「うつ病で体重は30kg増え、視線恐怖症に」日本初のプラスサイズモデル・桃果愛が経験した過酷な学生時代
実際は全部がそうではなかったと思うんですけど、当時は「誰もが私の悪口を言っている!」と思ってしまって、人前に出るときはなるべく目立たないように黒ばかり着るようになりました。ある日気づいたらクローゼットが真っ黒になっていて、あんなにカラフルな服が好きだったのに、と思ってショックを受けました。 いま思えば、社交不安障害の一種と呼ばれる対人恐怖症のなかでも、視線に恐怖を感じる「視線恐怖症」だったのではないかと思います。
── 視線恐怖症についても心療内科の先生に相談していたのですか? 桃果さん:していませんでした。視線恐怖症という言葉自体も当時は知らなかったですし、うつ病とは切り離して考えていました。当時の状態が視線恐怖症だったかもと思うようになったのは、ここ数年なんです。そうした言葉をよく聞くようになったのが最近のことなので。 ── 真っ黒なクローゼットから、再び自分の好きなファッションができるようになるまでは、どんな気持ちの変化があったのですか?
桃果さん:クローゼットが真っ黒だと気づいてからこれではダメだと思い、以前のように自分の好きな色、デザインの服を買って着るようになりました。最初は、またなにか体型のこと言われないかと怖い気持ちがあって勇気がいりましたし、実際に外で体型のことを言われて嫌な思いもしました。 でもその人たちは自分に関係ない人たちだし、自分のことを大切にしてくれる人とだけつき合えばいいと自分で言い聞かせていくうちに、なにか言われたとしてもあまり気にならなくなりました。そもそも人にどう見られるかではなく、自分がどうしたいかを優先して考える思考に徐々にシフトしていったので、周りの目もだんだんと気にならなくなったんだと思います。
今では外で視線を集めたとしてもまったく気になりませんし、むしろ注目されるほどの魅力的な個性があるのかなとポジティブに考えられるようになりました。 ── 考え方が変わっていったのですね。大学は無事に卒業できたのですか? 桃果さん:はい。大学を卒業するころには人の視線はあまり気にならなくなっていたと思います。卒業式も目立つ袴を着ましたし、そのときに人の目線が怖いとも思いませんでした。卒業するころにはうつ病の症状もほとんどなく、病院に看護師として就職しました。その後、看護師とモデルの両立生活が始まったんです。