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イッセー尾形「感染対策して大阪発の新ネタやります!」

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ウォーカープラス

演劇ライター・はーこが不定期で配信するWEB連載「はーこのSTAGEプラス」Vol.78をお届け! 【写真】イッセー尾形の直筆イラスト。見れば見るほどクセになる! 最近はテレビでも個性的な役柄で活躍しているイッセー尾形。イッセー尾形と言えば一人芝居の舞台が有名だが、映画やテレビで姿を見る機会は少なかった。ここ数年で活動の場が広がり、さらには一人芝居も進化を遂げ、新たな“文豪シリーズ“が始まっている。 18年に夏目漱石の作品を取り上げた「イッセー尾形の妄ソーセキ劇場」、19年からはほかの文豪作品も取り上げる「イッセー尾形の妄ソー劇場」と題し、近鉄アート館で毎年春に上演。このアート館で新作を下ろし、1年かけてほかの都市を巡演する大阪発の公演だ。 アート館で3回目となる今回は、前回公演の日替わりで演じたプラスワン(おまけ)の5作品を練り直してレギュラーで上演、新作をプラスワンとして日替わりで上演する。コロナ対策により客席数を半分にして上演するため、2公演を追加。 出演していた舞台「ART」が新型コロナウイルス感染拡大により公演中止となった4月1日、大阪で会見が行われた。その後「妄ソー劇場」は、当初5月だった公演日程を延期に。「公演中止じゃなくてホッとしました」とイッセーさん。 作品内容は本人の紹介で、またアート館への思いや好評だったNHK連続テレビ小説「カーネーション」 の裏話も交えて紹介しよう。 ■これまでの一人芝居と“文豪シリーズ” これまでの一人芝居の主人公は、「あ、こんな人いる!」と、目の前に自分の身近な人たちがリアルに立ち上がる舞台だった。そのキャラクター造形の見事さ、日常生活のある一瞬を切り取った物語展開の楽しさ。イッセー尾形ならではの一人芝居は共感を呼び、愛すべき登場人物たちに笑い、拍手を送った。 演出家とオリジナル作品を作り続けて30年。関係を卒業しフリーとなったイッセー尾形に「夏目漱石で一人芝居やりませんか」というオファーが。これをきっかけに新たな一人芝居の“文豪シリーズ”が誕生した。 自身で選んだ文豪作品の登場人物から1人を取り上げ、イッセーの世界観でリアルに膨らませる。その人物は名作であっても主人公ではなく、物語の中にチラリと登場するだけの人だったり。だから読んでいなくても楽しめるし、作品を知っているならおもしろさは倍になる。“文豪作品”というお題を与えられたことによって、一人芝居の新たな世界が広がり、持ち味も展開も多彩になった。 ■作品について ①謝罪会見:サルトル「嘔吐」 「壇上にエラい人がいて頭を下げるという見慣れた光景に、サルトルの『嘔吐』を引っかけて、ともかく謝罪している最中に吐き気をもよおす。それだけのことで(笑)。 名作と言われてるわりにはよくわからない小説ですが、気になって読んでしまう小説で。オートマチックに生きているけれど、どうやらむき出しのものに出会った時に吐き気をもよおしたりする。それが自分の実存だ、みたいな作品で。それなら謝罪会見もオートマチックではない特別な1日。自分は何者だと実存を問われる場だと思うので、あながち無茶なくっつけではないなと」 ②地下駐車場改め「駐車場男」:カフカ「変身」 「『変身』は男がある朝突然虫になって、引きこもりみたいになる。その男には引退していたお父さんがいて、じゃ俺が働くかと警備員になる。仕事先から帰宅してもその制服を脱がず、父権を取り戻したかのように居続けるんです。昔読んだ時に、その父親が主人公よりも存在感がある印象だったので、挑戦してみたいなと。