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藤原啓治さんが父親役とケレン味溢れる悪役でみせた存在感 トニー・スタークとの共通点も

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リアルサウンド

 日本を代表する声優・藤原啓治さんが、4月12日にがんのため55歳で逝去した。アニメ『クレヨンしんちゃん』の初代・野原ひろし役や『交響詩篇エウレカセブン』のホランド役、『アイアンマン』『アベンジャーズ』シリーズのトニー・スターク/アイアンマン役の吹き替えなど、数多くの人気作品で存在感を放ってきた存在だ。そんな藤原さんの声優としての魅力には2本の柱があったと、アニメーションを幅広く鑑賞する映画ライターの杉本穂高氏は分析する。 【写真】アベンジャーズのリーダーとして成長を見せたトニー・スターク 「藤原さんといえば野原ひろしというのが、アニメファンだけでなく一般の方にとっても共通するイメージだと思います。『クレヨンしんちゃん』が始まったときから病気療養による休業のため森川智之さんにバトンタッチするまで24年間続けられたので、やはり強烈な印象があります。そこから派生というわけではないですが、父親役や、あるいは保護者やチームのまとめ役といったポジションを演じることが多かった。代表的なのは、最近だと『Dr.STONE』『青の祓魔師』『たまこまーけっと』などで、いずれも主人公の父親役を好演しています。年長者のまとめ役という枠まで広げると、『進撃の巨人』のハンネスや『鋼の錬金術師』のヒューズなんかも該当します。『交響詩篇エウレカセブン』のホランドも、主人公とヒロインを見守るポジションですよね」  野原ひろしというパブリックイメージに付随して、主人公を見守る役といえば、藤原さんといったイメージがアニメファンをはじめとして広く共有されていたことは間違いない。杉本氏は続ける。 「一方で、ケレン味のある悪役で輝く方でもありました。クレイジーな役柄もすごく魅力的な人で、『ダークナイト』のジョーカーの吹き替えは代表的です。個人的に印象的なのは、「ところがギッチョン」のセリフで有名な『機動戦士ガンダム00』のアリー・アル・サーシェスですね。『とある魔術の禁書目録』の木原数多という役も、岡本信彦さんとの演技合戦が見どころで、出番はそれほど多くないのに、藤原さんの演技のおかけでシリーズ随一のインパクトを残しています。クレイジーな役柄においてすごく存在感のある方でした」  『ダークナイト』のジョーカーは、ヒース・レジャーの怪演が大きな話題となり、第81回アカデミー賞助演男優賞をはじめ数多くの賞を総なめにした、映画史に残る強烈なキャラクターだ。そんな難役に白羽の矢が立ったのは、藤原さんの数多くの作品で見せる存在感の賜物だろう。杉本氏は藤原さんの声優としての魅力を以下のように締めくくる。 「野原ひろしはもちろん素晴らしかったですし、少し抜けているけどカッコよさを兼ね備えた厚みのある人間を演じるのが、非常に上手い方だったと思います。吹き替えだとロバート・ダウニー・Jr.を演じていましたが、クールな中に軽妙さを取り込むのがすごく上手い方だったので、それを生かした役は多かったですね。カッコよさの中に多面的なユーモアや寂しさなどを取り入れ、声の色艶で様々な感情を表現する稀有な声優さんだったと思います。日本の芸能界にとっては本当に大事な存在でした」  また藤原さんは、マーベル映画シリーズにて、トニー・スターク/アイアンマン役を2008年の『アイアンマン』から2019年の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』まで務め上げた。ちょうど1カ月前に藤原さんにインタビューする機会があったというアメキャラライターの杉山すぴ豊氏は、そのときの印象を次のように振り返る。 「ダンディでイカしたちょいワル親父のような魅力が溢れ出ていて、第一印象は、本当にロバート・ダウニー・Jr.のようでした。藤原さんは、ロバート・ダウニー・Jr.が出演した『ジョニー・ビー・グッド』という作品で、一度声を吹き替えているんです。それ以降、いろいろな声優さんがロバート・ダウニー・Jr.を演じていたのですが、1作目の『アイアンマン』が封切られるときに、その縁で演じることになったそうです。藤原さんとしても、ロバート・ダウニー・Jr.との再会作ということで非常に思い入れのある役柄だったことを明かしてくれました」  10年以上にわたる人気シリーズを演じ続けてきたことに対して、藤原さん自身も思い入れが強かったようだ。杉山氏は続ける。 「実は、アイアンマンの声を藤原さんが演じると発表された当時、アメコミファンは『野原ひろしがアイアンマンってすごい!』と、ネタとしても盛り上がっていたんです。でも振り返ってみると、ダウニー・Jr.の声を演じていたキャリアがあっての起用だったので、取ってつけたようなキャステングではなかったですよね。この先、MCUでトニー・スタークが出てくるのかはまだわかりませんが、1つの区切りまで藤原さんが演じたというのは、日本のアメコミ映画全体においてすごく大きなことだと思います」  また藤原さんは、『アベンジャーズ』シリーズの集大成『アベンジャーズ/エンドゲーム』の際の収録秘話も明かしてくれたと杉山氏は語る。 「一区切り終えてみて、話を聞いてみると、藤原さんは『エンドゲーム』の最後のモノローグのシーンの台本を読んで、号泣してしまったそうです。『うまくできるんだろうかと不安になった』とおっしゃっていました。『インフィニティ・ウォー』の展開から考えると、ある程度大変なことになるだろうなと覚悟はしていたけど、『エンドゲーム』の台本を渡されたらすごく泣いてしまったと力を込めておっしゃっていたのが、すごく印象的でした」  最後に杉山氏は、吹き替え声優としての藤原さんは、これまでの映画界では見られなかった動きの起点になっていると指摘する。 「例えば、映画ファンは、山田康雄さんのクリント・イーストウッドや、石丸博也さんのジャッキー・チェンのように、俳優さんの声ごとに声優さんを認識をすると思うんです。でも藤原さんの場合は、もちろんロバート・ダウニー・Jr.の声優としての印象がありつつも、それ以上にトニー・スタークというキャラクターと結びついていますよね。藤原さんはトニー・スタークなんですよ。そういった意味では、山田康雄さんとクリント・イーストウッドではなく、山田康雄さんとルパン三世の関係性に近いものがあったのかなと思います」

安田周平

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