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なぜ韓国文学ブーム? フェミニズム文学で注目の若き女性作家たち

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Forbes JAPAN

韓国のフェミニズム文学が、いま熱い。「海外文学のコアな読者層は日本にたった3000人しかいない」といわれていた出版不況の日本において、チョ・ナムジュの小説『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房、訳・斎藤真理子)は、翻訳版が2018年12月に出版されると大ヒットを記録。初版は4000部の発行だったが、現在までに日本で16万部以上を売り上げている。 韓国では130万部の売り上げを記録。チョン・ユミとコン・ユの共演で映画化され、日本でも2020年の10月9日から全国ロードショーが決定している。韓流ドラマやK-POPはますます勢いにのっているが、政治レベルでの日韓関係は必ずしも友好ムードとは言いがたい。日本でいま韓国文学が注目されているのはなぜなのだろうか。 日本における韓国文学ブームの立役者のひとり、斉藤典貴に人気の背景について話を聞いた。 「会社を潰す気か」韓国文学は売れない文学だった 斉藤は、晶文社で編集者として〈韓国文学のオクリモノ〉シリーズを2017年10月に立ち上げ、現在は亜紀書房にて〈となりの国のものがたり〉シリーズを担当している。アジア人初の英国ブッカー国際賞作家であるハン・ガンの『ギリシャ語の時間』 (晶文社、訳・斎藤真理子)や、韓国日報文学賞作家のチョン・セラン『保健室のアン・ウニョン先生』(亜紀書房、訳・斎藤真理子)を編集するなど、韓国文学の出版に深く携わってきた。 「私が晶文社で〈韓国文学のオクリモノ〉シリーズを始めたのは2017年でしたが、その企画を出したのは2016年の夏でした。その時点では正直いうと、会議で企画を出したときに『会社を潰す気か』くらいの反応でしたよ」 2016年当時、日本で出版された韓国小説は1年で20点にも充たなかったという。「海外文学が売れない」ということは出版業界では久しく悩みの種となっていたが、その中でも比較的「メジャー」なアメリカ文学やフランス文学に比べて、韓国文学をとりまく状況はさらに厳しいものであった。それでも斉藤が韓国文学のシリーズ化に踏み切ったのは、70年代生まれ以降の若い作家たちが綴る小説のコンテンツに自信があったからだという。 「チョン・セランの作品を初めて読んだのは2016年の夏にソウル国際ブックフェアに行ったときでした。『アンダー、サンダー、テンダー』(クオン、訳・吉川 凪)という小説を読んだときに、正直とてもびっくりしました。彼女の小説は単なるドメスティックな小説では全くなかったんですよね。ある意味では、韓国の地名などの固有名詞をとってしまえば、世界のどこで誰が読んでも通用するような面白い物語だった。エンタメと文学性が両立した素晴らしい青春小説になっていることに驚きました。これをきっかけに韓国の若い作家の本を読み出したらどれもとても面白かったんです」 2011年から〈新しい韓国の文学〉シリーズを始めていた韓国書籍専門の出版社クオンや、2016年9月から〈韓国女性文学〉シリーズを出し始めた書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)など、いくつかの先駆的な例があるものの、2017年の段階ではまだまだ「韓国文学は売れない」というイメージが出版界にあった。晶文社で韓国文学シリーズの企画を進めていた斉藤は、読者にコンテンツの面白さで判断してもらうためには、当時は「なるべく韓国色を消す必要があった」と明かす。

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