私にとって新作みたいなもんです」 ③立体紙芝居「雪子の冒険 満州編」:川端康成「浅草紅団」 「川端康成さんの『浅草紅団』という、怪しげな浅草の世界を人形芝居にして小学生に見せる、という話をやってました。その中の主人公・雪子が飛行船に乗って満州に行くことになったので、今度の舞台は満州です。ともかくおもしろくできたらいいなと思っています」 ④605号室:ブローディガン 詩集 「アメリカの詩人・ブローディガンの詩の中の『未亡人』。『お隣に薪を借りに行く。別に必要はないんだけれども』という短い詩があるんですよ。いろいろ物語が立ち上がるような詩だったので惹かれて。お米を借りに行くぐらいでなんかできないかと思って作りました。大阪でプラスワンでやった時もけっこう反響があったので、またやってみます」 ⑤今さらフォークシンガー:五つの赤い風船「遠い世界に」 「高校生の頃、よくギター1本でみんなで歌ってた記憶があって。若い時は歌詞の中の“若者”というフレーズを口に出すのが恥ずかしかった。で、68になって若者ぶってこの歌を歌う。ひどく滑稽ですが、フォークの時代、確かに僕の人生を形成した大事な要素だと思うので、今でもフォークを歌っているという設定で。 だから『あんなフォークありましたよね』みたいな新曲を作ろうかと。4畳半フォーク、反戦フォークとか、いろんなフォークのジャンルからピックアップしてね。それを今の時代のお客さんが聴いてどんなことを思うのか…」 日替わりプラスワンの新ネタ① 「谷崎潤一郎の『細雪』に挑戦しようかと。こないだ読んでいて、おもしろかったんですね。人間と人間の関係が非常に細やかに描かれていて。この細やかさからなんかネタを作りたいなと思っています」 日替わりプラスワンの新ネタ② 「村上春樹さんの世界も魅力的で、難しいですがやりたいんです。何々するのを止めよう、これはしないでおこう、というようなマイナスの世界のイメージ。まさしく現代を描いている現代作家さんで、夏目漱石さんから始まって、そろそろ現代と向き合う時間じゃないかと今密かに思っていて(笑)。あと、まだありますが、お楽しみに」 ■文豪シリーズの印象 「夏目漱石さんをやった時に、自分からではなく初めて文豪から刺激をもらってネタを作った。漱石さんの世界をやってると言えるし、僕の世界だとも言えるし。その二股かける感じがすごく心地よかったんです。前は、僕がおもしろいな、変だなと思ったことを小さな核にして広げていきましたけど、今はネタを作る根拠が文豪にあるから楽(笑)。でも、やり始めると今までの一人芝居と同じみたいですねぇ」 ■元ネタに選ぶ文豪作品のこと 「基本的に小説はあまり読まないんです。ドキュメンタリー系の方がおもしろくて。ネタのために読まなきゃと思うんですが、読みたくないなみたいな人がけっこういます(笑)。 取り上げる作品は、名作だから惹かれた部分もあります…。名作と呼ばれるものは、それだけ人の心を動かすものがあるんだろうな。でも、文豪のおもしろい作品でも、なんとか自分の世界に引き込んじゃう。僕がやった人たちって、みんな遠い人じゃないですね。引きつけようと思えば引きつけられる人っていうのが一番近いかな」 ■今後の元ネタ 「もうね、活字だったらなんでもいいや、とか(笑)。音楽とか絵とか彫刻とか…将来はやりたいね。僕にとっての文豪は小説だけじゃない世界にいるんだなぁというのが実感です。広げていきたい」 ■近鉄アート館への思い 「近鉄アート館は僕を育ててくれた空間です。何十年も前から、新ネタは東京の小劇場で掛けて、終わったらすぐに大阪でやってきました。東京で作ったネタを育てるという感覚でしたね。それが今は大阪発。長年やってきて僕のことをご存知のお客さんもたくさんいらっしゃるので、見慣れたお客さんと新しいものを作るという関係が、アート館が再オープンした18年から始まっています。