“聖夜決戦編”放送決定の『東京卍リベンジャーズ』 スピーディで目が離せない最新28巻を徹底レビュー
※本稿には、『東京卍リベンジャーズ』(和久井健/講談社)の内容について触れている箇所がございます。同作を未読の方はご注意ください。(筆者) 【画像】『東京卍リベンジャーズ』の人気キャラが各都道府県をレペゼン! 「オレの地元が最強」ポスター 「東京卍會」の結成記念日である6月19日、TVアニメ『東京リベンジャーズ』(和久井健・原作)に関する新情報がいくつか解禁された。とりわけ注目を集めたのは、待望の第2期――「聖夜決戦編」の放送開始が2023年1月に決定したということだろう。原作で言えば、9巻から12巻あたりで描かれているエピソードが中心になるが、“東リベ人気”はまだまだ続くものと思われる。 さて、そんな『東京卍リベンジャーズ』[※]、「週刊少年マガジン」で連載中の原作はすでに最終章に入っているのだが、先ごろその単行本の最新刊(28巻)が発売された。 ※……原作のタイトルには「卍」が入るが、TVアニメ版や実写映画版のタイトルには入らない。 最終章でタケミチのタイムリープの目的は変わったのか? 和久井健の『東京卍リベンジャーズ』は、タイムリープ能力に目覚めた青年・花垣武道(タケミチ)が、何度も中学時代の過去に戻り、不良集団「東京卍會」の一員となって、かつての恋人・橘日向の死を回避するために奮闘する物語だ(詳細は省くが、この東京卍會が、“現代”における日向の死に関わっているのだ)。 なお、その日向の死にまつわるエピソードは、21巻の段階で一応の解決は見せており、いま進行中の最終章では、タケミチの目的は、(日向ではなく)「東京卍會初代総長のマイキーを闇堕ちから救い出す」というものに変わっている(タイムリープ先も、中学時代から高校時代へと変わっている)。 しかし、25巻でタケミチを守る形である重要な人物が命を落とし、その死が引き金となり勃発した“三天戦争”を経て、マイキー率いる「関東卍會」は不良集団の覇者となった(タケミチはその抗争でマイキーから半殺しの目にあう)。 ボロボロになったタケミチは、ここから先はもう誰も巻き込めないと思うが、日向の助言などもあり、「オレのチーム」を作り、再びマイキーと対決することを決意する。 オレ ヒナのこと 守りたくて 頑張ってきた 〈中略〉 守りたい人が どんどん どんどん 増えていって オレの手には 負えなくなった でも オレが守りたい モノは全部 マイキー君が 守ってくれた だから マイキー君だけ 不幸なんて オレ絶対嫌だ ――『東京卍リベンジャーズ』和久井健(講談社)27巻所収・第236話より そう、タケミチの中では、「日向を守ること」と「マイキーを守ること」はつながっているのだ。そんな彼のもとに、かつての頼れる仲間たちが1人ずつ集まってくる。千冬、イヌピー、三ツ谷、八戒、河田兄弟、パーちん、ペーやん、千咒、敦……。 そして、「二代目東京卍會」の総長となったタケミチは、初の集会で、皆に向かって力強くこう宣言するのだった。「諦めていたものを取り戻そう!! これはオレだけじゃない。“オレたち”のリベンジだ」 ■最終章は1話1話がクライマックス? と、これが『東京卍リベンジャーズ』の前巻までで描かれている大まかな展開なのだが、最新刊(28巻)では、早くも二代目東京卍會と関東卍會という2つの「トーマン」が激突する。いささか展開が急すぎる気もしないではないが、これは「週刊連載」という形の物語が要求するスピード感でもあるのだろう。 注目すべき点は、前巻でのタケミチの「“オレたち”のリベンジ」という言葉どおり、各メンバーがそれぞれ因縁のある相手とぶつかっていく“演出”である。タケミチVS鶴蝶、三ツ谷&八戒VS灰谷兄弟、千冬VS望月莞爾といった戦いがほぼ並行して描かれていくのだが(いまは敵味方に分かれているイヌピーとココもある“決断”を迫られる)、こうした「同時進行的にいくつものバトルを描く」というのが、(『呪術廻戦』や、中盤以降の『鬼滅の刃』などを見てもわかるように)近年のこの種の漫画の見せ方の主流なのかもしれない(例外はもちろんあるだろうが、かつてのバトル漫画の多くは、たとえ集団バトルであっても、同時進行的ではなく、トーナメント形式や格闘技の団体戦のような形で、1つ1つの戦いを順に描いていた)。 いずれにせよ、いまの漫画読者が求めているスピード感と情報量がコレなのだろう。とは言え、複数のバトルが同時に展開すればするほど、主人公の存在は希薄になり、読者の視点は散漫になってしまいかねないのだが、和久井健のハコ書き(プロット構成)が巧みなためか、キャラ立てがうまくいっているためか、あくまでも本作が“花垣武道の物語”であるという部分はブレていない。 実は、次の巻以降では、ある人物が「タイムリープの秘密」を知っていることをほのめかし、さらには、東京卍會に“まさかの人物”が合流する。1話1話がクライマックスと言っても過言ではない、『東京卍リベンジャーズ』の最終章から当分目が離せそうにない。
島田一志