ほろ苦い早春の味、ふきのとう。味噌に天ぷら、田楽……季節の味を楽しみましょう
プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”
身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を教わります。
ふきのとう味噌、天ぷら、田楽
ふきは早春の雪解けとともに、地下茎から葉よりも先に花茎が地上に顔を出し、そのつぼみがふきのとうです。ふきのとうは日本全国に自生し、古くから食用にされ、独特の香りと苦みを味わいます。
雪の下からほんの少し顔を出したばかりのものを摘むと清々しい香りがしてえぐみも少ないのですが、葉が開いてくるとだんだん苦みが強くなってきます。ふきのとうは鮮度が重要で、摘んだ後は時間の経過とともにあくが強くなります。根元の切り口を見て黒ずんでいないものが新鮮です。 ふきのとうをおひたしや和えものにする場合、あくと苦みを抜くために重曹を入れて下茹でし、水に長時間さらす方法があります。苦みは抜けるのですが、風味も一緒に抜けてしまいます。コーヒーに砂糖を入れるように、甘みを多く加えて苦みを感じにくくする方法もあります。ただしこれらの方法では風味と苦みを楽しむふきのとうが台無しになります。 ふきのとうという扱いが難しい食材は、料理する人間の見識と器量が問われます。私はまずは素材選び、そして油の上手な活用だと考えます。鮮度がよくつぼみが閉じた小ぶりなものを選んで、油で揚げたり炒めたりという下処理をします。その後に甘みで苦みをごまかすのではなく、少量の甘みを旨みとして加えるのもよいでしょう。 ふきのとうの雄花は黄色い花が咲き終わると枯れますが、雌花は白い花を咲かせた後、茎がどんどん伸びて“とうが立った”状態になります。「とう」というのは、花をつけるための茎のことで「薹」と書き、ふきのとうは漢字にすると「蕗の薹」になります。滋味深いふきのとうを生かすのか、翻弄するのか? それは料理する人間次第。“とうが立った”私の出番でしょうか(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。