それをまた今年も楽しみたいと思います」 ■お客さんの反応 「アート館のお客さんの反応は相変わらず厳しいよ(笑)。おもしろいものはおもしろい、おもしろくないものはおもしろくない。それは変らないなと思いました。うれしいです。おもしろくない時はシーンとしたり、笑いが中途半端だったり(笑)、そういう反応を肌でつぶさに感じます。だから、ホテルに帰ってすぐに作り直します。明日はこうしよう、あそこはこうしよう、とか。それはスリリングだけれども、楽しい。今、僕にとってネタを育ててもらえる関係は、ほんとに貴重ですから大事にしたいと思っています」 ■「スカーレット」で演じた深先生(絵付師・深野心仙)のこと 「反響、大きかったです。京都駅で小さいお子さんを連れたお母さんが『ほら、深先生よ』って(笑)。あの頃はまだ握手ができたので握手しました(笑)。現場はほんとに楽しかったです。ほとんど絵付けのシーンでしたが、台本にとらわれず、みんな生き生きと『この場を楽しむぞ』という感じで。喜美子(戸田恵梨香)の青春時代の1ページというはつらつとしたものと相まって、すごく楽しかったです」 ■深先生「ええよぉ」の口癖 「それも反響がありまして。ある催しで『最後に司会者が何々ですか?と聞くので、“ええよぉ”と答えてください』って(笑)。そんなご依頼がありました。ドラマの台本には、ちゃんと『ええよぉ』って、いっぱい書いてあったんですよ。私は普通に『ええよぉ』って言っただけなんですけど、もともとなんか訛ってるみたいで(笑)。楽しかった、ほんとに。大阪に来るのが楽しみでしたもん」 ■一人芝居とテレビの役作りの違い 「基本的に人前でなにか演じたり、自分じゃない誰かをやるって、その距離感はテレビでもそれほど変わらないですね。違いは、一人芝居はセリフ変えても文句言う人はいないっていうことかな(笑)」 ■公演間近のメッセージ 4月には「今、一生懸命書いています」と言っていたイッセーさん。延期となった時間の中で「また新しいネタを思いつくものですから、頭が大興奮」と。「文豪たちの小説を僕なりのカバーで展開していますが、元ネタにさほど重きを置かなくなった感があります」と、新様式を思い付き「今まで以上に冒険できる気がします!」 ■コロナ対策のこと 客席数は前後両隣に空席を設けて半分に、退場は人数を制限して誘導するなど“密”を避ける態勢で。来場時はマスク着用を忘れずに、入り口ではチケットの半券を自分自身でもぎる。また、検温、手指消毒、「大阪コロナ追跡システム」の登録など、通常より時間がかかることもあるので余裕を持って出かけよう。安全安心で舞台を楽しむために! プロフィール いっせーおがた●1952年、福岡県生まれ。70年に演劇の世界に入り、身近にいる人物を主人公にした独特なスタイルの一人芝居で人気を博す。文化庁芸術選奨文部大臣新人賞(大衆芸能部門)ほか受賞歴多数。90年代~2000年代には海外でも上演するなど、年間120ステージをこなす。12年より積極的に活動を開始、舞台はもちろん、映画やテレビドラマ、絵画、人形劇、小説の執筆など幅広く活躍中。映画では邦画をはじめ、05年「太陽」の天皇役が海外でも話題となり、17年日本公開のマーティン・スコセッシ監督「沈黙―サイレンス―」に出演も。ドラマでは昨年の大河ドラマ「いだてん」やNHK連続テレビ小説「スカーレット」など多数出演している。 ■STAGE チケット発売中 「イッセー尾形の妄ソー劇場」~文豪シリーズその3~ 日替わりプラス1 日時:9/16(水)、17(木)、18(金)19:00、19(土)、20(日)13:00・17:00 会場:近鉄アート館 出演:イッセー尾形 料金:前売5000円、当日5500円 問:会場 電話:06-6622-8802 取材・文=演劇ライター・はーこ

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