U-21野津田は本田の後継者となれるか?
相手の寄せが少しだけ遅くれた瞬間を、野津田岳人は見逃さなかった。9月21日、アジア大会のグループリーグ最終戦となるネパール戦。その前半33分、遠藤航からのパスを左足で柔らかくトラップすると、アウトサイドで持ち出し、すぐさま得意の左足を振り抜いた。 小学6年から磨いてきた無回転シュートのコツは体に染み付いている。インフロントで押し出す感じでインパクトすると、狙いどおりボールは浮き上がってから急激に落ちてゴールを強襲。ボールはバーを直撃したあとゴールラインの内側に落下した。弾んだボールが天井のネットに突き刺さったことからも、シュートの威力がうかがい知れた。「相手が引いていたので、ミドルを狙っていこうと思っていたんです。あの場面はちょうど前が空いていたので打ちました。枠にさえ入れれば、何かが起こると思っていました」。 大量得点が期待されたネパール戦は、相手DFの人数を掛けた粘り強守備をこじ開けられず、てこずっていた。鈴木武蔵のシュートは飛び出してきたGKに阻まれ、遠藤航のミドルシュートはGKの正面を突く。中島翔哉のミドルもGKの好セーブに遭っていた。野津田のミドルシュートによって先制したのは、そんなじりじりとした時間帯のことだった。 ゴールインを見届けた野津田は喜びを噛みしめるようにゆっくりと右のコーナーフラッグに駆け寄り、右手でフラッグを掴んで胸を張った。尊敬するサンフレッチェ広島の先輩、佐藤寿人がゴール後に見せる喜びのポーズ――。「あれは寿人さんに『ゴールを決めたらやってもいいぞ』って言われていたんで、やらせてもらいました」と、試合後に野津田ははにかんだ。 チームにとって待ちわびた先制点は、彼自身にとっても待望のゴールだった。このレフティにとって先制ゴールは、今大会通算8本目のシュートだった。第2戦のイラク戦は途中出場だったにもかかわらず、シュート数は2試合が終わった時点でチームトップの6本。だが、ゴールは遠いままだった。とりわけ野津田を悔しがらせていたのが、先発して4本のシュートを放った初戦のクウェート戦である。右ウイングとして先発し、センターフォワードの鈴木や左ウイングの中島にゴールが生まれるなか、中央にカットインする得意の形でゴールに迫ったが、ボールはバーを越えたり、枠から逸れてしまう。攻撃陣でひとり勢いに乗れなかった。 「やっぱりそれぐらい打ったら1、2点は決めないといけないと思っているし、実際に決められる場面があったから悔しいです。ただ、打てる場面は他にももっとあったので、シュートに関してはこれからも積極的に狙っていきたいと思います」。