォッチャー(声:ジェフリー・ライト)が、分岐して生まれた様々な世界の様子を見るというオムニバス作品となっている。スティーブ・ロジャースがキャプテン・アメリカにならなかった世界、ヒーローたちがゾンビになってしまう世界など、いくつもの“ホワット・イフ…?=もしも?”の世界が描かれるこの作品の第4話では、ドクター・ストレンジが正しい道を踏み外し、己の欲求を満たすために魔術を使って闇落ちしてしまう。 『ドクター・ストレンジMoM』の予告では、この闇落ちしたストレンジにそっくりの人物が姿を見せている。別次元のストレンジ同士の出会いにどのようなドラマがあるのかは、劇場にて自身の目で確認してほしい。そのほかにも『ドクター・ストレンジMoM』は、「ホワット、イフ…?」を観ていればこそ楽しめるイースターエッグがいくつかあるので、ぜひチェックしておきたい。 ■『ドクター・ストレンジMoM』と直接的なつながりを持った『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』 『ドクター・ストレンジMoM』の時系列的に直前のエピソードであり、マルチバースの存在をしっかりと描写したのが、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21)だ。『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(19)のヴィランであるミステリオ(ジェイク・ギレンホール)によって、世界中に正体が知られてしまったスパイダーマン=ピーター・パーカー(トム・ホランド)は、かつて一緒に戦ったストレンジに、人々から自身がスパイダーマンであるという記憶を消してほしいと頼む。しかし、魔術が失敗したことでマルチバースの扉が開き、別次元のスパイダーマンと戦っていたヴィランたちを呼び寄せてしまう。 マルチバースの存在が、しっかりと映像化された本作。きっかけさえあればその扉は開き、ほかの世界とつながってしまうことが示された。この作品は、『ドクター・ストレンジMoM』の前日譚とも取れる内容になっているので、やはり押さえていてほしい。 ■マルチバースを股にかける壮大な戦いが描かれる『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』 『ドクター・ストレンジMoM』では、多元宇宙を行き来できる能力を持つ少女アメリカ・チャベス(ソーチー・ゴメス)が、ストレンジの前に現れたことから物語が始まる。彼女の能力をねらう存在に対処すべく、ストレンジはワンダのもとを訪れ、多元宇宙を股にかける戦いに身を投じることになる。 本作の見どころとなるのは、ストレンジ自身がチャベスと共にほかの多元宇宙へ移動し、様々な世界を体験するシチュエーション。そのなかには、原作コミックスにおいて、ヒーローたちによって作られた秘密組織である「イルミナティ」が存在する世界も現れる。そこには、映画「X-MEN」シリーズでミュータントを率いていたプロフェサーX(パトリック・スチュワート)の姿も…。彼以外のメンバーに関しても思わぬサプライズが用意されているなど、全編を通して驚きと衝撃に満ちた作品になっている。 このように、『ドクター・ストレンジMoM』は単体でもしっかりと楽しむことができる作品となっているが、多くの関連作品を観ることでより深みを増すことも事実。先に『ドクター・ストレンジMoM』を観るか、それとも関連作品の予習をしてから観るか。どちらからでも楽しむことができるので、自分の好みに合わせた形で、話題の新作に向き合ってみてほしい。 文/石井誠